第24話 基本魔法とミスリルの剣
エルヴィン領にはひと足早い秋の気配が訪れ始めていた。
日中の陽射しには、まだ夏の名残がある。
けれど朝夕の風は少しずつ冷たさを含み、屋敷の庭木も、枝先にほんのりと赤や黄を滲ませ始めていた。
王都では、まだ夏の余韻が濃い頃だろう。
だが北に位置するエルヴィン領では、季節は確かに次の色へ移ろうとしている。
そんな秋の初めの午後。
リディアは、屋敷の裏手にある小さな演習場に立っていた。
今日は、マグダレーナ先生から魔法の実技を教わる日だった。
これまでに、基本的な術式は覚えた。
術式を安定させるために、何度も何度も円を描き、魔力も均一に込められるように練習した。
手首が痛くなるほど描かされたその円は、最初こそ歪んでいたが、最近はようやく、マグダレーナ先生に「見られる形になってきましたね」と言ってもらえるようになってきた。
けれど、紙の上に術式を描くことと、空中に術式を描くことは違う。
ヴァルディア王国の魔法では、術式を紙や地面、あるいは空中に描くことが多い。
紙や地面なら、線は平面に収まる。
けれど空中に描く術式は違う。
奥行きがあるぶん、円の歪みや補助式のずれが目立ちやすく、線を平行に保つだけでも思った以上に難しい。
リディアは、両手で練習用の杖を握り直した。
今回使うのは、兄アレクシスが正式な杖を選ぶ前まで使用していた、癖の少ない初心者向けの杖だった。
ヴァルディア王国では、杖は魔法使いにとって大切な自身の一部とされている。
一度正式に選んだ杖を、簡単に買い替えることは良しとされない。
精神面も魔力の流れもまだ揺らぎやすい子供のうちに選んでしまえば、成長と共に合わなくなることがある。
そのため、本格的な杖選びは、学園に入る前の夏に行うのが一般的だった。
リディアもいずれ、自分に合う杖を選ぶことになる。
けれど今は、この練習用の杖で十分だった。
(前の人生でも、魔法を使ったことがないわけではなかったけれど……)
リディアは小さく息を吸う。
前の人生の自分は、魔法が得意とは言い難かった。
術式はうろ覚え。
円は歪み、補助線はがたつき、魔力の流れも安定しない。
それでも公爵令嬢という立場に甘え、最低限使えればいいと、まともに向き合おうとしなかった。
(派手な魔法ばかりに憧れて、基礎を馬鹿にしていたのよね)
今なら分かる。
あのがたがたの線では、魔法が安定するはずもなかった。
目の前に立つマグダレーナ先生は、いつも通り落ち着いた様子だった。
濃紺を基調とした実務的なドレスに、余計な装飾はない。
黒に近い濃灰色の髪をきっちりとまとめ、灰紫の瞳が静かにリディアを見ている。
「今日は、灯火、水生成、物体浮遊の三つを行います」
マグダレーナ先生は、穏やかな声でそう告げた。
「どれも初歩の魔法ですが、侮ってはいけません。やり方は基本的に同じです。術式で魔力の形を整え、呪文で起動する。違うのは、術式の核と、働きかける対象だけです」
「はい、先生」
「灯火は、熱と光を小さく生み出す魔法。水生成は、空気中の水気を集めて凝縮させる魔法。物体浮遊は、対象にかかる重さの向きを一時的にずらす魔法です」
「水生成は、空気中の水気を集めるのですね」
「ええ。何もないところから水を作るわけではありません。空気中に漂う水気を集め、術式で凝縮し、ひとつの水として形を与えるのです」
マグダレーナ先生は、演習場を囲む木々へ視線を向けた。
風に揺れる葉は、まだ緑を残している。
けれど夏の盛りのような濃さはなく、どこか乾いた軽やかさがあった。
「夏の湿った空気なら比較的容易ですが、秋の初めのエルヴィン領は、もう空気が澄み始めています。水気を感じ取るには、よい練習になりますわ」
「分かりました」
「では、まず私が見本をお見せします」
マグダレーナ先生が杖先を軽く動かした。
その瞬間、空中に淡い光の線が走る。
円は、まるで測ったように均一だった。
線の太さも、補助式の間隔も、ひとつとして乱れがない。
やがて術式の中心に、小さな灯火がともった。
それは派手な炎ではない。
けれど揺らぎも煙もなく、必要な明るさだけを静かに保っていた。
(……なんて綺麗な術式)
リディアは思わず息を呑んだ。
魔法そのものは、初歩中の初歩だ。
前の人生のリディアでも、灯火くらいは使えた。
けれど、マグダレーナ先生の魔法は違った。
ただ火が灯ったのではない。
術式の線、魔力の流れ、発動したあとの安定。
そのすべてが、恐ろしいほど美しかった。
前の人生で、自分が適当に描いていた歪な術式が脳裏をよぎる。
(……あれで、よく魔法が発動していたわね)
今さらながら、少し恥ずかしくなった。
次に、マグダレーナ先生は水生成の術式を描いた。
先ほどよりも、少し柔らかな曲線を含んでいる。
杖先の周囲に、露のような小さな光が浮かび上がった。
それは空気中の水気を集めるように少しずつ寄り集まり、やがて透明な水の珠となる。
秋の陽射しを受けた水球は、小さな硝子玉のようにきらめいていた。
最後に先生は、足元に落ちていた若い黄色の葉を一枚、ふわりと宙に浮かせた。
葉は風に巻き上げられたのではない。
見えない手に支えられるように、静かに空中へ留まっている。
「……すごい」
リディアは、思わず声を漏らした。
「ふふ。基本魔法でそんなに褒めてくださるの?」
マグダレーナ先生は、少し不思議そうに微笑む。
「魔法そのものではなく……術式が、あまりにも美しかったのです」
「まあ」
マグダレーナ先生の灰紫の瞳が、ほんの少しだけ嬉しそうに細められた。
「術式の美しさに目が向くのは、良いことですわ。では、今度はリディア様の番です」
「はい」
リディアは杖を構えた。
まずは灯火。
教わった通りに、空中へ術式を描く。
円が歪まないように。
補助式の位置がずれないように。
魔力が均一に込められるように。
慎重に、慎重に線を重ねていく。
「――小さき火よ、我が手に灯れ」
短い呪文を唱えると、杖先に小さな灯火がともった。
ほんの少し揺らいだが、すぐに消えることはない。
「……できましたわ」
「ええ。初めてにしては十分です。ただ、少し肩に力が入っていますね」
「肩に……」
言われて初めて、リディアは自分が無意識に息を詰めていたことに気づいた。
「術式を正確に描こうとする意識は大切です。けれど、身体が強張ると魔力の流れも硬くなります。もう少し、呼吸を楽に」
「はい」
次は水生成だった。
リディアは杖を構え、空気中の水気を集めるように意識する。
けれど、目に見えないものへ手を伸ばす感覚は、思っていたより難しかった。
水気を掴もうとすると、するりと逃げる。
強く引き寄せようとすると、術式の端がわずかに乱れる。
杖先に細かな水滴が浮かんだものの、形になる前にぱらぱらと散ってしまった。
「……難しいですわね」
「秋の空気は、夏ほど水気を含んでおりませんから。焦らず、空気を掴むのではなく、招くように」
「招くように……」
リディアはもう一度、深く息を吸った。
無理に引き寄せるのではない。
目に見えない水気が、自然と集まる流れを作る。
そう意識して、もう一度術式を描いた。
小さな水滴がひとつ。
またひとつ。
杖先に集まり、親指ほどの水の珠が生まれる。
「できましたわ……!」
「ええ。上出来です」
マグダレーナ先生の言葉に、リディアは胸の奥がふわりと温かくなるのを感じた。
最後は物体浮遊だった。
対象は、足元に落ちていた葉。
リディアの術式は丁寧で、葉はきちんと宙に上がった。
だが、その動きはとてもゆっくりとしている。
まるで壊れ物を扱うように、慎重に慎重に持ち上がっていく。
「正確です。ただ、少し丁寧すぎますわね」
「丁寧すぎる、ですか?」
「ええ。実戦では、正確さと速さの両方が必要になります」
マグダレーナ先生は、宙に浮かぶ葉を見つめながら言った。
「リディア様は、術式をとても大切に扱います。それは大きな長所です。けれど魔法は、紙の上に描いて眺めるものではありません。必要な時に、必要な形で使うものです」
その言葉に、リディアは静かに頷いた。
「美しく、正確に。そして迷わず。次はその練習をいたしましょう」
「はい、先生」
実技授業を終える頃には、庭を渡る風が少し冷たくなっていた。
リディアはマグダレーナ先生と共に馬車に乗った。
向かう先は、エルヴィン領に新しく建てられた鍛冶場である。
その鍛冶場は、ドロガンたちドワーフ職人がエルヴィン領へ来てから、三人であっという間に建ててしまったものだった。
人間の職人であれば何日もかかるはずの土台作りから炉の調整まで、彼らは驚くほど手際よく進めた。
石と鉄で組まれた建物は無骨だが、無駄がない。
炉の位置、風の通り道、材料置き場、作業台の高さ。
そのすべてが、鍛冶をするためだけに整えられていた。
リディアたちが到着すると、鍛冶場の入口にいた領地の職人が、汗を拭いながら慌てて頭を下げた。
「リディアお嬢様、いらっしゃいませ。親方は奥におります」
鍛冶場の中へ入ると、熱を含んだ空気が頬を撫でた。
炉の奥では赤い火が唸り、槌が金属を打つ音が規則正しく響いている。
すでに、ミスリル加工の試作は始まっていた。
ドロガンたちの周囲には、エルヴィン領の職人たちが集まっている。
皆、額に汗を滲ませながらも、一言も聞き逃すまいと真剣な眼差しでドワーフ職人たちの手元を見つめていた。
ドロガンたちは、かつて王都でも人間の職人に鍛冶を教えたことがあるらしい。
けれど多くの者は、すぐに首を振ったという。
色の違いが分からない。
音の差が聞き取れない。
槌を入れた時の返りなど、どう記録すればいいのか分からない。
ドワーフの技は、あまりにも感覚に根ざしていた。
だからこそ、ドロガンたちはエルヴィン領の職人たちにも、最初はあまり期待していなかったのだろう。
けれど彼らは、分からないと言いながらも、炉の前を離れなかった。
失敗すれば記録し、聞き取れなかった言葉は何度でも尋ね、自分たちの技術に置き換えようとしている。
「今の“鉄が息をする”というのは、炉から出した直後の音のことでしょうか」
「違う。音だけじゃねえ。槌を入れた時の返りも見ろ」
「返り……手に伝わる感触ですか?」
「そうだ。だが、手だけで見るな。耳と目も使え」
そんなやり取りが、鍛冶場のあちこちで交わされていた。
もちろん、それでも簡単ではない。
人間とドワーフでは、鍛冶に対する感覚が根本から違う。
同じ金属を炉に入れても、ドワーフたちは色のわずかな変化、音のかすかな違い、槌を返す感触だけで、内部の状態を見抜いてしまう。
一方、人間の職人たちは、どれほど真面目に目を凝らしても、その変化をすぐには掴めない。
努力が足りないわけではない。
むしろ、皆、必死だった。
それでも、真面目な努力だけではなかなか埋まらない種族の才能の壁が、そこには確かにあった。
(努力すれば、何でも同じようにできるわけではないのね)
リディアは、炉の赤い光を見つめながら静かに息を吐いた。
(けれど、だからといって学ぶ意味がないわけではない。ドワーフと同じになれなくても、人間には人間の積み上げ方があるはずだわ)
ドロガンは、炉のそばで槌を置き、リディアたちに気づいて顔を上げた。
「おお、リディア嬢ちゃんじゃないか」
「こんにちは。先日お話しした、マグダレーナ先生をお連れしました」
リディアが紹介すると、マグダレーナ先生は淑女らしく軽く礼を取った。
「マグダレーナ・シュタインと申します。お忙しいところ、失礼いたします」
ドロガンは、じろりとマグダレーナ先生を見た。
「この人が例の、王国屈指の天才魔導師様か」
「はい。私の先生です」
「王国屈指、ねえ。そいつはまた大層な肩書きだな」
「まあ、リディア様。屈指だなんて大げさですわ。もう前線を離れて、しばらく経っておりますもの」
マグダレーナ先生は穏やかに微笑んだ。
(こんなに穏やかな方なのに前線で働かれてたのよね……想像がつかないわ)
リディアが内心でそう思っていると、ドロガンは面白そうに口角を上げた。
「で、その天才魔導師様が、わざわざ鍛冶場に何の用だ?」
「実は、王国騎士団にいる夫のために、魔力伝導に優れたミスリルを使った剣を作れないかと考えております」
マグダレーナ先生は、炉の赤い光を受けながら静かに続けた。
「もちろん、相応の対価はお支払いいたします。材料費も職人の手間賃も、軽んじるつもりはございません」
その言葉に、ドロガンの目がわずかに鋭くなった。
「剣か。飾りじゃなく、使うためのもんだな?」
「ええ。戦場で使うものです」
鍛冶場の職人たちも、自然と手を止めて耳を傾けていた。
マグダレーナ先生は、落ち着いた声で続ける。
「ただし、目的は殺傷ではありません。剣に魔術式を組み込み、魔力を流すことで刃に雷の性質を帯びた魔力を走らせる。触れた魔物の動きを止め、生きたまま捕らえるための剣です」
「殺す剣じゃなく、捕まえる剣か」
「ええ。魔物を生きたまま捕獲できれば、危険度の低い個体は遠方へ逃がすこともできます。また、研究対象として観察することや、必要な素材を安全に採取することにも役立つでしょう。何より、騎士たちの危険を減らせる可能性がありますから」
「わざわざ剣にしなくても、魔法でいいだろ」
「実戦では、術式を組む時間が問題になります。後衛が安全な位置で準備できる状況ならよいのですが、魔物との距離が近い場では、発動が一拍遅れるだけで命取りになりますわ」
「だから剣に式を刻む、ってことか」
「ええ。剣そのものに簡易術式を持たせられれば、使い手は魔力を流すだけで、魔法に近い効果を引き出せるのではないかと考えております」
ドロガンは考え込むように頷き、「なるほどな」と呟いた。
リディアは、演習場で教わった魔法の仕組みを思い出していた。
魔法は、術式で制御し、呪文で起動する。
けれど、もし術式そのものを剣に刻んでおけば。
魔力を流すだけで、魔法の効果を発動できるのではないか。
リディアは炉の赤い光に照らされたミスリル片を見つめる。
(でも、魔術式を道具に刻み、魔力を流すだけで起動できるなら……)
それは、ただの剣ではない。
魔法と鍛冶と魔道具の間にある、新しい何かになる。
ドロガンは腕を組み、低く唸った。
「面白ぇ。だが、簡単じゃねえぞ」
「承知しております」
「剣は振るもんだ。ぶつかるし、欠けるし、歪む。そこに精密な魔術式を刻むとなりゃ、ただの魔道具よりずっと厄介だ」
隣にいた若いドワーフ、トールンが、興味深そうにミスリル片を手に取った。
「刃に刻むなら、深さが難しいな。浅すぎれば消える。深すぎれば刃が弱る」
寡黙なグレンは、炉の火を見つめたまま短く言った。
「柄だ。柄に逃がす道が要る」
「ええ。逆流防止の術式は必須でしょう」
マグダレーナ先生が頷く。
「しかも雷だろう? 下手をすりゃ、魔物より先に使い手がひっくり返るぞ」
「もちろん、扱いを誤れば使い手にも危険が及びます。ですから、いきなり武器にするつもりはありません」
マグダレーナ先生は、落ち着いた声で言った。
「まずは、小さなミスリル片に簡易術式を刻み、魔力の流れと逆流の有無を確かめたいのです。出力も、最初はごく弱く。痺れを感じる程度からで構いません」
「試作からか」
「はい」
ドロガンはしばらく黙って考え込んだ。
炉の火がぱちりと音を立てる。
赤い光が、鍛冶場の壁を揺らしていた。
「似たような試みなら、古い記録にあったはずだ」
ドロガンは奥の棚へ向かい、煤けた革表紙の帳面を取り出した。
開かれたページには、リディアには以前文献で見た覚えのある文字が並んでいた。
「……魔力伝導金属に術式を刻む場合、使用者側への逆流を防ぐため、柄の根元に遮断式を設けること」
リディアが読み上げると、鍛冶場にいた職人たちが、手を止めてこちらを見た。
ドロガンが、にやりと笑う。
「嬢ちゃん、本当に読めるんだな」
「はい。意味だけなら」
「意味だけ分かりゃ十分だ。こいつは古いドワーフの工房記録だ。人間の魔道具師が読めずに投げ出したやつだぞ」
リディアは帳面に視線を落とした。
そこには、ミスリルのように魔力伝導に優れた金属を扱う際の注意点が細かく記されている。
ただし、専門的な内容が多い。
「この部分には、魔力の流れを一方向に整える補助式について書かれています。けれど、かなり古い表現なので……マグダレーナ先生、一緒に確認していただいてもよろしいでしょうか」
「もちろんです」
マグダレーナ先生は帳面を覗き込み、目を細めた。
「なるほど。これは現代魔術式でいう遮断式と流路固定式に近いかもしれませんね」
「ほう。魔導師様には分かるのか」
「リディア様が意味を拾ってくだされば、ある程度は」
ドロガンは短く笑った。
「なら、まずは小片で試す。剣なんぞ、まだ先だ。最初はミスリル板に簡単な流路を刻むところからだな」
「ありがとうございます」
マグダレーナ先生が丁寧に礼を取る。
リディアは、炉のそばで汗を流す領地の職人たちを見た。
彼らは、ドワーフと同じようにはできない。
それでも、学ぼうとしている。
追いつこうとしている。
その姿が、なぜかとても誇らしかった。
「ドロガン様たちが来てくださって本当に良かった……」
リディアがそう言うと、ドロガンはしばらく黙ってこちらを見た。
やがて、ふっと鼻を鳴らす。
「……ここの連中は、逃げねえからな」
「逃げる、ですか?」
「ああ。王都で教えた連中は、すぐに分からねえと言って投げ出す奴が多かった。だが、ここの職人どもは違う。分からねえままでも、次の日にはまた炉の前に立ってやがる」
リディアは思わず職人たちの背中へ目を向けた。
「それは、きっとエルヴィン領の矜持ですわ。北の方は粘り強い方が多いと言うので」
「はっ。嬢ちゃんがそう言うなら、そうなんだろうよ」
ドロガンは照れ隠しのようにそっぽを向き、槌を手に取った。
再び、鍛冶場に金属を打つ音が響き始める。
演習場で学んだ魔法は、どれも小さなものだった。
けれど、その小さな魔法の仕組みは、今、鍛冶場の熱とミスリルの輝きの中で、まったく別の可能性へと繋がろうとしている。
魔法を使うこと。
魔法を道具へ宿すこと。
そして、それを領地の技術に変えていくこと。
(エルヴィン領は、まだ変われる)
リディアは炉の赤い光を見つめながら、胸の奥に静かな熱が灯るのを感じていた。




