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六十七話

「シェリー! そのまま待機、敵が『落』にはまって混乱したところを叩け! シオンは右に三歩移動、そのまま真直ぐエターナとハラル兵の間を突っ切って、同士討ちを狙ってくれ! イリーナ! 左に一二歩動いて、リムルの先陣を『爆』に誘い込め!」


「「「了解!」」」


 俺の指示に、三人の返事が重なる。


「エアー弾部隊は彼女らの援護!」


「うわぁぁぁぁぁぁ」


 指示の間にも戦闘は進んでいて、シェリーに向かおうとした三軍の兵士たちが、リサが仕掛けた落とし穴に落ちていた。

 さらに泥水でも入っていたのか、水しぶきが上がる。

 いたせり尽くせりの落とし穴だが、その水がなんだか毒々しい色をしてるのは、気のせいか?


「ああ。あれは、金属に触れると、レンガのように固まる、凝固材が入っているんです」


 俺の心を読むように、リサが説明してくれる。

 身動きが取れず、落とし穴でピクピク蠢く兵士たち。

 俺より、手加減ねーな!

 だが、攻撃を緩める理由はない。


「シェリー。そのまま右側の橋に向かって、つり橋を壊せ! 敵の増援を止めろ!」

「分かった!」


 彼女がこちらをちらりと向いて、ウインクひとつ右に方向転換すると、


「うりゃぁぁぁぁぁ!」


 気合一閃。

 地面を抉りながら兵士を吹き飛ばし。

 さらに、


「だりゃぁぁぁぁ!」


 もう一閃して、兵士をなぎ倒し、

 さらにさらに、


「は! とうっ! やあ!」


 腰に差した護符付の短剣を投げ、後ろから迫って来た兵士を爆炎に包む。


「やっぱ、俺より使い方上手いな」

 俺が感嘆の声をあげると、


 ドゴォォォォォン!


 左側から地面を揺るがす爆音と盛大な火柱が立つ。

 見れば『爆』の罠にはまった兵士が、派手に吹き飛び何人か底の見えない亀裂へと落下していた。


「……派手に見えますが、鎧を身に着けていれば、死傷することは無いですよ。それに、亀裂の下にはネットが張ってありますから、死にはしないです……多分」


 澄ました顔で淡々と呟くリサ。

 恐ろしいほどの手際、そして容赦が無い。

 つくづくリサが敵でなくて、良かったと思う。


「魔法部隊、エアー弾部隊、彼女らの攻撃で、亀裂の縁に追い詰められてる兵士を突き落とせ!」


「…………」


 無言で、黙々と行動に移す兵士たち。

 くそ!

 命令は聞いてくれるようになったけど、無視は健在かよ!


「ただ、貴賓席と橋には、発見される可能性がありましたので、ネットは無いです」


 半分涙目になっているのを隠していると、リサが説明を補足する。

 それなら貴賓席に攻撃を集中して、みんな亀裂に突き落としてしまえば、楽だろうが隣国の王子とこの国の大臣、それを殺した上に国を略奪したのでは民が納得しないだろう。


「それに、せっかく黒幕がシャシャリ出てきてくれたんだ」


 全ての罪を白状してから、正式に刑に処されるのが一番いいだろう。

 今気が付いたが、刑に処すを略すと、処刑になるんだな……いや、他意は無い……はずだ。


 それにしても気になるのは、貴賓席のライアンだ。

 これだけの騒ぎにも関わらず、奴はこれといった動きを見せない。

 奴の近衛兵も何か指示を受ることなく奴をチラチラ見ているが、いまだに動く気配を見せない。


「初めての敗北で、魂抜けてるのなら楽なんだけど」

 もう油断はできないから、気にはしておこう。


 実際、戦局は悪くなかった。


 シオンに混乱させられたリムル、ハラルの兵は、それでも王子たちのわがままな命令を守るため、シェリーを追いかけエターナの兵を巻き込んで混乱に拍車をかけている。


 おかげで、俺たちの塹壕を狙う兵は極端に少ない。

 というか、すでに半分以上の兵士が、三人の戦姫によって亀裂に落ちているか、戦闘不能に追い込まれている。

 後は、シェリーが上手く橋を落として時間を稼ぎ、貴賓席の奴等を捕縛できれば、勝機が見えて来るのだが……。


「なんなのこいつら!」


 視線を移すと同時に、シェリーの声が飛び込んできた。

 決して調子が悪いわけじゃない彼女が、なぜか怯えた顔で俺に助けを求めていた。


 俺は一見で理解した。


 そう。

 橋を守備する兵士たちが、彼女の大嫌いな生物を虫かごに入れて持っていたからだ。


「い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


「私だって、あなたの弱点ぐらい知ってますよ!」

 いままで沈黙を守っていた貴賓席のライアンが、静かにほくそ笑む。


「まったく、にわかで、彼女の事を知ったかぶりやがって!」

 奴のしたり顔がムカついたが、今は彼女の方が大事だ。


「シェリー! いったん退却だ! こっちに戻ってこい!」

 声を限りに叫ぶが、


「いやぁぁぁぁぁぁ!」


 我を失っている彼女には届かず、真直ぐ亀裂に向かっていた。


「全ての攻撃を橋に集中しろ! シオン、イリーナ! 援護頼む!」

 叫びながら俺は、シェリーに向かって走っていた。


 間に合うかどうかなんて関係ない。


 でも、もう彼女を放したくなかった。


「くそ! もっと早く動け! 俺の足!」


 まったく運動音痴の体が、これほど恨めしく思った事は無い。


「シェリー!」


 剣戟を放ちならが、亀裂に落ちようとしている彼女に向かって足を動かすが、とても間に合いそうにない。


「シェリー姫を亀裂に向かわせるな!」


 ライアンも今頃自分の失策に気付いたようだが、彼女の前に立つ兵士は木端の如く吹き飛ばされまったく役に立たない。


「……こうなりゃヤケだ! なる様になれ!!」

 俺は進路を右にずらして、地図にあった『爆』の場所を踏み抜く。


 ボン!


 途端に地中から火柱が上がり、爆風が俺の体を彼女の元に届ける。


「シェリー!」


 しかし勢いが足りず、彼女の手前で地面に落下。

 それでも転がりながらも精一杯手を伸ばす。

 だが、精一杯手を伸ばしても…………。


 彼女に手は届かず、

 亀裂の縁、彼女の足元が音を立てて崩れ落ちた。


「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!」


 俺の耳に、聞きたくない彼女の悲鳴が響いた。


祝! 総合評価100になりました!

第一目標達成です!

ブックマーク、評価ありがとうございます!

でも、これで満足はしません!

次の目標は、総合評価120だ!(笑)

最後まで頑張ります!

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