私が法律だッ!
「そこまでだ」
ディアベル、それはこの学校の創設者であり大魔導士の男。
「ディ、ディアベル様!?」
貴族であろう少女ですら慌てて姿勢を正した。先ほどまでの喧騒が嘘のように静まり、その人物に視線が集中する。「嘘だろ……」「ディアベル様!?」そんな声が次々と聞こえてくる。ただ、1人の少年だけは特に動揺することなく、そこに佇んでいた。
「ほら、あんたも姿勢を正しなさい!」
少年はそう少女に言われ、姿勢を正しつつ密かに魔法陣を手のひらに展開させた。それは認識阻害の魔法陣であるとわかる。
「私の学校、それにこんなに人がいるところで、魔法を行使することがいけないことはわかるね?」
「はい、申し訳ございません……」
そして男の視線は少年へと移る。何か言うかと思われたが、不意にバカにするような笑みを見せ、視線を少女へ戻す。
「君は試験不合格だ」
「そ、そんな……」
男は相手が貴族だろうと関係ないと言わんばかりにそう告げる。その差別のない素晴らしい思考は、今後も多くの人の信頼を勝ち取ることだろう。少女はそれでも諦めずに、見苦しく叫ぶ。
「お金ならいくらでも払います!」
「合格ぅ!!」
そんなふうに叫ぶと、大きな声で楽しそうに笑った。それはまるで友達と悪ノリをする中学生のような、不思議なものだった。つまり、男はただのクズだった。そしてまた少年に視線を向けると、今度は口を開いた。
「それで、君もなんか可哀想だから、合格ぅ!!」
「は?」
(僕まだ8歳なんだけど)
周囲の受験生たちは、未だに状況を理解できずにいる。いや、それは当たり前だ。なぜなら、ここは新設校な上あのディアベル建てたと言われる、超難関であるからだ。それを金で入学させたり、可哀想だから入学させたりと好き放題やっていれば、不満を持つ者も現れるのは当たり前だ。
「え、あの人も合格なの?」
「何もしてないよな?」
「というか、ディアベル様と知り合いなのか?」
そんな声が周りからこそこそと聞こえてくる。ただ、相手は大魔導師である故、みんなこそこそと言うしかない。恥をかかされた貴族のお嬢様を除いて。
「待ってください! この者は平民な上、10歳には見えませんわ!」
(そうだそうだ)
「僕、まだ8歳だよ」
「もちろん承知の上だ。飛び級ってやつさ」
男は特に気にする様子もなく、少女の言葉を受け流す。この学校は男のものだ。だから賄賂で入学させようが、8歳だろうが、特に問題にはならない。すると男は満足げに微笑んで、両手を掲げる。
「いい機会だ。皆にも言っておこう。この学校では! 私が法律だッ!!」
そのあまりのおかしさに誰もが静まり返った。
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普通、アニメとかでは自分が転生者だとか、すごい能力があるだとかは、なぜか隠したがるものだ。でも、ここは現実である。僕は何人かに転生を繰り返してることを告げている。その中の1人がこいつ、ディアベル。前世での友達で悪ノリ好きだ。
おかげさまで、とてもめんどくさいことになった。すると、そこでプライドをズタズタに裂かれたお嬢様が口を開いた。
「わ、分かりましたわ。私はお金を払う上、ちゃんと試験を受けますわ!」
「おお〜! それなら、せっかくだし君も受けてみたら?」
ディアベルは目をぱちぱちとさせると、期待するように見てくる。これ認識阻害の魔法が効いてないな。多分普通にバレてる。そして、有無を言う前にお嬢様が僕の腕をがっしり掴み、実技試験の方へと引っ張っていく。
「いいですね〜! ほら、あんなも行くわよッ!」
ディアベルはそんな僕も笑顔で見送った。まあ、わざと失敗して落ちればいいし、アホなやつめ。
「失敗しても合格させてあげるからね〜!」
遠くからいちいち叫ぶ内容じゃないだろ! まあ、別に2年も待つのは暇だったしちょうどいいか。




