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Mission-26 『役目と委員とドジっ子男の娘』


「はい、っつーわけでそこそこクラスメイトのことがわかったところで色々と決めちまうか?」


 全員分の自己紹介を終えたところで先生が教壇付近に設置されていた椅子から立ち上がり、再び仕切り始める。

 ササッと教卓の後ろまで移動すると、そこに両肘をつき、


「じゃあ、まずはクラス委員決めるか。ちなみにそれが決まれば後のモロモロの進行は丸投げさせてもらう。わかってると思うけど男子一人女子一人な。はい、やりたいやつ挙手!」


 謎の高いテンションで右手をバッと上げる。

 いや、それじゃあんたが立候補してるみたいじゃん。そして、テンション高い理由もこれで仕切り役交代できるだろ。

 

 ……どうでもいいが、なんで会って数時間でこの先生のことをこんなに俺は理解しているのか。

 そんなことを机に膝をつきながら考えていると、


「―――!」


「―――!?」


 不意に思いっきり先生と目が合ってしまった。

 そして、視線を逸らせばいいものの、やつはこれは好機とばかりにニヤリと笑みを浮かべる。


「おー、凄いやる気に満ちた顔だな、葦山。そんなに委員長になりたいか?」


「おあいにく様ですけどそんな顔をした覚えはありません。生まれつきこんな顔です」


 とりあえずそんな目立つ立場にはなるのはごめんなため、即行お断りをする。

 これで話は終わり、と俺は思ったのだが、


「おっ、いいじゃん。委員長が転校生とか面白そう、葦山ちゃんそういうの得意そうだし」


「……」


 とイケメン(偽)が先生の援護に入りやがった。

 あの野郎、何を根拠に…! 完全にノリで適当言ってやがるな。

 だが、まぁここで大人しくやられる俺ではない。倍返ししてやるよ。


「せんせー、彰がやりたいらしいです」


 と、軽く手を上げて推薦返しをしてやった。

 俺の即座のそても思わぬ反撃に「ええっ!?」とハトが豆鉄砲を食らったような顔をして立ち上がる彰。

 効果は抜群のようだ。


「おーし、じゃあ男子は御門な」


「ええっ、ちょちょ待って!? 俺バリバリにサッカー部でなんですけどっ!」


「隼平、サッカー部ってそんな忙しいのか」


「うーん、俺は朝練も昼練もしてるし部長の仕事もあるけど…、彰は放課後及び休日の部活時間だけ全力だな」


「おっし、ならバリバリサッカー部でも大丈夫だろ。ねぇ、先生」


「ああ、委員長の仕事は普通の学校生活内の時間がほとんどだしな」


「待って待ってマジ待って! 俺、嫌だかんね! そんな色々と仕事しそうなことしたくはない!」


「ハッキリ言ったな…。まぁ、でもやる気ないやつにやらせて面倒事になっても手間だから、御門は最初っからなしだな」

 

 そう言って先生がさっき書いたばかりの彰の名前を消す。

 最初っから採用する気ないなら何故書いたんだ?


「ならなんで、書いたんですかぁー…」


 俺の心の声とぐったりした顔の彰が椅子に座るときの心の声が一致する。



 そして、またまた数分後。

 未だにクラス委員の片方は決まってなかった。

 未だに決まってない方は男子。つまり女子は決まったということだ。


「えーっと、このまま決まらないとじゃんけんとか運になっちゃうんですけどー。できれば自分から立候補してくれるといいかな~なんてぇ」


 そんなわけで今は先生に代わり女子のクラス委員となった委員長が教壇に立って話している。

 委員長ってのは椎葉のことね。そんな椎葉も困り顔。何故かというと、椎葉が言うように男子のクラス委員が決まる気配がないのだ。


「…まいったな、こりゃ。隼平は無理なんだもんな」


「残念ながらね。心情的にはやってあげたいんだけど、俺はやっぱ色々とサッカー部関係がね。なったあとに全然手伝えないんじゃ、椎葉さんの負担にもなっちゃうし」


「そっか~」


 そんな椎葉を少し可哀そうに思いながら隼平と小声で話す。

 まぁ、隼平の言うことはもっともだしな。


 そう思いながら、退屈そうにしながら頬杖をついている横の男子を見てみる。

 及川達也。えーっと、たしかパソコン部部長って言ってたよな。やっぱ文化系でも部長だと忙しいものなのかな。


「なぁ、達也」


「――――」


「おいって、達也」


「――――…………ん? 俺のことか?」


「そう、お前だよ。ていうか、このクラスお前以外に達也っていないだろ」 


 二回目の呼びかけでようやく反応を返してくれた。

 くれたのだが、呼ばれたのが自分だと認識した瞬間に心底不服そうな顔でこっちを見てくるんだけど…。やっぱ変わってるやつ多いな、このクラス。

 まぁ、それは今は置いといてもいいか。


「なぁなぁ、パソコン部の部長って忙しいのか?」


「…ボチボチってところだ」


「なら、あれやれば――」


 そう黒板を指差してそんなことを言ってみる。

 が言った瞬間に、


「断る」


 そんな返答が返ってきたかと思うと、すぐに達也は俺から視線を外し先程までの頬杖モードに戻ってしまった。

 …こいつ、さてはコミュニケーション苦手系だな。

 

 そんな周囲の男子と俺が話していても、一向にクラス委員決めは進行しない。

 …あー、もう。しょうがないなぁ、委員長には朝の借りがあるし、ここはその恩返しをするとするか、


「おーい、委員長」


「? 葦山さん、どうかしましたか?」


「あれなら、俺やるよ。そこ名前書けばいいの?」


 そう机から立ち上がる。

 まぁ、これ以上長引いても困るだろうしな。目立つ立場になるのはしゃーないけど、まぁいいだろう。より一層男だとバレないように気をつければいいだけだ。


 そう覚悟を決めて、勢いよく立ち上がった。

 立ち上がったのだが…、


「………………」

「………………」

「「………………」」


 委員長、先生、クラスメイトの沈黙が俺に襲い掛かる。


 えっ、なにこの空気?

 俺なんかまずいことした!? やっぱ転校生がクラス委員なんて変だった!?


 少し混乱気味になる俺。

 そんな俺に、


「あの~葦山さん。気持ちは凄く嬉しいんですけど…、今は男子のクラス委員を決めていてですね…」


 そう委員長から混乱の正体が告げられた。

 その言葉の意味を脳が受けつけると、


 ――ぶわっ…、と背中に冷や汗が浮かぶ。


 …やっ、やっちまった―――!!

 

 今の俺って、男じゃなかった! 男の娘なんだった!!


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