世の中金だ
あれから、僕たちは入学試験までの一週間、この家で勉強したり特訓したり過ごした。基本的に僕はルアの部屋でルアに勉強を教えたり、昼寝したり暇な日々だった。お嬢さん、いや確かニナだったか。あいつはいつもドアの前を行ったり来たりしたり、耳をつけて盗聴まがいなことをしたりと大変だ。でも、緊張してるのかあまり話しかけはしてこない。
今日はルアの入学試験の日だ。僕はルアと並んで玄関を出ると、停められていた馬車へと向かった。入学試験に付き添いっていうのも良くない気もしたが、道中で何かあってもよろしくないからな。まあ僕はなんでもいいのだが、ルアについてきてと頼まれてしまっては断れない。それにーー。
「ね、ねえ、ルアちゃん?」
ルアが馬車に片方の足を乗せたタイミングで、ニナが声をかけてきた。ニナは少し緊張したように頬をこわばらせ、ちらちらとルアの様子を窺っている。ルアは足を戻し、気をつけのような姿勢でその場に立つ。
「どうしたんですか?」
「そ、その、頑張ってくださいね!」
そう言って、ニナは照れたように微笑んだ。
「はい!」
ルアはニッコリと笑って元気よく返事をすると、今度こそ馬車へ乗り込んでいく。
僕もその後に続き、向かいの席へ腰を下ろした。
馬車がゆっくりと動き出す。
まあ、試験なんてそう難しくはないだろう。学校にもよるが、基本的に魔法学校は実力より金重視である。せっかく金がもらえそうなのにそれを切り捨てることはしない。あくまで試験は人数が規定より多かった場合に、ならせっかくだし実力が高いやつ残すか、みたいな感じのものが多い。魔法学校の学費は日本の大学で表現するなら30倍ほどである。もしくは雑用枠といって、掃除などをする代わりに無料で大学に入れるなどというシステムもあったりする。僕は雑用枠で入ったことが5回ほどある。僕は割と運が悪いのだ。
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「わあ〜! こんなおっきな建物初めてみたぁ!!」
魔法学校はもちろんとても大きい、そしてここの魔法学校は普通よりさらに大きいようだ。ここはディアベル魔法学校。ディアベルか。知らない学校だ。どうやら新設校らしい。
「なかなか面白い学校だ」
校内に森があったり、高度な魔法陣が刻まれていたりと斬新な学校だ。なりより森から魔物の気配がする。おそらく予想するに、魔物を捉え森に放っているのだろう。森の周りに結界が張られているしな。その時、キーンコーンカーンコーンとどこか懐かしい音色が聞こえる。12時のチャイムのようだ。
この音、なぜこの世界で流れる? ディアベル魔法学校、ディアベル……いやまさかな。
「皆様、時間になりましたので説明会を開始いたします」
すると、校舎の上に出てきた女性が魔道具のようなもので声を大きくし、話し始めた。あれ! やっぱりあれティアちゃんじゃない?
「この学校の試験は主に3つ、会話の試験(日本でいう面接だろう)、筆記試験、そして実技。合格点などはなく、どれか1つ突出しているような方でも、問題ありません」
え、やっぱりティアちゃんだよな? 41回目の転生の時、僕を慕ってくれてた。つまり、ディアベルってあいつのことか。
「お兄ちゃん、どうしたの? 嬉しそうな顔して」
「いや、なんでもない」
別に嬉しそうな顔なんてしていない。誰がいようと死んでようと僕には関係のないことだ。
「それではご自分の好きな時間にお並びください。3回行われるので順番は自由ですよ」
「頑張れよ」
「うん!」
ルアは嬉しそうに微笑むと手を振りながら、筆記試験の方へ走っていった。ちょくちょく後ろを向いて僕を見るので、色々な人にぶつかっていた。にしても面白そうな学校だ。
「うわぁっ!」
僕は振り返って家に帰ろうと歩き出した瞬間、前から何かが突撃してきて僕は尻餅をつく。なんでそっちが驚いているんだよ。
「すいません、大丈夫ですか?」
僕はすぐに立ち上がって見てみると、同じく尻餅をついた高そうな服を着た女がいた。金髪でおしゃれなロングの髪をした少女で、おそらく貴族だろう。
「一体わね〜! この服いくらすると思っているの?」
「すいません」
明らかに被害者ではあるが、多分貴族相手なので謝っておく。たく、人にぶつかるなんてどういう育てられ方をしたんだ。あれ、ルアもさっき……いやルアはぶつかったら毎回謝っていたからいいのだ。
「謝って許されると思わないでくれる? この服弁償しなさい。金貨50枚よ!」
「そんなお金ありません」
「へえ、逆らうのね。これでも私、上級の魔法使いなのよ」
周りの人たちは驚いたように顔を見合わせて、あの年齢で!? とか、天才だ! とかこそこそ言い合っていた。それを聞いて少女は自慢するように鼻を鳴らす。服が傷ついたわけでもないのに弁償は流石に困るな。
「でもないです」
「あんた、さっきからその態度はなんなの? そのスカした態度、気に触るわ」
いよいよ少女も怒りで余裕がなくなってくる。脅した相手が怖がらないというのは、ちょっとした恥であるからだ。僕は無理やり笑顔を作り、子供っぽい声で謝ってみる。
「ごめんね?」
「……もういいわ。ここで焼き払って!ーー」
「ーーそこまでだ」
絶対来ると思ったよ、ディアベル。




