Mission-27 『焦りと疲れと初日終了』
「あっ、あー…。これは…うん、あれよあれ! 冗談だよ!!」
「じょう…だん…ですか?」
マジでもう適当にさっさと言い訳してなぁなぁにするしかない。即座に俺が出した結論はそんな感じだった。
さすがにこれで「お前実は女装した男だろ」とはならないのはわかっているが、プラス方面かマイナス方面どちらかの影響が出るとすればマイナス方面だろう。
アホな自分が蒔いた種とはいえそれはできるだけ避けたい。
しかし、そんな怪しさ満開どもり全開の俺の言葉に委員長が不思議そうに首を傾げる。
が、ここは強引に押し切る。
「うんうん、何か膠着状態だったし。和ませられればなぁ~、なんて。ハハッ、申し訳ない。じゃあ俺は着席しますんで、気にせずなかったことにして続けてくださいな!」
俺の早口での申し開きに委員長は少し不思議そうにしながら「…はあ」と一応の納得を見せてくれる。
よし、これにて一先ずはセーフでしょ。
窮地から最速で逃げ出し、俺はそのまま着席する。
が、
――え?
その瞬間、聞いてしまった。
何処から聞こえたかはわからない。誰から聞こえたかはわからない。
「――チッ」
けど確かにそのとき、俺の耳に届いたのは舌打ちだった。
……あれ~? もしかしたら初日から何らかの悪印象を与えてしまった…のか?
***―――――
まぁ、とりあえずその俺の自爆以降も普通に委員長の進行で物事は進んでいった。
ちなみに男子のクラス委員は程なくして、矢ヶ条誠くんに決定。放課後はたまに空手で時間が取れないかもしれないと言っていたが、「それくらいならフォローしますよ」の委員長の鶴の一声で決まった。
その後は委員会やらクラスの係などを決めたのだが、こちらも特段と問題なく進行していった。なお、クラス委員決めでやらかして学習した俺はその間は結構大人しめにしていた。
その結果、意外とすんなりと物事が決まっていったのだった。
あれ? クラス委員決めが難航したのってもしや俺のせい?
ってなわけで、今日決めるべきことは無事午前中にすべて決まった。
俺のクラスの係は、教科連絡現国係。簡潔に説明すると現国の授業開始前に先生を職員室に呼びに行き、授業で使うプリントやらを運んだりする係だ。
聞くだけなら簡単そうだし、実際簡単なのだろうが…現国担当が浅見先生らしいのでそこそこ大変そうな気配が今からしている。
そんで委員会の方が生徒会補助委員。これは伏見の推薦で決まった。これも読んで字の通り生徒会の手助けをすると言うものだ。マンモス校なだけあって学校行事を行う際は生徒会の仕事も結構なものになるらしい。それを補助するというものだ。
ぶっちゃけ具体的なことはわからんが、まぁでも少なくとも伏見と一緒だし何とかなるだろうってな感じでオーケーした。
――キーンコーンカーンコーン。
「うーっし、じゃあこれで決定。時間もいい感じだな。午後は部活動紹介、部活入ってるやつは頑張れよ。ほんじゃ、今日はこれで解散!」
そして、全てが決まったところで午前中の最後の授業時間が終わったことを告げるチャイムが鳴り、先生が出席簿で肩をポンポンと叩きながらそう全員に告げる。
いやっ、テキトー過ぎるだろ…。SHRとかねぇのかよ…。
と当然思ったのだが、俺にはそれに元気よくツッコむ気力はもうなかった。朝から色々とあり過ぎ+慣れないことのし過ぎで、疲れてしまったわけだ。
あー、このあとどうしよっかなぁー?
机に突っ伏しながらそんなことを考えると、
「おーい、葦山」
と名前を呼ぶ声と共に頭をポンと何かで叩かれる。
顔を上げると、そこには出席簿片手に持った浅見先生。
「お前はこの後どうすんだ?」
「うーん、当然部活には入ってませんしねえ。帰宅部の人とかもう帰ってもいいんでしたっけ?」
「ああ、今日の授業自体はこれで終わりだから帰りたいやつは帰ってるぞ。他は学食行ったりとかだな」
「あー、じゃあ。今日のところは俺も帰りますわ」
マジで疲れたしな。
今日はもう十分に男の娘として生きただろう。
うん、俺は頑張ったはず。これで初日終了でいいだろう。
そう決めると行動するのは早かった。
素早く荷物をまとめると、
「じゃな、隼平。部活紹介頑張れよ」
「ありがとう。また明日ね、葦山さん」
前の席の隼平に声をかけて俺は立ち上がった。
ちなみに横の席の達也はすでにいない。即行教室を出たらしい。
「あっ、葦山。帰るならちょい職員室寄ってもらっていいか。あれ運んでくれ」
そんな俺に待ってましたとばかりに先生が声をかける。先生が指差した先にあったのは重なったプリント。
正直先生一人で全然運べる量にも見えたが、特に断る理由もないため「はい」と二つ返事で返す。
「あれ? 蒼帰るの?」
そして、そんな俺に今度は別の声がかかる。
見れば、伏見と委員長がバック片手に並んでいた。
「ああ、ちょっと転校初日疲れだ」
「そっかー、一緒にお昼食べに学食行こうと思ったのに…。残念だなぁ」
「わりぃ、また明日お願いするよ。またな、伏見、委員長」
「うん、またねぇ」
「はい、また明日です。葦山さん」
そして、二人に別れを告げて俺はプリントを持って教室を出た。
「意外と馴染んでたなぁ~」
「はい?」
廊下を出たところで先生がそんな声をかけてくる。
「いやっ、初日から結構良い感じなんじゃねぇのって話。少なくともクラスで孤立する心配は無さそうだ」
「そんな心配してたんですか?」
「まぁちょっとだけな。朝も言ったけど、三年の転校生なんてレアケースだしな。馴染めない可能性もある、まぁでも初日から色々と話しかけたりして、時には体を張って冗談言えるんだからいらない心配だったな」
「ハハッ」と愉快そうに笑いながら歩く先生に俺はホッと胸を撫で下ろしていた。
結局、あのクラス委員立候補は冗談として受け入れてくれたらしい。まぁそりゃそうか。
「しっかし、あんな自然に冗談言えるとはすげぇな。まじで男子生徒ですよと言わんばかりの自然な立候補だったぜ。一瞬マジでお前が男子かと思ったぜ」
「ハハッ、まっさか~。そんなわけないでしょう」
そこで不意打ちで飛んできた確信を抉る様なその言葉に俺は内心少しビクッとしながらもそう自然に返した。
のだが…、
「…………は?」
そこで先生の足が止まる。
そして、俺に向かい振り返ったその表情は驚愕に彩られていた。
「?」
その反応に俺は訳がわからずにポカンとした表情を浮かべていたと思う。
「どういうことだ…? お前…おと…こ、なのか?」
「………え?」
――そしてその次の瞬間、俺の意識は暗転した。
***―――――
REBORN-METER 99→98
残りループ可能回数:九十八回
ループ先:三年一組教室――本日PM12:15
***―――――
――キーンコーンカーンコーン。
「うーっし、じゃあこれで決定。時間もいい感じだな。午後は部活動紹介、部活入ってるやつは頑張れよ。ほんじゃ、今日はこれで解散!」
そして、再び意識が覚醒したと同時にチャイムと先生の言葉が耳に届いた。
………は? ループ…した?




