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英雄王、武を極めるため転生す ~そして、世界最強の見習い騎士♀~  作者: ハヤケン
第二部

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第497話 16歳のイングリス・和平交渉6

「武公殿! 武公殿! よくおいで下さいました……!」


 そこに頭上から声がする。

 見ると、聖騎士団の機甲鳥(フライギア)に乗ったセオドア特使の姿があった。

 機甲鳥(フライギア)の前に乗って操縦しているのは天恵武姫(ハイラル・メナス)のリップルだった。


「お、技公の息子……いや、お前が新しい技公になるのか? 頼まれてたモンは集めて持って来てやったぜ?」


 セオドア特使の姿を見た武公ジルドグリーヴァがそう言った。

 なるほど彼らがここに訪れた理由は、セオドア特使からの要請に応じてのものだったようだ。

 となると、崩壊してしまったイルミナスの修復や再建に関わるものなのだろうか。

 とは言え天上領(ハイランド)の核たる『浮遊魔法陣』は、イルミナスやリュストゥングの三大公派には作製する事の出来ない代物だとは聞いている。

 そしてイルミナスの『浮遊魔法陣』はその寿命の限界が近かった、と。

 ただそれは変わらずとも、修復出来るならばしない理由も無いだろう。

 ただ――


「セオドア特使! あの――」

「どうしましたか、ラフィニアさん?」

「イルミナスを元通りにするんですか?」


 そう問いかけるラフィニアは、どこか不安そうである。

 メルティナはそれよりももっと、目を伏せて顔色もどこか蒼ざめている。

 イルミナスでの出来事を思い出しているのだろう。

 あれは、決していい事ばかりの天上領(ハイランド)ではない。

 人体そのものを溶かして素材とする魔素流体(マナエキス)を様々な箇所で利用して成り立つ、一見整然と洗練されていながら底知れぬ悪意と恐怖を孕んだ都市だった。

 魔素流体(マナエキス)の正体は大半の天上人(ハイランダー)達には伏せられており、イルミナスの住民だったマイスは事情を知り衝撃を受けていた。

 現状イルミナスが崩壊し、この王都カイラルに身を寄せているマイス達イルミナスの元住民達とは上手くやれているが――

 イルミナスがもし再建できるというならば、一体どうなってしまうのだろうか?

 ラフィニアやメルティナ達が不安がるのも無理は無いだろう。


「いいえ、そんな事はあってはなりません……!」


 温和なセオドア特使にしては、強く意思を漲らせた眼差しだった。


「イルミナスは魔素流体(マナエキス)による超高効率を実践した技術都市。そして技公とは己を肉体を捨て、中央制御装置と一つとなった者……高効率は『浮遊魔法陣』の寿命を延ばし、奴隷や強制労働の類いを行わせない事は地上の人々にかける負担が少ない――ですがその内実を知れば、とても認められるものでは無い……ですからその子は、セイリーンはイルミナスを飛び出して自分の道を探しました」


 セオドア特使はラフィニアの肩にいるリンちゃんへと視線を送る。


「リンちゃん……」


 注目を浴びたリンちゃんはそれを嫌がるようにぷいと顔を逸らすと、素早くイングリスの服の胸元に潜り込もうとする。


「ひゃあっ!? だ、ダメだよリンちゃん暴れないで……! くすぐったいから――!」


 本当にこういう時のリンちゃんの動きは恐ろしく素早い。


「お、おお……すんげー揺れてやがるな……」

「ジル様! 変な所を見ないで下さい!」

「わ、悪い……! これも修行かと思ってな」

「ゴホン。と、ともかくセイリーンと同じく、私もウェインとの伝手を頼って自分の道を行こうと――それはイルミナスを元通りにしたり、私が新たな技公になる事ではありません。魔素流体(マナエキス)は二度と使わせません、安心して下さい」

「セオドア特使……」


 ラフィニアがほっとしたような表情になる。


「武公殿。ご助力は感謝致しますが、私が新たな技公となる事はありません。ご期待に添えないかも知れませんが……どうかご容赦を」

「ん……? まあお前がそうしたいなら好きにしな、技公の息子――いや、セオドアよ」


 武公ジルドグリーヴァはニカッと快活な笑みを浮かべる。


「ありがとうございます、武公殿……!」

「しかしジル様……水を差すようで申し訳ありませんが、色々見聞きするに大公派の皆様は教主連側に比べて不利な情勢なのでは?」


 派閥の本拠の一つであるイルミナスの復元を放棄するような決定を簡単に下して大丈夫なのだろうか?

 ただ地上側の立場に立てば、そのほうが穏当ではある。


「ん? まあそうかも知れんが、なるようにならあな。俺は強い奴と戦って、今より更に強くなれればそれでいいからよ!」


 ぐっと拳を握りしめて、再びニカッと豪快な笑み。

 その考えには非常に共感と好感を覚えるのだが――


「……であれば早くわたしと戦って欲しいです」


 また少し、戦えなかった無念さが襲ってくる。


「はは……すまんすまん。それはマジで何とかするからよ」


 後ろ頭を掻くその姿は、借りてきた猫のように大人しかった。

ここまで読んで下さりありがとうございます!


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