↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/75

六十二話

「は~。でも良かった、お前に新しい婚約者がいなくて」

「はぁ?」

 俺の声が聞こえなかったのか? 戸惑いを見せるシェリー。

 だから、


「この二年の間に新しい婚約者が出来なくて良かった! って言ったの!」


「大きい声で言い直せって言った訳じゃないわよバカ! 話の流れが分からないって言ってんの! バカ!」


 大きな声で言い返された!


 確かに、考えすぎた挙句に本心だけが先走りすぎて、色々な部分が抜けてた気がする。

 俺は咳払いを一つして、彼女に俺の野望を話し始める。


「俺が帝国の兵士になるとき、女帝ティファと約束したんだ」


「約束?」

 彼女は落ち着きを取り戻したその瞳に、今度は思い切り疑問符を浮かべた。


「もし俺が女帝の指示した領土三つ占領したら、小さくても良いから帝国領の土地を分けて貰い、属国だけど一つの国の王として認めることを……」

 話が見えないのだろう、いぶかしげな瞳を向ける彼女。


「それが達成できれば……エターナの姫と属国だけど同等の地位になるから……君が……俺の事をまだ好きでいてくれたら……迎えに来ようと思ってた……」

 思い切り、未練ダラダラの野望だった。


 きっと一国の王になれば国賓としてエターナに入れるし、訳も分からず締め出されることも、むやみやたらに暗殺される可能性もないと思った。


 そうすれば、彼女が怒った理由もちゃんと聞けると思ってた。

 俺の言葉を聞いて、彼女がうつむく……。


 当たり前だ。


 己の野望のために自国を滅ぼそうとし、そればかりか自分を妻に娶ろうなどど言う戯れ言、かなり呆れられ……。


「そっか! そうよね。国がなくなっちゃえば私、王女じゃなくなるし、こんな国の……国民はともかく、大臣たちは大臣でなくなるし、従う法もないわよね!」


「いや、シェリー? いったい何をしようとしてる?」

極端な事を言い放ち、ニヤリと笑う彼女の笑顔に、そこはかとない不安を覚える。


「お、おい! シェリー? シェリーちゃん? シェリー様!」

 突然元気になった彼女に戸惑い、声を掛けた。

 が、


「国がなくなっても。テイルのことだから、民は安心よね。それに私は、あんたの奥さんになるのだから……よし、決めた! 私はこの国を潰す!」

 いろんなしがらみを吹き飛ばした!


「ちょっと待て! ここには隠れて俺の様子を見てる監視がいて、俺たちの話は筒抜けになってるの! だからそんな大声で……おい、シェリー?」


「監視って、これのこと?」


 目の前から一瞬姿を消したかと思ったら、上から下まで黒ずくめの三人の男を担いで持ってきた!


「そうだけど! いきなり倒してどうすんだよ! こいつらに色々と誤情報を流して混乱させるつもりだったのに!」

「そんなの、洗脳するに決まってるじゃない!」

「へ? 洗脳?」

 彼女の口から、悪どくも知的な言葉が出るとは意外だった。


「さあ、起きて!」

 俺が戸惑う中、彼女は三人の中から、一人を選んでカツを入れた。


 そして、そいつの目をジッと見て、

「私に付いて幸せに、末永く生きるのと、地獄の悶絶フルコースを受けて、一生恐怖に脅えて生きるの、どっちが良い?」

 にこやかに相手の胸倉をつかむシェリー。


「それは洗脳じゃなくて脅迫だ! 何一つ合ってないだろ!」

 ここが牢屋だということも忘れ、思わず大声でツッコんでしまった。


 だが監視者から意外な反応。


「いきなり殴られ、どうしようかと思いましたが、我々はもとより姫様の味方です」

「え? 私の? 宰相ではなくて?」


 これには彼女も驚いたようだ。


「はい。味方です。嘘じゃないです。リサ様の手の者です! だから、だから握っているその拳を下ろしてください!」


「リサの?」


「はい! 牢屋を見張って、隙があればテイル様を救出しろと、宰相の手下でしたらすでに排除しています!」


「さすがリサだな。だが、俺はこの牢屋から出るつもりは無い」


「ええ! なんで? なんでよ! しかも、なんでさすがリサなの!」

 牢屋越しから手を伸ばし、俺をガクガクと力任せに揺らすシェリー。


「あ、ちょ、ちょっとせつめ…………ああ……」


「姫様。そのままだと確実にテイル様が落ちます!」

 その一言で、何とか解放された。


「お前は、何でいつも話しより先に手が出るんだ!」


「しょ、しょうがないでしょ! 牢から出られる可能性があるのに、出ないって、いったい何考えてるのよ!」


「だから、それを説明しようとしたところで、いくなり落とされそうになったんだよ!」


 ゼイゼイと肩で息をする二人。

「(こんな言い争いも、いつからしてなかったっけ?)」

 なんて、場違いな思いになんだかおかしくなった。


「なに笑ってんのよ!」

「いや、お前も笑ってんだろ?」


 二人でひとしきり笑った後、俺は計画を彼女に全てを話した。


「うん。分かった! リサにも私から頼んでおく!」

「ああ。それに、お前の役目は重要だが、くれぐれも、くれぐれも無茶はするなよ!」

 こいつの事だから無茶はするのだろうが、言わずにはいられない。

 そんな俺の心配は、


「大丈夫! だって、私はテイルのお嫁さんになるんだから!」


 なんて彼女の、この世のものとは思えない笑顔に吹き飛ばされた。


ブックマークありがとうございます!

すごく励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。