そこに愛はあるんか?
あれから1年が経った。1年とは短いものだ。人は刺激を感じれば感じるほど時間も長く感じる。これはネット等で昔に見た情報とかなく、ただの僕の持論で全く根拠はない。知らないことを知れば知るほど、転生すればするほどに1年が短くなっていく。まるで1年が1日のように短く感じるのだ。
「お兄ちゃん、戦お!」
ルアはあれから1日も休まず、鍛錬を続けている。身長も少し伸び、髪の毛がショートヘアからロングに変化していた。僕の家族は僕を除いてみんなオレンジっぽい色をしている。だが僕は毎回、性別や見た目が変わっても、髪色や目の色は変わらないのだ。いやと言うか男として生まれた場合、見た目は変わっていない。環境の違いで前と少し変わることがあるくらいなものだ。さらに僕は日本人でも珍しいほど髪も目も黒い。
「お兄ちゃん、聞いてるの?」
「ああ、悪い。別に戦うのはいいよ」
「やったぁ!」
ルアは1年間素振りしかしていなかった。だから戦うも何もない気がするが、まあいいだろう。
「にしても突然だね」
「ルア、コツを掴んだの。もうお兄ちゃんもボコボコにしちゃうぞ!」
ルアは威勢のいいことを言うと、真面目な顔になり木刀を構える。ルアは木の枝で最初振っていたが、それを見て母さんたちが木刀を数本買い与えたのだ。
「いくよ!」
「ああ」
「とりゃぁああ!」
ルアは剣を構えて、まっすぐ僕へ突っ込んできた。予想通りの行動だ。戦術も何もない。何より……。僕は剣を下げ、ルアの攻撃を真正面から受ける形で待機する。
「どうした?」
ルアは剣を当てる寸前で止めた。
「あは、あはは! 私の勝ちだよ!」
ルアは無理繰り誤魔化すように笑って、勝利を宣言すると剣を置いて家に戻ろうとする。
「ルア、これは木刀の試合だ。弱めにでも当ててくれないと困る」
剣を振る者なら誰しも立ち止まる、最初の壁だ。人や魔物に剣を突き立てることができない。今はまだ木刀だがこれが真剣になった時、ルアは果たして僕に剣を向けられるのか。
ルアは僕に見抜かれたことで諦めたのか、一気に体の力を抜くと座り込んで泣き始めてしまった。
「無理、無理だよぉ! 大切なルグの体に剣なんて当てられないよぉ」
「ならもう剣士になるのは諦めろ。お前には無理だ」
ルアは慰めてもらえると思っていたのか、衝撃を受けたような悲しい顔を見せた。まあ実際これ以降も振れないようじゃ無理だよね。だって振れないんだもん。
するとルアは寝転がって床をどんどん叩くと、駄々を捏ね始めた。
「やだやだぁ〜!!」
「君の優しいところは尊敬するけど、それじゃ剣士にはなれない。ルアはなんで人に剣を振りたくないの?」
飴と鞭を上手く使い分けることは重要だ。本当は鞭だけ使っていたいのだが、相手は人間。精神を乱してしまえば元も子もない。
「だって痛いでしょ?」
「またそうだね。でも僕はその痛みを不快に思ったことはないよ」
「嘘つき」
ルアは全く信じていないようで、少しずつ拗ね始めている。単純な話、アドレナリンが出ているからそこまで気にならないってことだ。でもこれをそのまま言ったって伝わらない。
「ならやってみようか」
僕は戦うぞ、と伝えるように剣を構える。
「今度は本気でやってねっ!」
「ああ」
僕は言葉を発するのと同時に高速で踏み込み、ルアの剣を持っている手を軽く剣で叩いた。ルアはその衝撃で剣を落とし、尻餅をつく。
「うわ! もっかいもっかいぃ!!」
「ほら。君は痛みなんて気にもしてない」
僕は上手くいったのでドヤ顔で語るが、ルアは全く聞いてない。
「とにかくもう一回ッ!!」
その後、負けず嫌いなルアは僕を殺す勢いで木刀を振ってきた。まあなんか思っていたのとは違ったが上手くいったし良いだろう。ただルアよ、そこに愛はあるんか?




