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【連載版】ピンクブロンドの男爵令嬢は皆に感謝されている  作者: ひよこ1号


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12/17

断種と町暮らし

悩みに悩んだ末、全員が断種の道を選んだ。

ユイカは考え直すよう皆を説得にかかったものの、万が一ユイカに誘われて応じてしまえば、元も子もない。

ルボルは既に廃人のようになっていた。


案内された家は、城壁の近くだが、町の外れだ。

男爵家にしては大きな庭に古い井戸があり、外へ汲みに行く手間は無い。

家はこぢんまりとしていて、部屋数は人数分あるけれど、部屋の大きさ自体は狭いのだ。

使用人の様な、囚人に宛てがわれるような部屋に、簡素な寝台ベッドテーブルと机に椅子。

本棚はあるが、中身は入っていない。

部屋を見て回ったユイカはため息を吐いた。

流石にお金になりそうな物は何一つ置いていなかったからだ。

餞別だとでも言うように、台所に食糧が少しだけ無造作に置かれていただけ。

屋敷から持ってきた衣装ドレスは早速売り払わなければならない。

しかも半分は男爵である父親に取り上げられてしまった。

今まで世話になった分だと思え、と。


ユイカはため息を吐いたけれど、気持ちを持ち直した。

これから皆で生活すると思えば、きっと楽しいよね、と。



一日目、ユイカは遅い朝を迎えた。

夫婦とはいえ、生活が整ってから部屋を共にしようという事になり、ユイカはユイカの部屋で目覚めた。

男爵家に引き取られる前は平民だったから、世話をされなくても特に問題はない。

けれど、その他の住人が同じではない、などとユイカの頭からは綺麗に抜けていた。

騎士として鍛えていたクロウは朝早くから鍛錬していたのか、居間に一人で座っている。


「おはよう、クロウ。寝坊しちゃった」


「ああ、ユイカ。おはよう。学校も無いんだし、早起きしなくてもいいさ」


確かに、そう考えれば心も軽い、とユイカは笑顔を向ける。

クロウもその笑顔に嬉しそうに笑った。


「でも腹減ったなー、朝食まだ?」


………は?


ユイカは笑顔のまま固まる。

この家に使用人はいない。

作るとしたらユイカになるのだろうけど、その言い草は。

朝食を作れと言うのは分かるけど、材料費だってかかるし、手間もかかるし、そんな事を一切考えていない顔をしているクロウに苛立ちが募った。


「今から作るけど、ちゃんとご飯の材料費とか入れてね?」


「えっ?俺、金なんてないんだが」


「働く場所探してこないと、慰謝料払えないよ」


身体を鍛えるのは結構だが、鍛えたところでお金になる訳ではない。

不満そうな顔をするクロウを見ていても仕方ないので、ユイカは朝食づくりに取り掛かることにした。

幸い昨日置かれていた食材がある。

簡単なスープとサラダにパン。

井戸から汲み上げた水で作り上げる。

久しぶりの家事に苦労しながら、やっと作ったけれど、長椅子ソファーに寝転がって食事が出来るのを待っているクロウしかいない。


「クロウ、オトマルを起こしてきてくれる?私はルビーを起こしてくるから」


「はぁ、分かったよ」


また不満そうな態度で、クロウはオトマルの所へ渋々と向かう。

不安に思いつつも、ユイカはルボルの部屋の扉を叩いた。

けれど、中からは返事が無い。

そおっと扉を開ければ、ルボルは寝ていた。


「ルビーったらお寝坊さんね」


「いや、起きていたよ。誰も起こしに来ないから待っていたんだ」


「え?」


言葉の意味が理解出来ずにユイカは鎧戸を開け乍ら聞き返した。


「洗面用具がないと、顔を洗えない」

「衣装係は何処だ?」


などと正気を疑う言葉も飛び出して、ユイカは絶句する。

それと共に、リューリエの言った言葉が甦る。

『使用人の用意はございませんので、殿下のお世話はアロッホ嬢に一任されますわ』

あの時は聞き流していたが、そういう事なのだ。

貴族、王族として暮らしてきた彼らには、自分でやるという概念が無い。

何でも用意されて当たり前だと思っているのだ。

ユイカは何度も、貴族としての振る舞いを注意されても聞いてこなかった。

だったら、彼らは平民としての生き方を、きちんと学べるのか……。


「ルビー、洗面用具はありません。自分で井戸から水を汲んで、木桶に移して水で顔を洗ってください。お湯が良いのなら、鍋でお湯を沸かしてください」


「そうなのか?……じゃあ、水でいい。服は?」


「ここには使用人はいませんし、持ってきた荷物の分しか服は無いです。新しく買えるとしたら古着屋で、なるべく新しいものを買うしかないです」


今更ながらに、ルボルは自分の置かれた立場に顔色が悪くなった。

とぼとぼと、井戸に向かって行き、水を汲んで。

零しながらも木桶に入れて、冷たい水で顔を洗う。

本当なら顔を拭く手拭タオルを使うのだが、手元には無いから水の滴るまま上着を濡らし、袖で拭いながら家へと戻ってきた。

オトマルもぼうっとした様子で居間に座っている。

もう一人の平民、オットーは昨日のうちに実家に戻っていてまだ帰っていない。


「…………これだけか?」


食事を見たクロウの第一声がそれだった。

だが、オトマルもルボルも似たような顔で、ユイカを見る。


「材料がありませんでしたから。不満だったら、仕事をしてお給料で買ってきてくださいね。ルビーが貰えるお金じゃ他の皆まで養えないですよ」


前だったら、もっと、可愛く気分良くさせる言葉も選べたけど、ユイカにだって余裕は無い。

困ったような顔をするオトマルに、不満そうに苛立つクロウ、やる気のないルボルを見てユイカはため息を吐く。

せめてオットーがお金を稼いできてくれれば助かるんだけど、と思いながら。


最底辺逆ハーのはじまりです。

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― 新着の感想 ―
冒険者ギルドは無いの?
盛り上がってまいりましたーwww
ユイカは何日で逃げるかな? 王命による結婚だから、逃げたら国家反逆罪になるのかぁ
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