三十四話
少し遅れましたが、
やっと黒幕登場です!
「ふう……。ようやくだ」
どこかの侍女の笑い声が、城内に響き渡るころ。
自室で革張りのソファーにドカリッと身を落す長身の初老。
ようやくお開きになった祝賀会に、エターナの宰相であるローマンは、眉間にシワを寄せ深いため息を吐く。
侍女を下がらせ、何気なく視線を泳がせれば、机や本棚とその他の備品。
そのどれもが、庶民が一生働いても見ることも出来ない高級品だ。
彼がこの国でどれほど身分の高いかが伺えるだろうその品。
が、彼はもう見飽き、使い飽きていた。
「私はこんなものじゃない。まだまだ上に上がる」
彼はこの国で、その政治力で、邪魔者を排除してきた。
政敵はもちろん、自分の許可も取らずに王女と婚約したなどという、ポッと出の若造。
そして、自分の仕えているはずの王族……。
とにかく今、この国は自分の思いのままに動かせるはず……だった。
なのになぜか邪魔者がいた。
第二王女のシェリーだ。
彼女は事あるごとに彼の邪魔をした。
税を上げようとすれば、自ら倹約を申し出て。
廃止しようとしていた、国経営の孤児院に自腹で多額の寄付をする。
そして極めつけは、彼が進めた婚約相手を勝手に破棄し、どこで見つけたか分からない素性の知れない者と婚約すると言い出す始末。
いくら諌めようと聞く耳持たず、国民の人気が高くて暗殺も出来ない。
まあ、例え暗殺者を送ったとしても、忌々しい侍女と元婚約者の小僧によって作られた警備網と、彼女の武力で返り討ちにあっただろうが。
「だが、それももうすぐだ。もうすぐわしの思い通りになる」
ライアンに四国同盟を、打診したのは他ならぬローマンなのだ。
彼がシェリーに未練があるのは知っていた。
そしてライアンは、ローマンの思惑を知っているのにもかかわらず、四国同盟を受諾した。
「(頭が切れるとはいえ、所詮はケツの青い若造。好いた女子を追いかけるのに夢中だ)」
そして、魔王軍を蹴散らし、邪魔なシェリーがケットルシーに嫁に行ってしまえば……。
「ふふふ。第一王女を傀儡とし、わしがこの国の王になるだ! おお。そうだ、ちょいと歳が離れているが、第一王女を王妃に迎えてもいいの……ふぉふぉふぉふぉ」
どこかの侍女に負けず劣らず、いや、おっさん臭さを考慮すれば、明らかにこちらの方が気持悪い笑い声が、部屋の外まで漏れ出していた。
「シェリー姫」
翌朝、気持ちよく起きられたので、剣の稽古でもしようかと扉を開けたらライアンの出待ちに会った。
「あらライアン様。お早いですね。まるで私を待ち伏せしてたかのように……」
しまった。
よくいるどこぞの令嬢のように回りくどい嫌味を言おうとして失敗し、ストレートに嫌味を言ってしまった。
なのに彼は、
「あはは。よく分かりましたね。いや、シェリー姫が早起きで良かった。あと何時間待たされるのかと途方に暮れかけてたところです」
うん。まったく効いてない。
それどころか真っ白な白い歯まで見せつけられた。
「そ、それで、何か用なのですか?」
悔しさを奥歯で噛みしめ、何とか声をに練り出す。
「実はこの次の作戦なんですが…………」
彼は私の顔を確認し、面白そうに目を細めるとそっと声をひそめ話し始めた。
次回から本編に戻る……予定です。




