表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で効率厨やったら、なぜかギルドが静かになった件   作者: 木芋 平


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/33

第30話 引き受ける者の名前

 期限の前日。


 それは、決断の日ではない。

 **逃げ道が消える日**だ。


    ◇


 王都ギルドの会議室には、いつもより多くの人間が集まっていた。


 管理職。

 現場代表。

 記録係。


 そして、俺。


 だが、空気は違う。

 期待ではない。

 依存でもない。


 ――警戒だ。


「……試行期間は、明日で終了する」


 ハーゼンが、淡々と告げた。


「本日中に、“期限後の扱い”を決める」


 誰も反論しない。

 だが、誰も前に出ない。


 《最適化》が、はっきりと示す。


——主体空白。

——責任回避:最大。

——決断者不在。


 これが、限界だ。


    ◇


 エドガーが、俺を見た。


 視線だけで分かる。


 ――来るぞ。


「……アルト」


 呼ばれた瞬間、空気が一段張り詰めた。


「意見を聞かせてほしい」


 期限付き、ではない。

 完全な委譲だ。


 ここで口を開けば、俺は残る。

 閉じれば、世界は戻る。


 《最適化》が、最後の選択肢を提示する。


——発言:権威再集中。

——沈黙:制度後退。

——第三案:不可逆操作。


 ……それしかないか。


    ◇


「意見は、あります」


 俺は、ゆっくり立ち上がった。


「ただし」


 一拍置く。


「今日で、最後です」


 ざわつきが走る。


「これ以降、俺は一切、

 判断に関与しません」


 逃げではない。

 条件だ。


    ◇


「期限後の扱いは、簡単です」


 俺は、机の中央に紙を一枚置いた。


 たった一行。


《判断責任者:案件ごとに記名》


 空気が、凍った。


「……名前を、書く?」


 誰かが、呟く。


「はい」


 即答する。


「判断した人間の名前を、

 記録に残してください」


 逃げ道を、塞ぐ。


    ◇


「責任を、押し付けるのか」


 ハーゼンの声は、低い。


「いいえ」


 俺は、首を振った。


「**引き受ける**んです」


 違いは、そこだ。


「失敗しても、処分はしません」

「成功しても、称賛はしません」


 記録だけを残す。


「判断した、という事実だけを」


    ◇


 エドガーが、ゆっくりと頷いた。


「……それは」


 言葉を探している。


「楽ではない」


「はい」


「だが」


 彼は、はっきり言った。


「戻れなくなる」


 それでいい。


    ◇


「もう一つ」


 俺は、続けた。


「記名は、管理職だけじゃありません」


 室内が、ざわつく。


「現場判断をした冒険者も」

「受付で線を引いた職員も」


 全員だ。


「関わった人間全員が、

 “判断した側”として残ります」


    ◇


 沈黙。


 長い。


 だが、今回は違った。


「……やるしかないな」


 誰かが、呟いた。


 諦めではない。

 覚悟だ。


    ◇


 その日のうちに、通達が出た。


《試行期間終了後の運用》

《判断は現場が行う》

《判断責任者は案件ごとに記名》

《非致命的損失については、従来規定を適用》


 特別扱いは、終わる。


    ◇


 夜。


 宿の部屋で、俺は荷物をまとめていた。


 長居する理由は、もうない。


 《最適化》が、最後の評価を出す。


——依存:切断。

——主体:移行完了。

——介入余地:消失。


 完了だ。


    ◇


 翌朝。


 ギルドの掲示板に、新しい依頼が貼られていた。


 その横に、小さな欄がある。


《判断者:____》


 まだ、空白だ。


 だが。


 誰かが、ペンを取る。


 震えながら。

 それでも、逃げずに。


    ◇


 俺は、その光景を遠くから見ていた。


 介入は、しない。

 声も、かけない。


 ただ、確認する。


 世界が、

 **自分の名前で判断を引き受け始めた**ことを。


 《最適化》が、静かに最終記録を残す。


——第1部:完了。

——主人公役割:終了。

——次章条件:外部視点。


 俺は、踵を返した。


 ここから先は、

 俺がいなくても進む話だ。


 それでいい。


 それが、この三か月の、

 唯一にして最大の成果なのだから。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ