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五十話

今年最後の更新です。

「ふん。小賢しい上に見苦しい」

 戦況を見守るランバーグは、眉を寄せつまらなそうに吐き捨てた。


「敵騎兵、また後退します!」

「追撃しろ! ただし深追いはするな!」


 淡々と命令を下すランバーグ。

 だが冷静沈着な彼でも、その表情に苛立ちを隠せないでいた。


 それは仕方ない事かもしれない。

 なぜなら魔王軍のに騎馬は、勢いよく突進してきたのは初めだけで、ケットルシーの騎兵が近付くと逃げ、追撃を止めると今度は挑発するように、テクテクと小馬鹿にしたように近付いて来る。


 そんな事を何十回繰えされただろう?


「一合も打ち合わぬとは、魔王軍は腰抜けぞろいか!」


 隣に立つ騎士団団長のガレルは、すでに苛立ちを前面にだし怒りにも似た表情で総攻撃はまだかとランバーグを睨む。


「すでに我らの勝利は確定している。つまらん小細工に惑わされるな!」


 その視線を軽く流しながら、ランバーグは自分自身に言い聞かせるよう、総攻撃のタイミングを計る。


 が、そこに誤算が生じた。


「伝令! 一〇騎の騎馬が部隊長の命令を無視し魔王軍を追撃。敵に包囲された模様です!」


 誰もがしょうがない奴らだと思ったが、

「ああ。どこのバカだ。私の命令を無視したのは?」


 冷めた一言にガレルも近衛騎士も一瞬、誰が発した声か理解できなかった。


『冷静沈着な王子』


『微笑の常勝王子』


 そんな認識のある王子が、暴言を吐いたのだ。

 しかも味方に対して!

「申し訳ありません。私の教育不足です。お怒りはごもっともですが、まずは至急救出部隊の編成を……」


「無用だ」


 先ほどの言葉は気のせいだと言い聞かせ、彼らの救出を願うガレルに、またしても意外な言葉。

 

 もう気のせいだとは思えない。


「で、殿下、それでは……」

 バカをやったとはいえ、彼らは大切な部下だ。

 間に合わなくても、救出部隊は出してやりたいのが彼の身上だった。

 だが、その思いは無残にも切り裂かれた。

 それも、敬愛する王子の言葉によって。


「彼らが囲まれてもう十分は立つ。生存の確率は少ない。そんな低確率な賭けに、大事な戦力を割くわけにはいかない」


「ぐっ…………了解しました……」


 ガレルとしては、自分ひとりだけでも助けに行きたい。

 だが王子が言う正論と騎士団長という立場が、彼の行動を押しとどめた。


 ただ、この行動がのちの戦況を大きく変えるとは、この時点で気付く者は誰もいなかった。



「武器を捨てろ! 貴殿らは殺すには惜しい」


 おぞましい魔物に囲まれ、死を覚悟したケットルシーの騎士の前に、褐色の天使が舞い降りた。


「ああ。俺はもう死んでいて、天使が来てくれたんだ!」

 

 誰かが呟く声に、誰もが頷きかけるが、


「ふふふ。さすがに音に聞こえしケットルシーの騎士だ。こんな状況でも冗談が言えるなんて……」


 褐色の天使が笑った!

 

 すでに騎士たちは昇天寸前。


 だが、夢見心地はそこまでだった。


「そんな貴殿らに、とってもお得な情報がある。勇猛果敢な貴殿らが信仰するのに、ピッタリの神がいるのだが……」


 天使が神を口にした途端、状況が変わった。

 天国への階段を上っていたのに、いきなり地獄にひきずりこまれる感覚だ。


「ぎゃあぁぁぁぁぁ! た、たすけ、たすけてぇぇぇぇぇぇ!」


「なります! どんな神でも信仰しますから! 命、いえ、魂だけは!」


「あははははっ。俺、生まれ変わったら、貝になるんだ……」


 そんな悲痛な叫びが、戦場にこだました。


今年も忙しい中、閲覧ありがとうございます!

来年は三日か四日に更新できればと思っています。

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