ただ、そう思った
「うぅ〜」
「ほら、わがまま言ってないで」
「いやいやぁ〜!」
ルアは今日、魔法学校に旅立つのだ。自ら望んで行くことを決めたルアだが、どうやら僕と離れるのが嫌らしい。ルアはもう10歳になり、その実力も素晴らしいものに成長していた。だが心はまだまだ子供のようだ。
「魔法学校は全部行けば8年もあるんだ。2年会えないくらいどうってことないだろ?」
「いや、嫌だよぉ!」
魔法学校は3年で卒業することができる。ただそこから5年通うとさらに仕事の選択肢が増え、いい職業につきやすくなるのだ。まあいわば高卒か大卒かということだ。ルアは一応、8年通うつもりらしく必然的に僕もそうなった。
「なら、定期的に帰ってくればいい」
「嫌。ルグもついてきて」
すると母さんと父さんは困ったように顔を見合わせた。まあ、こんな大泣きしてる子供を無理やり行かせたくないのだろう。別に寂しいのはルアだけじゃないからな。
「別に僕はついていってもいいけどね」
「ほんと!?」
するとルアは目をキラキラ輝かせて、嬉しそうに言った。どこに居たってそう変わらないが、ルアについていった方が面白そうだ。
「ルグまでそんな。父さんたちは心配してんだぞ?」
「そうよルグ。ルアの面倒を見てほしいってニナちゃんにもう頼んであるんだから」
普通は親もついていったりするものだが、うちの場合はそうは行かず、父さんの友達の娘さんにルアの面倒を頼んでいるのだ。そのニナという女はその魔法学校ですでに2年過ごしているらしい。
「ならこうしよう。僕はルアについていき、僕も住んでいいかダメ元で聞く、ダメだったらルアは諦め、よかったらそのまま住む」
「そ、そんな、迷惑でしょう」
「だから聞きに行くんだ。ルアもいいね?」
ルアは少し不満そうな顔を見せたが、甘んじて受け入れるといった様子で準備を始めた。僕はまとめ上げるのは割と上手いんだ。重要なのは論点を上手くずらすこと。母さんたちが本当に嫌だった理由は、心配と寂しさ。だがそれを迷惑か否かへと問題を変えたのだ。
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そういえばこの人生で馬車に乗るのは初めてだったな。なかなか豪華な馬車だ。ルア1人用に用意されていたようだが、急遽僕も乗ることになった。それでも特に御者は嫌な顔をすることなく、普通に乗せてくれた。
「気持ち悪くない?」
「うん、全然」
ルアは特に気にした様子もなく、ソワソワしながら外の景色を眺めたりしている。僕が初めて馬車に乗った時は死にかけた。僕は車酔いも酷い方だったのだが、馬車はそれを超えてきた。ただ、転生20回目あたりで慣れて今では全くない。
ルアは少し照れくさそうに下を向きながら、僕の横に座る。
「お兄ちゃん、ありがとね」
「ああ」
するとルアはそのまま僕にもたれかかり、僕が顔を見た時にはすでに眠りについていた。魔法学校は割と危なく、死人も出ることもあるくらいだ。みんなは当たり前と言うかもしれない。でも、僕はルアには死んでほしくないと、ただそう思った。




