三十七話
すみません。
更新遅れました。
「また会ったわね! テイル!」
しばらく進軍していると、数時間前に別れたばかりのシェリーが姿を見せた……。
「…………」
「……ごほんっ。こ、今度はさっきみたいにいかないわよ! 覚悟しなさいテイル!」
さすがに体裁が悪いのか、彼女は無言で見つめる俺から目を反らし、居心地悪そうに視線を宙に漂わす。
それはいつもの彼女だ。
黒いリボンで束ねた長い銀髪は、数時間前とは変わらない。
エターナの兵もいるが、いつもの光景だといえよう。
だが、それ以外のモノが俺の視線に入っている。
そう。
なぜか彼女の横には、いかにも頭良いです! 的な優男がいた。
「おい! シェリー! 誰だよその男!」
その存在がなんだか無性に気にくわなくて、馬上から身を乗り出し大声を上げた。
「なに嫉妬? あんたなんかいつも大人びた美人と、清楚な感じのナイスバディな娘と、可愛らしくて、つい頬ずりしたくなっちゃうような女の子をはべらかしてるのに!」
この女は、俺の家族をそんな軽々しい言葉で……。
ムッとしてなんて言い換えそうかと、俺の頭に中にある一〇八つの文句集を開き、選んでいると、
「……大人の……色気むんむんの……美人じゃと……」
「グラマラスな清純派の令嬢ですか……」
「妹萌のナンバーワン……」
なぜかほんわかとした雰囲気で、都合の良いように彼女の言葉を誇大解釈している姉妹たちの声。
「いやいや、いくら家族だからってキモいぞおまえら!」
ムフフッと笑う姉妹にツッコみながらも、視線はしっかりシェリーの様子を伺っていた。
なのに視界に横入りする、こじゃれた男。
そいつはいかにも紳士って感じで、俺に向かって礼をして、
「私はライアン。ここにいるシェリー姫と、貴方を叩きのめしたのち結婚する者。いわゆる婚約者です!」
なんて言ってきた!
「はあ? 何言ってん……」
俺が説明を求める視線をシェリーに送るが。
そのライアンとやらは彼女に馴れ馴れしく近付き、何やら耳元でささやいた後。
彼女の肩を抱いた!!!!!!!
「うがるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅう! 全軍突撃! 狙いはあの優男!」
本能的に怒号を発し、反射的に剣を抜き放った。
「わ! わ! わ! テイル様! お気を確かに!」
ほやほや状態から最初に正気に戻ったリュカにしがみつかれ、馬の腹を蹴るタイミングを逃してしまった。
いや、そのおかげで少し冷静になれた。
が、
それにしてもシェリーもシェリーだ!
あんな男、昔は近寄らせもしなかったくせに!
怒りにまかせてシェリーを睨むが、彼女は彼女で俺の今の状況を見るなりそっぽを向く始末。
しかもだ!
いまだその肩には奴の手が乗ったままなのにだ!
「テイルさん! 落ち着いて下さい!」
「そうじゃ、暴走するのはわっちらの仕事、ぬし様が落ち着かんでどうするのじゃ」
左右から俺を落ち着かせようと声が飛んできた。
でもシオン。暴走を自覚してるんなら少しは自重してくれ!
だが、彼女らの言うことはもっともだ。
「落ち着け! 落ち着け俺……」
深呼吸をして、冷静に状況を確認しようと勤める。
ここは彼女とよく来た湖の近く。
とはいえ、その先の道には連れてきたことは無いはずなのに、目の前には優男に肩を抱かれる銀髪の少女。
うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
きっと血走った目で彼女を睨んでいたのだろう。
彼女はそっと視線を逸らし、
「たまたま、そう! たまたまここを通りかかったら、見つけたのよ! そんなにしょっちゅう湖なんて行ってないんだから!」
やっと肩から奴の手をどけ、聞いてもいないのに言い訳がましいことを一方的に喋るシェリー。
「別に湖ぐらい、いつでも行っていいだろ自分の国なんだし……もちろん一人でだよな?」
なんとなく確認してしまう……必死な自分がなんか滑稽だ。
それでも、シェリーの頭がわずかに縦に動いたのを見逃さなかった。
「まったくぬし様は……」
シオンが機嫌を損ねているように見えるが、とりあえず俺が落ち着いたところで話を進めよう。
「ってか、主力部隊かよ!」
ツッコむのが遅れたが、あまり良い状況ではない。
そう。俺たちの目の前にはエターナの主力部隊がいたのだ。




