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四十七話

「さて、始めようか!」

 俺はマモス平原のど真ん中、倍の兵力と対陣し思わずニヤケテしまう。

 別におかしくなったのではない……と思う……多分……。

 

 きっと俺は、信頼している仲間と、全力で戦える好敵手に出会えたのだと思う。


「だからシェリー……ついでにランバーグ。お前たちを全力で叩き潰す!」

 

 っと、カッコよく決めたつもりなのだが……。


「うわ! シオン。自分に酔っている人がいますよ!」


「言うてやるなイリーナよ。ぬし様とて、たまには恰好付けたいときもあろうて。のうリュカよ!」


「はい! テイルさんは……カッコ……いいですよ! ほんとですよ!」


「うん! お前ら、あとで覚えてろ!」


 言いながらも苦笑を隠しきれない。


 うん。これだ。


 この感覚が俺に自信を持たせ、強敵と戦う気力を底上げしてくれる。


「よし。全軍! 戦闘開始!」


 俺は苦笑を噛み殺し、ちょっと浮かれた声で全軍に指令を出した。




「さて……。この戦力差で、魔王軍の天才軍師殿はどう出るのかな?」

 ケットルシー二千の騎馬を率い、自らも騎馬に乗るライアンは、たいした感情も込めずに呟く。


「魔王軍の五百騎が、真っ直ぐこちらに向かっております!」


「ああ。そう来たか……」

 ライアンは、報告を聞いて皮肉げに口の端を吊り上げた。

 彼は瞬時に、テイルの作戦を理解したのだ。


 エターナ軍とケットルシー軍の間を騎馬で突っ切り、混乱させながらこちらの背後をとるつもりなのだと。

「せっかく命が助かったのに……テイル殿は知能まで魔物と化してしまったのか?」

 自分の実力は見せた、はずだ。

 なのに好敵手かと思った彼は、前回と同じような戦法と取る。


「これは僕が甘く見られているのか? それともテイル殿がただのバカなのか? それとも……」

 顎に手を当て、思案を巡らすライアン…………。

「…………よし!」

 ライアンは、テイルの出身、身分、先日の彼の行動、その他もろもろを考慮し総合した結果。

「エターナに伝令! こちらに向かって来る騎馬は、こちらで排除すると!」

 テイルを『お勉強の出来るおバカちゃん!』と位置付ける事にした。


「あの集団は中央突破して我が軍の後方に位置しよとしている。騎兵五百騎を持ってこれを排除せよ!」

 騎士長に伝令を送ると、少し残念そうにため息をついた。

 彼にとってもはやこの戦闘は、ただの暇つぶしでしかなくなったからだ。

「まあ、愛しのシェリー姫と同じ戦場に立つことができたので、今回はそれで良しとしよう」

 敵の行動を予測し次々に伝令を出したライアンは、そう自分に言い聞かせた。




「テイル……魔王軍から五百騎の敵……」

「はい。そしてランバーグ様から、背後に回ると思われるその敵は、こちらで処理するとの伝令も入っています」

 思案顔のシェリーは視線だけで、兵を下がらせた。


「(おかしい。テイルはマンネリを嫌ってたはず)」

 シェリーは、テイルが昔言ってたことを思い出す。


『名将呼ばれた人の多くは、自分が編み出した必勝の戦術法があるんだ。だけどその戦術ってのを多用するため、研究されて弱点を見つけられて負ける。だから俺は必勝法を作らない』


 そう言っていたはずだ。

「伝令! ライアン殿下に通達。迎撃は任せるが、くれぐれも油断無きようにと!」


 なんだか嫌な予感がした。

 だが、予感だけではどうしようもない。


「まあ、ライアン殿下なら油断はないと思うが……。テイル。あなたは何を考えてるの?」

 シェリーはかつての恋人、今は敵の顔を思い浮かべた。


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