野蛮な星の、王子様
とある太陽系には、平気で人を売り買いし、奴隷のような使役と搾取、そして嗜虐するそんな野蛮な星がまだあるそうだ。
「わたしの星ではそんなことは絶対にないのに」
幼い王子は心を痛めた。
「何でそんなことをするのかな?」
「あの星は、人間自体がそもそも奴隷用に創られたものだからでしょう」
「自分達でもうやめようとは思わないの?」
「遺伝子にそう組込まれているので、なかなかそれは難しいことかと」
青い薔薇の従者が答えた。
「それを抜き取ることはできないかな?」
「やって見ますか?」
「うん!」
王子は、従者と共にその野蛮な星に降り立った。
他惑星への干渉にうるさい銀河連邦の許可を得ている。連邦もいい加減、この野蛮な星を進化させたくてウズウズしていたからだ。
「き、気持ち悪い······」
「殿下、慣れて下さい」
王子は、雑多な欲望渦巻く星の野蛮なエネルギーに耐えられずにその場に倒れた。その後体調を崩し寝込むことに。
「イエシュア君を呼べば良かったかな?」
「あの方は既に来ておられますよ」
「本当?」
「ええ、二度目の浄化を控えているそうです」
「そうなの? じゃあ、お手並み拝見だね」
王子は療養に専念し、イエシュアの浄化を見学することにした。
イエシュアの一度目の浄化から二千年以上が経った。けれど再び浄化が必要なくらいにこの野蛮な星は罪で溢れ、堕落しきっていた。
眩い閃光に星は覆われ、二度目の浄化が行われた。
「わあ、凄い!さすがイエシュア君だね」
浄化された野蛮な星のエネルギーはかなり軽くなり、王子の体調も回復していった。
「よし、今度はわたしの出番だ」
「殿下、滞在許可期限が迫っておりますから、手早くお願いいたします」
「うん、わかった」
王子はこの星のメイルとフィーメイルを一対用意した。
「フィーメイルって、メイルからできているの?」
「メイルの身体の一部から創り出したと言われております」
「そうなんだ」
「原初の人間はアダマとファバと呼ばれているそうです」
「ふうん」
王子の星では成人するまでは未分化であるため性別はない。成人する時にどちらかの性別を自分で選ぶことになっているからだ。
ただし王子は立場上、生まれた時から男の性別を選ぶことが決定している。
王子はそれをちょっとだけ残念に思っていた。
未成年の王子は、この星の人間から見れば、男装した美少女のように見えるだろう。
両性具有の従者である青い薔薇は、本人が希望しない限りは性別を選ぶことは免除されている。
「じゃあ、はじめるよ」
王子は新アダマと新ファバの遺伝子から奴隷脳になる部位と他人を隷属化し搾取や嗜虐する部位を除去した。
「これから誕生する人間は、奴隷化することはなく、どんな人間も他者を虐げなくなる筈だよ」
「殿下、地球の奴隷解放おめでとうございます」
「エヘヘ、じゃあもう帰ろっか」
王子は、これで野蛮な星も少しずつ変わって行くだろうと思っていた。
数年後再び様子を見に来た王子は愕然とした。
新アダマと新ファバが旧人類に殺害されてしまっていたからだ。
新アダマと新ファバの子供はまだ一人も生まれていなかった。
「これじゃあ、何も変わっていないじゃないか!なんて野蛮な星なのだ!」
「殿下、なりません!」
王子は激しい悲しみと怒りで、旧人類の約九割を一瞬で殲滅した。
王子は銀河連邦から処罰を受け、廃嫡された母星から追放、自分が罪を犯した野蛮な星に咎人として閉じ込められた。
王子は女の性別を選び、青い薔薇の従者は男になることを選択し王子の番となった。
王子はジェラルドからジェラルダインに名を改めた。
「マテウス、そなたには申し訳ないことをした」
「ジェラ様をゆりかごから墓場までお守りするのが私の役目です。これはあなたを止められなかった私の咎なのですから」
十数年後、まだまだ野蛮な星のエネルギーに長年蝕まれてボロボロになった王子は、三人の子を残して肉体を捨て去った。
「わたしとそなたの子らが、この野蛮な星を浄めることができるよう、未来永劫、この星の寿命が尽きるまで見守ろう」
青薔薇は長命種族だったが、この星では生息するには負荷が大きく短命種となっていった。
青薔薇の一族は見た目は人間型と変わりがないが、青い薔薇と人間型の交配によって人工的に創られたものだった。
その中でも身体の一部に青い薔薇の紋様を持つ者は両性具有の者が大半で、繁殖力も強かった。
ジェラの子ども達はそれぞれに散らばり、短命でも多くの子孫を増やしていった。
青薔薇は地に満ちてその星を覆い尽くした。
まだまだ野蛮な星は、宇宙から見る者達から、青き薔薇の星と呼ばれているのだった。
(了)




