婚活疲れに舞い込んだのは癒し系の彼
「いい?ちゃんと行きなさいよ」
「お姉ちゃん頑張ってね!」
三十を過ぎても彼氏を連れて来ない私に業を煮やした母と妹が、私をお見合い相談所へ勝手に登録してしまった。
今週末否応なしに出向くことに。
「では、撮影させていただきまーす!」
指定の背景をバックにミニ向日葵の造花を持たされてパシャリ。登録用の写真撮影のようだ。
(えっ?何これ?)
お見合いは二、三度経験はしたが、結婚はまだいいと思っていた私。
婚活パーティーにも参加したことはない。 あまり結婚に興味が無いからだ。
登録後は、毎週のように会って見たい人を登録者カタログから選んでセッティングされるわけだ。
当然私もそのカタログに掲載されることになった。
(うう、私、親と妹に売られた······!)
そんな毎回会いたい人はその中にはおらず、仕方なく渋々選んで(失礼だけど)会うことに。
会って感じが良ければ、再度会う約束をし、四、五回会った後に婚約の流れになっていく。
ま、待って!私、そんな短期間で結婚相手を決められないわ。
どちらかと言えば人見知り、人に懐くのに時間がかかる私は、お見合い向きではないのよ。
お見合いに向いているのは、自己PRが上手いか、一目惚れされるほどの美形や可愛い人よね。
一度で気に入られるって、なかなか無いのでは?
ここ数ヵ月、毎週のように見合いで、疲れてしまった。
仕事も忙しいのに土日が潰れてしまうのは痛い。
もう、お見合いなんて嫌だ。もう無理。
ゲンナリした私は途中で退会してしまった。
私はまだ結婚なんてしたくない。
「何やってるのよ!結婚できなくていいの
?」
「いいよ、できなくても!」
私の意志を無視して登録させた横暴な母と妹に私は傷ついた。
憤慨した私は週末は引きこもった。
(もう、お願いだから放っておいて!)
それから一年後、職場の同僚の紹介で、会うだけでいいからと社内の男性と来週映画を観にゆく約束をさせられた。
「本当に一回会うだけだよ」
その男性は二つ年下だった。
待ち合わせの駅に行くと、改札口から名前を呼ばれた。
「待ちました?」
人懐っこい笑顔で、黄色とオレンジの花束を手渡して来たので面食らった。
これから映画に行くのに花束を渡すって······。しかも初対面なのに。
面白い人······、少し変わった人なのかな。そう思った。
あまりトークが得意ではない私を笑わせるために駄洒落を言うような、人を緊張させない、人当たりの良い人のようだ。
駄洒落自体はあまり面白くはなかったが、その配慮が心地良かった。
面白く無いのに、思わずフフッと笑ってしまった。
映画を観た後に食事をしたが、食後のコーヒーを飲んでいる時に不思議な感覚に襲われた。
ん?この人と以前にも会ったことがあるような······。
なぜか懐かしい感じがした。
初めて会った人なのに、 なんだろうこの感覚は。
個性的というほどクセは強くなくて、付き合いやすそうな人だと感じた。
でも、付き合ったり結婚は無いかな。
だから断ろうと思っていた。
「今日はどうもありがとう。楽しかったです」
「じゃあ、また会ってくれますか?」
「······え?」
一瞬戸惑った。
「······はい」
そんな返事が自分の口から自然に出た。
「本当に?じゃあ約束して下さい!」
彼は指切りをするために手を差し出した。
仕方なく指切りに応じた。
指切りなんて小学生以来だ。
なんだか嵌められたような、乗せられたような······、でも、まあいいか。
彼の嬉しげな笑顔に癒された私は、そのまま交際を重ね、なんと結婚までしてしまった。
まさか自分が年下と結婚するとは夢にも思ってみなかった。
元からそれほど美形好きではなかったけれど、意外と癒し系が好みだったのだと気がついた。
「何よ、若い燕じゃないの!」
まわりに謎の嫌味を言われたけれど、この結婚に後悔はない。
後悔はないけど、初めて会った日、何の映画を観たのかさっぱり思い出せない。
夫に確認しても、ええ?そんなの観たかなとやっぱり腑に落ちない、
きっと映画よりも指切りとあの黄色とオレンジの花束が強烈過ぎたからだろう。
(了)
年下の夫を持ったら、「若い燕」って愛人じゃないのに、言われたことが実際あります。
他の女性にも年下なんかと結婚してと批判気味に驚かれました。
その二人は、一人は一回り年上と結婚後離婚、もう一人はまだ結婚していません。
自分が良ければ年上だろうと年下だろうと気にしなければ良いのですよ。
略奪婚とか不倫じゃなければ良いのでは?
時には目先を変えて、年下と付き合ってみるとか、年下や同年代ばかりなら今度は歳上と付き合ったりしててみるのはありだと思います。




