死亡フラグ的な言葉
「すごっ! 何この家ッ!?」
馬車を降りると、すぐに豪邸が目に入る。大きく綺麗に整備された庭、まるで貴族の家かのようなゴージャスな外装。それになかなか新しい家である。
「来たのですわね!」
すると門から金髪のお嬢さんがご機嫌で出てきた。使用人等はいなく、どうやら1人で住んでいるようだ。いや、1人でこの家の掃除や整備をすることは難しいか。
「は、はい……私はルアです」
ルアはその高貴な雰囲気に緊張したのか、僕の背中に身を隠した。するとお嬢さんは嬉しそうにニタニタと笑った。なんだこいつ。気持ちの悪い笑みを僕の妹に向けないでほしい。
「うへへ、可愛いですわぁ」
「大丈夫大丈夫」
僕はルアの頭を撫でながら少し横にずれた。ルアはお嬢さんと対面するなり、視線を逸らす。いつものルアとはまるで違う様子だな。一方お嬢さんはと言うと、嬉しそうに笑っていた。と、思っていたら僕を見て急に真顔になる。
「それで、その殿方は?」
「僕はルグ。ルアの……弟? かな」
「なぜここにいるのです?」
お嬢さんは警戒するような、少なくとも友好的ではない視線を僕に向ける。あまり好印象ではないようだ。ただ、問題はない。すでに問題の突破口を考え出した。
「実は色々とありまして、僕もここに泊めてくれないですか?」
「無理」
お嬢さんは表情一つ変えずに、一瞬で言い放った。まあここまでは想定内。
「ならーー」
「無理、死んでも無理」
そんな……とはならない。もちろんここまで予想済みだ。僕はルアの耳元に近づき、小声で話しかけた。
「お姉ちゃん、お願い? って言ってきて」
僕が無理やり声を高くし裏声でそんなことを言うと、困ったような表情をするルア。
「えぇ〜! ……そんな馴れ馴れしくしたらダメだよぉ」
「なら僕は帰ろっかなぁ」
「わかった、わかったから」
するとルアは少し不満そうにしながらも、ゆっくりとお嬢さんに近づいていく。そして目をうるうるとさせ、上目遣いで言い放った。
「お姉ちゃん、お願い?」
「ぐはっ」
するとお嬢さんは胸を押さえて跪く。そのまま、とてつもなく苦しそうで嬉しそうな表情を見せた。人は喜びすぎるのも良くない。僕は一度、喜びすぎて死んだ人を見たことがある。変な話だが、本当の話だ。単純に呼吸困難と、心臓発作だ。
「だめ?」
ルアは跪くお嬢さんの顔を覗き込み、さらに追い討ちをかけていく。おいおい、本当に心臓発作で死んだらどうするんだよ。まあ、流石にないとは思うが。
「も、もちろんいいですわぁ!!」
お嬢さんは急に立ち上がると胸を張り、自分は偉大だぞも言わんばかりに自慢げな表情をする。よくいるのだ。妹が欲しすぎる女。それにルアは妹としては百点満点だ。誰もが一度は想像する「理想の可愛い妹」が具現化したようなものだ。
「早速家を案内しますわぁ!」
そこからお嬢さんはルンルンでルームツアーを始めた。庭の面白いところや、なぜか1番広く豪華なルアの部屋。僕はルアの部屋を使おうと思っていたのだが、お嬢さんに露骨に嫌な顔をされたのでやめておいた。ルアと一緒に寝るイベントでも期待しているのだろう。
まあ、なんだかんだで家を確保できたしルアも悲しませずに済んだ。これにて一件落着。




