王太子、食べる
レイは先程まで落ち込んでいた母が笑う姿を見て少し安心したのか、お腹がぐぅと鳴った。
キャサリンはすかさずマリーを呼び、久しぶりの食事だから軽いものを用意して頂戴と伝えた。
かしこまりましたと返事をして即座に動くマリー。マリーがドアを閉めるとキャサリンはレイに向き合った。
「レイ、つらいかもしれないけど、セレーネが倒れた時、何があったのか思い出してほしいの。手掛かりが欲しいの。どんどん日が経つにつれて、僅かな望みが断たれそうで怖いのよ」
母のやつれ具合は姉と僕が目覚めない二重の苦しみからくるものだったのだなと気づき、母の手を握る。
「僕だけじゃなく姉さんも目覚める。大丈夫。必ず」
レイはまた少し強くキャサリンの手を握った。
レイの励ましに眉尻が下がり涙が出そうになった。視線を手に変えて涙を堪えてるとキャサリンは元々大きな目を更に大きく開けた。
「ねぇ、あなたセレーネが倒れる直前、わたしとあなたのように手を握っていなかった?」
レイも手を見つめてあの時を思い出す。母の手にセレーネの手を重ね、確かに僕は姉の手を握っていた。
キャサリンから手を離し、「あ」と声を発するレイ。セレーネから手を離した瞬間に手から火花が出たのを思い出した。
「僕の手がとても熱くなったよ」
「うーーーーーん。それだけじゃいまいち分からないわ。さっきのあ、は何?手が熱いことに対して?」
「いや、手から火花が出た」
それを先に言わんかい!と怒るキャサリンだが人間から火花なんか出るの?とレイに問う。まぁ静電気がそうだよね、涙で濡れた手って静電気出るの?などと二人で話し合った。
「レイ様お待たせしました。」
お盆にパンがゆを乗せてにっこりと微笑むマリー。急な掛け声に吃驚する二人。レイは、あれ?今、物音しなかったよね?話に夢中になりすぎた?と考える。
「では」と早々に去るマリー。マリーは扉を閉める。
「レイ様の目覚め、そして能力開花。これは報告しなくては・・・」
静かに微笑むマリー。急いで長い廊下の先へと消えていった。
マリーが持ってきたパンがゆは器に並々と盛られていた。
「ねぇ、軽食だけれど量多すぎない?マリーはレイが1ヶ月寝ていたのを忘れたのかしら・・・」
声を掛けるキャサリンはレイを見て驚いた。並々と盛られていたはずのパンがゆは既に平らげられていた。どこにあったのかまた並々入っているパンがゆの2皿目を食べているレイ。2皿目もそろそろ平らげそうだった。
「あなた急にそんなに食べて大丈夫なの?」
「うん。なんだかいくらでも食べられそう。」
「医者を呼ぶわ。そもそもあなたが起きたら呼ぶつもりだった。お父様には報告しているわ。」
レイを見やるといつの間にかベッド横に置かれたワゴンにある3皿目に手を伸ばそうとしている。一体何皿あるのよと覗いてみると残り4皿ある。食べたものも含めると合計6皿。なぜ?と不思議に思うキャサリンだが、6皿でちょうどいいと言うレイや医者も本来はよくありませんが触診をしたところ消化が以上に早く驚きながら今の殿下なら特に問題ないと伝えられた。
あとで料理長に聞きに行ったところマリーから指示があったという。6皿はマリーの見立てだ。私は指示を出してはいない。侍女として普段から申し分ない動きをしているが感が良すぎる節がある。キャサリンは少し警戒しなければと眉間に皺をよせた。
「姉さまのところに行ってもいい?」
お腹を満たし満足げに話すレイに、もちろん!とキャサリンが頷いた。
ベッドから起き上がるレイに手を添えるキャサリン。久しぶりに歩いたとは思えないくらい颯爽と歩いているレイにこれが若さかしらと考えている内、ドアが勢いよく開いた。
「我が息子は息災か⁈」と大きな声を出すヘンリー。
レイはドアにぶつかり、またもや失神した。
すまん、厄災を持ってきてしまった⁉とまたもやヘンリーは大声で叫んでいた。
キャサリンはパンがゆが乗っていたお盆でヘンリーを殴った。




