表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/13

残り【5日】〜別れの準備〜


 昨日の夜にエリナさんが帰ってきたらしく、久しぶりに料理の勉強のため、一緒に朝食の準備した。エリナさんの顔も何故だか懐かしく見えた。


「その様子だと、旦那様との亀裂は解消したようですね」

「はい。皆さんにはご心配お掛けしました」


 あの時、エリナさんの言いつけも破ってしまったので、色々と迷惑をかけた。


「別に良いのよ。私も貴方から学べることもあったし」

「私からですか?」


 そんなことないと思うけれど、と私は頭の上に疑問符を浮かべた。エリナさんはやれやれといった表情で、


「普通、主人に依存してしまった子は主人の死を乗り越えられない。逃げ出すか、死を懇願するか、最悪自ら死を選ぶ子さえいるの。でも、全てがそうじゃないって貴方を見て思えた。結局のところ、私も奴隷というものを偏見の目で見てたのね」

「私の場合、偶々ご主人様に出会えたからってのもあると思いますけど」

「それでも、貴方は悩み苦しんで、最後には答えを出した。それも、苦しみながら生きていく道を。私はそれだけでもリータは凄いと思うわ」


 悩み苦しんだとは言え、部屋に篭っていたのも今更考えてみれば、救いが差し伸べられるを待っていたんだと思う。誰でも良いから、私の背中を押して欲しかった。あの時ご主人様に背中を押されなければ、永遠に答えを出せずにいたかもしれない。だから、全てはご主人様がご主人様だったから、なのだろう。


「それで、リータ。旦那様が亡くなった後、どう生きていくか、考えた?」


 昨日、ご主人様から亡くなった後のことも聞かされた。この家は私の所有物になるらしく、この先困らない程度のお金も用意してくれるということだった。最悪、何の仕事をしなくても生きていけるようだ。

 でも、私には使命がある。元奴隷として成功したところを世間に見せつけないといけない。だから、何かを磨いて世界に発信できるような事をしないと。


「私はガーデニングを学んで、ガーデニング教室を開いてみたいです」


 今の私にあって、伸ばせるものはこれしか思いつかなかった。ご主人様も私の夢を支持してくれた。


「そう。良い夢ね」


 エリナさんはニッコリ微笑んで、そう言った。初めて見るエリナさんの表情だった。

 負けじと私も、大きく笑って「そうでしょう」と返した。



**



 昨日の大雨から一転、外は爽やかな晴天だった。雲一つもないし、空気も澄んでいる。肝心の植物たちも昨日の補強の甲斐あって、大きな障害もなかった。

 育ち具合も、菜園の方は小さく実をつけているものもあったりして、数日も経てば料理に使えるだろう。


「お、リータは花壇が好きだねぇ。やっぱりいた」


 植物を見ていた私の後ろにはご主人様が立っていた。ご主人様も以前のように執務室に籠る必要がなくなり、残りの日々はのんびり過ごすらしい。


「そう言うご主人様はどうしてここに?」

「一応、俺はリータのご主人様ではなくなったんだけどね」


 アハハとご主人様は苦笑した。確かにその呼び方はもうおかしいのかもしれない。でも、


「私にとって、ご主人様はずっとご主人様なので」

「ハハ、変なの」


 私がご主人様と認めるのは後にも先にもこの人しかいない。だから、ご主人様の呼び方はこれでいいのだ。それに、今更呼び方を変えるのも照れくさいし、何と呼べばいいかもわからない。


「そう言えば、私の身分ってご主人様の何なのでしょう?」


 よく考えて見れば、奴隷でない私の身分ははっきりしない。この家に住んでいるけど、使用人でもないし……。

 考えこむ私に対して、ご主人様は笑って言った。


「そんな気にすることでもないけどね。一応、俺の養子のような扱いになってるよ。遺産の相続とかも家族じゃないと面倒だからね」

「よ、養子ですか!?」


 ということは、私がご主人様の娘ってことになるってこと!?

 反対に考えると、ご主人様がお父さん!?

 驚いて挙動がおかしくなっている私にご主人様は、


「今更変に意識しなくていいよ。リータはリータのままでいてくれれば良いからさ。でも、俺はリータの父でいられる今の時間は嬉しいよ」


 と言ってくれた。私もそう思ってくれるご主人様の気持ちは嬉しいし、それに応えたいけど、やっぱり勇気が湧かない。


「いつか、自信を持って……呼べるが来たら、呼び方を変えても良いですか?」


 ご主人様は大きく頷いてくれた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ