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「ええ、いいですとも。ですが、一ついいですか? その宝石を私に譲るとは、一体どういうことなのでしょう?」
その女性はニッコリ微笑んでから、宝石をジェームズに素早く渡し、回れ右してスタスタと歩き去っていってしまった。去り際に、彼女はきっぱりと悲しい声で、こうも言ったのだ「今の私には、どうしても笑えないことの方が多いのですの」と、ジェームズはそれを聞いて難しい顔で頷きかけてから、宝石を眺めた。
「今のところ……この宝石はラカには渡さない方がいいな。うん。しばらく、私が持っていよう。そう、様子を見るんだ。けれども、あまり時間はないな。切羽詰まった感じになったぞ」
そういうと、ジェームズは急いで、この宝石を宝石店エアリス・ジャーンの店員に確かめてもらうことにした。本物の八宝石なら彼女のいった言葉には、何かちゃんとした意味があるのだろう。それから、回転式ドアから、ぶつかりそうになった女性が向かったロンドン駅の方へ行くことにした。その女性もひょっとしたら、八宝石と何か関係があるとジェームズの直感はいっていた。
ジェームズは、パニックやピンチの際には、しばしば野生動物のような鋭い感が働くことがあった。
他にも、種々雑多なお客が行き交う宝石店エアリス・ジャーンで、八宝石を買う人とは一体どんな人たちなのだろうと、ジェームズは考えた。
ジェームズは、さっきの店員にトパーズを見せると、確かにこの宝石は八宝石の一つ『笑うトパーズ』だと言った。しかも、ネックレスタイプのインペリアルトパーズと呼ばれ、とても高価な宝石でもあるのだそうだ。
「インペリアルトパーズ?」
「ええ。インペリアルトパーズとは、ブラジル産のトパーズの中で、黄色かオレンジ系の中のシェリーカラーを持っています」
「ふーむ。それで、この赤みがかった黄色か……ところで、シェリーカラーとは?」
「色が、シェリー酒に似ているからだそうですよ」
「そうか……。いや、勉強になったよ。ありがとう」
店員と別れ、宝石店エアリス・ジャーンを出ると、その足で雪の降るロンドン駅へとメインストリートを歩いた。
この季節は、冬の夜風が身に染みる。そんなロンドンだった。




