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そこに天女はおらんがな

とっくにアラサーを超えて、アラフォー4人と飲み会になった。


みな同じ短大を出ていて、私以外は独身。


「ねえ、なんかいいことない?」

「うーん······」


乾杯してから一時間ほどは、楽しいトークが続くのだが、お開きが近づくにつれてトーンダウンして、どんよりとした空気が流れるようになるのが定番。


最後まで気持ち良く飲めるといいのに。


そんな虚しい集まりに食傷気味な私。


「ねえ、どこのエステに行っているの?」

「リンパマッサージだよ」

「顔、細くなったよね」

「本当?」


みんな同意する。


「あなただって肌綺麗だよね、天女様みたい」


(て、天女?)


私はさぶいぼが立ちそうになるのを我慢した。

どこからそのワードが出て来たのかわからなかったが、顔痩せたねと言った彼女と、天女みたいと言った人同士で謎の褒め合いの応酬が続く。


私ともう一人はそっちのけだ。


それで私がそっちのけになっている一人に「渡瀬さんも肌綺麗だよね、トラブル知らず?」なんて話をふったら


褒め合いの応酬をしていた二人が目をギラギラさせながら、同時にこっちを睨んだ。


「でも私、色黒なんだよね」

「その方が写真映りはいいよ」


なんて会話をしていたら、二人は突然不機嫌そうになって一瞬黙り込んだ。

そして何事もなかったかのようにまたお互いの褒め合い合戦を再開した。


渡瀬さんのことを「そうだね」と同意するのかと思ったら、完全スルーで二人の世界に入っている。


なんとなく狐と狸の化かし合いみたいだと思った。


誰しも、人にけなさるよりは褒められる方がそりゃあ気分がいいものかもしれないけれど、天女とか言われているその彼女はとてもあざとい面がある人だ。


自分を褒めてもらいたい時は、まず相手を褒める。そうすれば相手が自分を褒めてくれるのがわかっているからだ。


そして自分を卑下すれば、相手がそんなことは無いよと言ってくれる、否定して持ち上げてくれるのをわかった上で、私ってダメなの的な発言をするという、その手をよく使う。


彼女はいつも損得勘定で動くのだ。


そんな彼女の打算的な行動は学生時代から飽きるほど見てきた。

心にも無いことを平気で言うし、そこに罪悪感も皆無だ。


この集まりも、私にみんなが会いたいって言っているからという理由をでっち上げて、別に参加したくないのに参加させられていたのだ。


他の二人にもそのようにそれぞれに言っているのだろう。


彼女はなかなか策士だ。


自分が飲みたかっただけ、自分が集まりたかっただけなのを、他人を巻き込んで目的を遂げようとするのだ。


在学中それ程親しくなかった四人が集まるのは、天女な彼女のそんな裏工作によるものだ。

他人を自分の都合の良い駒のように扱う、自分の思い通りになるように他人を操るのは、学生時代から全く変わっていない。


そんな彼女を「天女みたい」などとおだてる方もおだてる方だけどね。


集まりの終盤がどんよりする原因の一つは、天女な彼女にエネルギーをガッツリ吸われているからだろうなと思っている。


それに加えて、自分がエネルギー切れすると「今度みんなで飲もうよ」と誘って来る人もそうだ。


人数が増えた方がそれだけ吸えるエネルギーが増えるからだ。


彼女らは自覚は無いのかもしれないけれど、他人のエネルギーを奪う。

彼女らとの飲み会や食事会の後はぐったりと疲れてしまうか、猛烈にお腹が空いて、暴食してしまう。

これは私も生気を吸われてしまっているからだ。


私とそっちのけになったもう一人は、リストカットの経験者だ。


私が結婚する前、二人とは通勤電車が同じで挨拶だけは交わしていた。

吸い取るタイプの彼女が、朝から生気の抜けたような彼女に一方的なマシンガントークを浴びせていたのを覚えている。


見かける度に、生気が失せてゆくようで、彼女大丈夫かなと気になっていた。


結婚後しばらくしてから、その彼女がリストカットをして病院に搬送されたと知った。


何回か飲み会や食事会をした際も、マシンガントークが炸裂で、彼女はうんうんと頷いているだけとか、常に押され気味。


そしてさっきみたいに、彼女に話題や注目が集まると無視するのだ。


故意なのか無自覚なのかはわからないけれど。


でも彼女は、そんな彼女を良き友人だと思っているようだ。


リストカットで入院した際も、真っ先に駆けつけてくれたのが彼女だったからという。


元々友人が少ない人、友人作りが不得手な人なのかもしれないけれど


その人物は本当に良い人なのか?


それを見極めなくてはならないこともある。


アラフォーなのにまだそこがわからない、気づけない、そんな人もいるのだ。


他者から見れば、あまり良い相手には見えないのに、冷静に客観視できないと、良くない相手を友人に持ち続けてしまうことになってしまう。


ダメ男、クズ男に引っかかるのと同じでね。


彼は優しい人なの、それでも私には必要なのとか言い訳して別れないものなのよね。


自分が弱っている時、困窮した時に近寄って来るのは、良い人ばかりとは限らない。


一見人当たりの良い、親切そうなふりで、生気を吸い取る人、生気を奪う人は、人の不運や不幸を察知して向こうから近寄って来るものだ。


詐欺師とかもそうなのだけれどね。


悪い人に騙される、良くない人に利用される


それも人生の学び、経験ではあるとは思うけれど、気がつけた方が断然良いわけでね。


天女じゃ無いのに天女と思う、天女と勘違いするなんてね。


彼女は押しの強いその彼女と一緒にいると異様に眠くなると言っていたが、それこそバンパイアに吸われている証拠だ。


私は吸われいる彼女にそれとなく忠告したが、聞く耳はもたなかった。


そして偽天女が天女のふりをして彼女に取り入ろうと擦りよった。

私という悪者を仕立てて、付け入る口実をゲットしたのだ。


私はこれ幸いと思って彼女達から引いた。疎遠になって、もう彼女達とは会ってはいない。


それで、彼女は吸い取る系の人にダブルでホールドされる羽目になったのだ。


生気を吸い取る人は、恐ろしく目敏く、吸い取れる対象に擦り寄って行くものだ。


きっと本人達は、自分は親切で優しい善人だと思っていたりするのかもしれない。


だから余計に始末に悪いのだ。


優しくなだめる、気遣うのは、取り入るためだと気がつかないと、吸われ放題になってゆく。


会うと物凄く眠くなる、会うと疲れるのに離れられない。

エナジーバンパイアに雁字搦めにされてしまうのは、そんな人だ。


天女のふりしたエナジーバンパイアに吸われちゃうのは、


そこにいるのは天女じゃあらしまへんで


そこに天女はおらんがな


が、いつまでたってもわからない人なのよね。


バンパイアの餌食にならないように、その人の裏の顔にも気がつかないとならないのだ。


人は誰でも一面だけではなくて、多面を持つ生き物だから。


(了)

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