四十五話
「さて、そろそろ動き出そうか!」
敗戦から数週間。
俺は当初の作戦通り、のんびりと兵たちみんなで、酒宴を開いて騒いだり裏でこそこそいろんな事をしていた。
そう。色々とね……。
そして今朝になって、待ちに待っていた伝令が来た。
ケットルシーから援軍の騎馬隊二千が到着した知らせだ。
これでエターナとケットルシーの戦力は五千。
二千五百の我が軍のちょうど倍になった。
「まったく、待ちくたびれちまったよ!」
俺は伝令の情報を聞くなり飛び起き、全軍に召集をかけた。
さすがリュカお勧めの回復視だけあって、傷はすでに完治した。
俺は突然の進軍命令にざわめく兵たちの前に立つ。
両脇にイリーナ、シオン、後ろにはリュカが当然のように控えてくれている。
それだけで『家族って良いな!』なんて頬が緩んでしまいそうだ。
「お前ら! 良く休んだか? これからエターナ第一防衛線、マモス平原に入る。ここから先はエターナを陥落させるまでノンストップだ! 気合を入れていくぞ!」
連戦の疲れが取れた兵士たちは、気力も体力も中々に満ちていて、懸念していた厭戦気分も無いようだ。
ってか、奴等の視線は俺の両隣と後方に注がれていて、
「中将邪魔!」
「中将! しゃがんで!」
「リュカたんが見えない!」
などと言う罵声まで聞こえていた。
顔は覚えた。
奴等には後で特別に特攻野郎Bチームの称号と、どぎつい任務をくれてやろうと思う。
「エターナを落としたら、今回よりも、もっと豪華で長い休みをくれてやる!」
『…………おおぉぉ!』
? なんか反応鈍いな……。
「酒池肉林だぞ?」
『………………おおぉぉぉ!』
反応今一つ。
「ダメですよテイル様! 占領地の治安が乱れます!」
首を傾げる俺の後ろで、プンすか怒るリュカ……その彼女に視線が集まるのを見て、ふと、思いつきでそれを言葉にしてみる。
「酒池肉林じゃなくて、リュカの握手会……とか?」
『うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!』
一部の兵に反応あり! もしかして……。
「さらにさらに、イリーナ! シオンとも握手が出来ちゃう!」
『うがおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!』
かなりの手ごたえあり。ならば!
「一番手柄には、好きなあの娘とツーショット魔写真までとれちゃう!」
『うががががががぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』
もはや獣の雄たけび! 大地を揺るがすような歓声に、言った本人である俺がドン引きするレベルだ。
「ぬし様、わっちらはそんな事聞いとらんぞ?」
そりゃそうだろ、今思いついたんだから……なんて言ったらシオンの手に掛かっている刀でどうにかされそうなので、必死に言い訳を考える。
「えっと……確かに握手会は不本意かもしれないけど、手柄だったらお前らの誰かだろ? ツーショット写真は幻の特賞みたいな……」
「はい! 私! テイル様と撮りたいです!」
いきなり俺の肩上にリュカの顔が現れた。顔近!
「それいいじゃないですか! 私たちの褒美はそれで決定ですね!」
なんだかノリノリのイリーナ。
なんだか面倒臭いような、照れ臭いような……。
「……イリーナ、リュカ。わっちらは仮にも部隊長なのじゃぞ!」
おお! やはりお姉さん役のシオンがいさめて……。
「部隊長ならば、もう一つぐらい褒美があっても、いいと思わんか?」
「「さんせー!」」
くれなかった……。
そればかりか、さらに嫌な予感。
「それでは、一緒に食事なんてどうです?」
「いや、わっちは予約済みでありんす」
「ええ! シオン! いったい、いつそんな約束……」
なんだか俺の知らない所で、討論が始まってしまった……。
せっかく温まったこの場の空気を冷めさせかねない。
なので、
「とにかく! お前らが一番手柄だったら、俺が何でも言うこと聞いてやるから……」
「「「なんでも!!?」」」
俺の思いつきの言葉に、恐ろしく食いついてきた!
「お、おう!」
いいかげん先に進みたい程度の呟きに、いきなり食いついてきたのでたじろぐ。
「そうと決まれば! イリーナ隊!」
「ただし! 俺の命令を聞いてくれないと無効な!」
釘を刺され、しょんぼりするイリーナ……っと思たが、意外にも「分かってます!」との心強いお言葉。
「今回は、大将同士の戦術勝負ですものね!」
リュカのポヤポヤの笑顔に頷く二人……やっぱ、家族って良いな!
「それじゃ、出発!」
俺の号令に珍しく全員が気合の入った声を返し、エターナへの進撃が開始された。
ブックマーク、および週別ユニークユーザー様。
ランキングにも乗らないこの作品なのに、いつもありがとうございます!
これからも頑張りますので、応援お願いします!




