二十七話
「おふろぉぉぉぉぉ……」
「……あの熱い湯船に、この疲れた体を浸したかったのぉ……」
「汗の染み付いた体を、熱い湯に付けたタオルで拭くだけでも、したかったですよね……」
ウザッ!
ふかふかベッドの誘惑に打ち勝って、ハラル領地を進むこと数時間。
いまだに風呂のことを未練がましく口にする彼女たち。
いい加減うざくなってきたのだが、確かに彼女たちには苦労をかけている。
なにか良い案は無いだろうか?
「……あ! 思い出した! 確かハラルの首都には温泉って言って、肌がつるつるになったり美人になったりする、魔法の湯が広い湯船にたっぷりあるって聞いたことがあるぞ」
昔、確かそんなことをシェリーが言ってたことを思い出したのだ。
「「「温泉!!!」」」
危うく馬から落ちそうになるほど、彼女らが食いついてきた。
「温泉か~。噂には聞いた事ありますけど」
「わっちもじゃ! 何でも、とても広くて、とても心地よいものじゃとか」
「……私の故郷でよく傷を癒すのに、ごつごつした狭い岩場のものは入ったことはありますが……広くて美人になる湯か……」
よし、だいぶ気持ちが傾いて来たようだ。
そして俺はさらにもう一押し。
「それじゃハラルを攻略したら、一日温泉を貸しきって自由に入ってよし! それでどう?」
俺の提案は、予想外の効果をもたらした。
「どっちかが大将首を取ったら三十分貸し切り。それでいいですか!」
「……乗りんした!」
「あ! ずるいですよ! お二人でそんな事決めちゃ!」
どうやら広い温泉を独占したいらしい。
なんかそんな所は単純で可愛いな。
だが、ほんわかした気分はそこまでだった。
「イリーナ隊! 全速前進! 今日中に首都を落とすぞ!」
「え?」
「……シオン隊、全力疾走じゃ! イリーナ隊を追い越すのじゃ!」
「ええ!?」
ただでさえ強行軍なのに、その上全力疾走? やる気を出してくれたのは良いが、もはやそれは暴走の域に達しているだろ?
しかも、いつの間にお前たちの部隊があるんだよ!
「あぁぁぁ! ダメですよ二人とも! ええい! こうなったら、本隊もいきます! 私に続いて下さい!」
彼女らの言葉を止めよう……と思ったのも束の間、むんっと気合の入ったリュカの後にぞろぞろと続く魔物たち。
「あの……俺って一体……」
後に取り残された形の俺は、ぽつんっと一人寂しく、ハラルへの道を進んだ。




