楽しんでない人の視点で見る世界は楽しくない
にしても面白い構造の洞窟だ。門の時点から建築センスがあるのはわかっていたが、これは相当知能が発達した魔物、いや魔人か。魔人は人型の魔族で割とたくさんいるものの、ここまでちゃんとした基地を持つとなると上位個体だろう。いわば、なりかけの魔王だ。
「ダンジョンみたいな家だな」
基本的に全て石でできており、人が6人並んで通れるほどの通路になっている。明かりもちゃんと灯されていて暗くて見えないということもない。ただ道が定期的に分かれており、ルアがどこにいったがよくわからないのだ。
「ルア〜」
大きな声を出して読んでみてもダンジョン内に反響するだけ。するとその直後後ろから嫌な気配を感じる。
「おっと」
長剣が振り下ろされそれを軽く避けて振り返ると、そこにはゴブリンがいた。いやゴブリンだけではない。オークもいればヘビもいるし、犬もいる。全部何かしらの名前があった気がするが、王道のゴブリンやオーク以外あまり覚えていない。
「うぅ〜」
犬は威嚇を始め、オークとゴブリンはニヤける。ヘビを下を出し戻ししと、かなりみんな個性的である。これが異文化交流というものなのだろう。魔物は本来それぞれの種族同士と固まるもので、他種族とは敵対しているはずだがみんな仲良くしているのを見るに、今回のボスはかなりヤバめのようだ。
「まあ、なんでもいいか」
僕は適当にそいつらを木の枝で切り刻み、先を急いだ。魔物なんて切り刻んでしまえば、どれも同じようなものだ。にしてもルアはどこへ行ってしまったのだろうか。
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ーーその頃、ルアはなんとボス部屋に到達していた。
「ほほう、人間の来客とは面白い」
その魔人は王座に座り、怯えるルアの姿を楽しげに眺める。ルアは手足を震わせながらも、しっかりと立ち魔人に木の枝の槍を向けた。この魔人の正体は上位の悪魔だった。
「ひ、本当に魔王に出会うなんて……」
すると悪魔はルアの言葉に耳をピクと反応させる。
「むむ、むむむむ? 今、我をなんと呼んだ?」
「ま、魔王」
「なんと!! 私が次期魔王に相応しいと? なんと見る目のある少女なのだ!」
悪魔は突然立ち上がりそう叫ぶと、嬉しそうにルアに近づいていく。それを見てルアは体をさらに硬直させ、少しずつ後ろへ後退する。普通はこのレベルの悪魔に出会えば、恐怖で体が締め付けられ全く体が動かないものだ。
「こ、こっち来ないでよ!」
ルアは怯えた表情で涙を流す。それを見て悪魔はより嬉しそうににやけた。悪魔は人の怯えが好物である。なぜなら悪魔は人に怯えられれば怯えられるほど力を伸ばす習性があるからだ。
「やはり人間の怯えた表情は絶品だなぁ!」
悪魔は興奮した様子でルアに手を伸ばす。
「い、いやぁ!!」
だが悪魔の手がルアに触れることはなく、突然横にボトンと落ちた。
「君は魔王には向いていないよ。優し過ぎる」
突然の見えない攻撃に、悪魔は混乱しながらも慌てて距離を取る。
(なんだ今の攻撃は…!? 魔力も殺気も感じなかったぞ!)
「な、何者だ!」
「大丈夫?」
悪魔が視線を向けると、そこには木の枝を持った小さな少年が立っていた。
「る、ルグぅ!!」
ルアは安堵したように涙をこぼし、思い切りルグに抱きついた。ルグは動きにくそうにしながらルアを剥がそうとするが、足で挟まれており剥がせず仕方なく抱っこした。
「な、なんだお前!!」
「君の実力なら分かるだろ? 3秒以内に消えろ」
その感情の乗らない声に悪魔はとてつもない恐怖を覚えた。悪魔は身を震わせると慌てて一目散に逃げ出した。実力のあるものは相手の実力をある程度測れるものだ。実力の違いを見分けられるものは生き残る。
「ルグぅ、怖かったよぉ」
ルアは甘えたようにルグに顔を擦ると、そのまま目を閉じた。疲労困憊で眠かったのだろう。
「そうだね」
ルグは興味なさげに適当に返事を返すと、家に向かってルアを抱っこしたまま歩み出した。




