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Mission-67 『誤解と誤解と一区切り』


「はぁ?」


 思ってもみなかった見当はずれな指摘をされ、反射的にそんな呆れた声を出してしまう。

 いや…、「この人の何?」って言われたもなぁ…。


「普通にダチだけど」


 嘘を吐く理由も特にないので正直にそう答える。


「嘘よ!」


「嘘じゃねぇよ」


 が、思いっきり否定されてしまった。その勘違いはマジで止めて頂きたい。

 拾う謂れのない火中の栗をせっせと拾ってるってのに、そっから更に自分まで火中の栗に仲間入りするつもりはない。


「じゃあ、こいつらに聞いてみろよ」


 というか向こうが怒り心頭で感情が先走っている今、当人が何を言っても無駄な気がする。

 なので、ここの弁解はお仲間に任せることにした。


「うん、葦山さんは普通にみんな共通の友人だよ」

「ああ、そもそもこいつは数日前に転校して来たばっかりだしな。あんたが疑ってる様な関係にはなりようがねぇよ」


 すぐさま隼平聖也コンビが俺の意図を組んでそう答える。

 これで流石に向こうも冷静に、


「じゃあ、なんで名前で呼んでるのよ! 何かよこしまな感情があるんじゃないの!」


 なりませんでしたぁ~。

 うーん、困った。どうやらこの子は俺が彰に好意に近い何かを持っていると疑っているらしい。

 ホント勘弁してくれよ。何でもかんでも色恋に結び付けて、女学生かこいつらは? ……そういや、女学生だったな。


「あのねぇ――」


 が、そこで俺を庇うように隼平がこちらに近づきながら少し苛立ったような声で口を開く。

 ホントに良いやつだ。――が、ここで新たに彼女たちの敵対の対象をつくるのは賢くない。その役回りは俺と彰だけで十分だ。


「ストップ」


 そんな考えの元、隼平を手と声で制す。そして、女学生たちと真正面から向かい合った。

 よし、ここは年上の余裕を見せつけて諭そうではないか。


「いや、俺こいつに惚れる程に趣味悪くねえから。いらない心配だよ」


 この前の昼の緋音の言葉を借りて、微笑しながらそう伝える。

 が、その言葉を聞いた女学生二人は俺の顔を見ながら目を見開いた。


 ――あ、やべっ…。


 そして一秒遅れて俺も気づいた。

 こいつに惚れる程に趣味悪くねぇ→こいつに惚れるやつは趣味が悪い→目の前の二人はこいつに惚れていた→お前ら二人は趣味が悪い。

 俺の言葉は聞き手によってはそんな風に言っている様にも聞こえちまうな、これ。

 

 そして案の定、


「それは私ら二人が趣味悪いって言いたいわけ!? ばかにしてるの!?」


「うっ、ぐすんっ! ううっ、うううっ…!」


「いやいやいやいや! 誤解だ、誤解!」


 と火に油を注いだように女学生Aが俺に怒りの形相で近寄ってきて、女学生Bは再び号泣してしまった。。

 ――まぁ、これは俺が悪いな。って近い近い!

 手を前面に出し、「どぉどぉ、どぉどぉ」と何とか女学生Aを宥める様にしながら目で隼平と聖也に助けを求める。


 聖也の方は「何をやってるんだ…」という視線を返してくる。頼りにならん!

 ならもう頼れるのはお前だけだ、隼平! そして期待を裏切らない男は「はぁ~」と何かを諦める様にため息を吐くと、


「はい、みんな一端落ち着こうか! 正直言ってもう色んな人に迷惑が掛かってる!」


 パチンと手を叩きそう言うと、一撃で混沌としていた室内をシンとさせた。


「勿論、ことの発端はうちの部員がお二人に迷惑をかけた点だというのは承知している。でも、それにより二次災害的な意味で今度は他の無関係な人にも迷惑が及んでる。――だから、もうここで一区切ひとくぎり決着をつけよう」


「…一区切り?」


「うん、一区切り」


「――っ!」


 ニコッと微笑んでそう伝える隼平に女学生Aが頬を赤くする。

 …まぁ、責められんだろう。男の俺から見てもメッチャイケメンだしな。

 

「まずは一番大事なことをハッキリさせないとね。――キミ達は彰ともうこれっきりで別れたいのか、それとももしかして反省させてよりを戻したいのか。まずはそれを教えてくれないかな」


 そして、その柔らかな微笑みから真面目な顔に表情を変えて隼平はそう二人にまっすぐ問いかけた。


 あれ? 俺もういらなくね?


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