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最後の言葉
慌ただしい中で日が過ぎていく。母の変化もなく、何か得る物もない。
ただ母のそばで話していられることが、不幸中の幸いのような気がしていた。
登山の約束の日。
朝10時に待ち合わせなのだが、出かける時になって、何となく依入は母の顔を見に行きたくなってきた。
遅れちゃうかな……
そう思いながらも依入は本間病院の方に向かう。
母の病室に直行した。
「こんにちは」
「あぁ、依里さん、いらっしゃい……あら?どこかに出かけるの?」
「えぇ、友達と山登りに」
「あらそう、いいわね」
「ええ……あの……行ってくるね……お母さん……」
「え?」
「なんでもない。じゃあ行ってきます」
「あら、もう?」
「友達が待っているから」
「残念ね。じゃあ気をつけて、行ってらっしゃい」
送りだす声が母の声であることを感じつつ、依入は寂しさが滲んで仕方がなかった。




