プルメリアの訪問
「ここで出て、コンボ決めて決めて決めてーー。」
夏樹の実況っぽいプレイによって画面には4連killと表示されている。
「あのー夏さん。私の出番ないんですけど。」
「いやいや、あなた様がタゲ取ってくれるから、わたくしが入れるんですわよ。」
「その気持ち悪いしゃべり方やめて。見てるこっちが痛々しく感じる。」
汐からみぞおちクリティカルをもらい少し悲しい気持ちになる。
「ちょっとトイレ。…覗くなよ。」
「あれは事故なんだって。」
「どうだか。」
初日にラッキースケベしてしまったからか本当にそういうのに関しては信用がない。仕方ないと言ったら仕方ないのである。夏樹は勝手に自分で納得した。ピコンとメールの通知が鳴る。夏樹はスマホを取る。叔母からだ。「今日残業になっちゃったからよろしくーー。お寿司の出前だけとっといたからそれ受け取っといて。お金は出してあるから大丈夫。あともし汐に変なことしたまじでどうなるか考えてから行動してくださいね。それではお休みなさーい。」対話するときよりもおばのテンションが高いメールだ。これはメールだからなのか。またまた仕事でおかしくなったのか。考えものである。
「夏ー。ゲームの続きしよっか。」
ニコニコしながら汐が迫ってくる。こいつはこいつでどうしたんだろう。
「いやーお母さんからのメール見た?」
「ああ、帰ってこないらしいね。」
「そこだよ。そこ。帰ってこないってことは今日は私たちだけのユートピアだー。何をしても怒られない。さあ夏樹君よ早くコントローラーを取れ。今日は寝かせないぞ。」
汐はそういってパーティーゲームを始めようとしていたところに
「ピンポーン」
インターホンのチャイムが鳴った。
「あ、お母さんがとった出前かな。ちょ、夏。ゲームの起動だけやっといてくれない。」
「そんくらいなら全然いいぞ。」
俺たちがこんな会話をしている間にもインターホンが二回なっている。
「じゃ、よろしく。はいはいー今行きます。」
汐は少し声の高い外での”成瀬汐”の仮面をかぶり外に出ていく。正直出前の応答のほうがだるかったのでこっちでいいなんてラッキーだと思った。が、そんな感情は2秒後に虚空に散った。
「夏ー?。ちょっと来て。」
「んー?なんだよ…し…お?」
夏樹は面倒に思いながら玄関に出た。しかしすぐに態度を改めることになる。なぜなら。
「さ、さっきぶりです…ね。有賀夏樹くん。」
なぜなら。そこにいたのは白い髪。青い瞳。白い長そでの服を着た。あのバイオリン少女だったのだから。
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現在、現在俺と汐と例の少女の三人でダイニングの机に座っている。汐が玄関じゃなんだからと彼女を家に上げた。どうしてコーナッター。
「これ、麦茶とようかん。よかったら召し上がってください。」
汐は家事のできる優秀な”成瀬汐”としてふるまっている。落ち着かない。それは相手も同じだろう。鈴華さんはずっとそわそわしている。彼女は水に垂らした絵の具のようだ。
「お二人は同居されているのですか?」
少女が聞く。絵具が混ざり始める。
「いいえ。常に同居しているわけではありません。夏樹くんは私のいとこで、彼は期間限定でここで同居することになっているのですよ。」
と汐。丁寧語を使いわかりやすく端的に言いたいことを伝えている。
「あら、そうなのですね。私はてっきり恋人同士なのかと。っと世間話はここまでとして。本題に移らせてもらいます。まずいきなりの訪問をお許しください。私の名は水谷鈴華。16歳でございます。」
俺たちと同じ年齢か。彼女の背丈は165㎝の汐より一回り小さい。150代後半あたりだろう。
「今回訪問させていただいた理由といたしましては夏樹くんが私の上着を持って帰った件なのですが…。」
「夏?これはどうゆうこと?説明しなさい。」
鈴華さんが言い終わる前に汐が夏樹を罵倒した。一瞬、素の汐に戻っている。
「あのーこれに関しては私の過失でこうなっといいますか。」
「へ?」
すんげー間抜けな声だなー。面白くて吹き出しそうだ。
「私が神社に上着を忘れてきてしまって、それを夏樹君が持って帰ってきてくださったのです。」
鈴華さんが話している間汐は「へー。」とか言いながら聞いていた。
「なるほど。「じゃあ夏は悪くないな」なんていってほしかったですか?なぜ私にそれを報告しておかないのですか?ほうれん草がなっていないのでは?はやく鈴華ちゃんの服、ドライヤーで乾かしてきてください。」
「おっしゃる通りでございます。」
これに関しては本当に夏樹が悪いのだ。夏樹は洗面所に急いだ。
「うーん。とりあえず洗濯終わるまで、鈴華ちゃんはここにいてもらったほうが良いと思います。外も暗いですし、あとで変態馬鹿垂れに遅らせますので。」
「本当にいいのですか。申し訳ありません。ではお言葉に甘えて少し居座ってしまうことをお許しください。」
「いいんですよ。敬語なんて。完璧にこちらが悪いんですし。なんならこれからお寿司の出前が来るのでいただいていってください、たぶん私たちだけじゃ食べきれませんので」
「は、はい。」
「ピンポーン」
「あ、噂をすれば。少し待っててもらいますか。すぐ持ってきます。」
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「あのー、僕が悪かったのそうなんですが、なんで残ってるいる寿司があと4貫なんですか?」
机の上には直径30cmくらいのお盆の端に寿司が申し訳程度の量入っている。洗濯をして乾かして繕って、そしたら寿司がなくなっている。なんかの罰ゲームだろこれ。まあ服を繕ったりするのを後回しにしていた夏樹がすべての元凶なのであまり強くは言えない。
「あー。すいません。すいません。」
彼女はひたすらに謝り倒している。絶対に食い尽くしたの汐だろ。当の本人は何食わぬ顔でスマホをいじっている。
「いや、怒っているのではなくてですね…」
「夏ー。服は乾いたのですかーー?」
またもやどすの利いた声で夏樹の名前を呼ぶ。まじでこの状態の汐はやばい。
「はっはいーー。」
「よろしい。では、鈴華どのを家まで送り届けてくださいね。」
「がんってん承知。」
なんでこんな事いとこにしてるんだろう。夏樹は自分の情けなさを再認識した。
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玄関で虫よけをして殿方に尋ねる。
「忘れ物はない?」
「はい。大丈夫です。」
ピアノでいう“ミ”くらいの声の高さで答える。
「またいつでも、来てくださいね。」
「えっ?来ていいんですか?」
彼女は青い虹彩をゆらし、また長いまつげはすこし上を向く。
「何言っているんですか?私たちと鈴華ちゃんはもう友達ではないですか。」
「友達ですか…。」
彼女は下を向いて少しうつむいてしまった。
「どうしたました?なんか私気に障ることでも言いましたか?」
汐も心配になって少女に尋ねる。身長差と玄関の段差のせいで汐は少しかがんで彼女の目を見る。その光景はもはや親子のようでほほえましかった。
「いえ、何でもないです。少し考え事を。」
「よかったーー。もう嫌われたのかと思ったよ。」
汐はうるんだ目をこすりながらそうそういうと彼女に抱き着く。彼女も「えっ」といいながら困惑している。夏樹は困っている彼女を見過ごせなったため助け舟を出すことにした。
「汐、困ってるだろ。離れな。」
我に返った汐はすぐに仮面をかぶろうとがするが時すでにお寿司。
「ふふふ、汐さんって面白いかたなんですね。」
「あーもうそうだよー。これが素の私ですーー。」
汐のポニーテールは頭をかいたことによって少しばかり崩れている。でもこれが盟友だと夏樹は感じたのだった。




