二十六話
更新が不定期になってしまいました。
できる限り更新は週末にしようと思っています。
山賊を捕獲して数十分後。
「ありがとうございます! リムオの方々、おかげで助かりました」
「さすが、リムオの兵士様はお強いですな!」
「いえいえ、早速、同盟国ハラルのために戦えて嬉しいですよ!」
俺はにこやかな顔で町長と、町の警備責任者と固い握手を交わしていた。
リュカに準備させたのは、リムオの軍旗とリムオの兵士に極力似せた装備。
まあ、ここ数年小競り合いも無い隣国の兵士の姿など、外交使者ぐらいしか見ていないだろうことも手伝って、俺たちは町を襲った山賊を撃退した同盟国、リムオの軍隊としてイケナンの町にすんなり入ることに成功した。
もちろんイリーナ、シオン、リュカ荷物として台車に乗っている大型の魔物を運ぶ人間い近い魔物には、魔法やら変装やらで人間っぽい恰好をさせている。
「すみませんが、兵士たちは先ほどの戦闘で気が立っております! 歓迎はありがたいですが、あまり近くによらないようお願いします!」
ついでにリュカにそんな事を言わせている。
町長も気を使ってくれているのか、町民を下がらせてくれている。
そんな町長だが、
「今夜は助けていただいたお礼と両国の繁栄を兼ねまして、ささやかですが酒宴の用意と寝所をさせていますので、我が国の首都に着く前に心と体の疲れを癒していって下さい」
どこか胡散臭い笑みを浮かべる町長。
俺たちの正体に気付いたわけでは無く、おおかたリムオとの関係を良好にして、次期町長選の地盤固めにでも使いたいのだろう。
そのために町民を下がらせたのかと、邪推もしてしまう。
しかしだ。
寝所、酒宴……。
この四日間、進軍を優先したため、水浴びはもちろん仮眠もろくにしてない俺たちにとって、清潔なベッドと酒、暖かい食事は魂から涎が出るほど魅力的だ。
作戦変更しちゃおうかな?
そんな思いが頭をよぎる。
しかし、
「いえいえ、大変ありがたい申し出ですが、我ら急ぎますゆえ……」
強烈な誘惑を振り切り、なんとか辞退の声を吐き出す。
きっと口からは魂も一緒に出て行ってしまったに違いない。
だが、町長も一筋縄ではいかない。
キリッとした俺の横顔(自己評価)が、他の物を求めていると思ったのか、なおも気持ちの良くない笑顔と揉み手で言い寄って来た。
「不躾ではありますが、ご活躍なさった姫騎士様たちにも、湯浴みなどご用意させてただいておりますので……」
「「「おふろ!!!」」」
絶叫するイリーナ、シオン、リュカ。
彼女らの顔が輝いているのが胸を痛ませる。
だが、
「いえ、ご心配なく。我らリオムの兵士は、数日の強行軍など訓練の内です」
俺は彼女らの視線ではなく、死線で背中をチリチリと焼かれながらも、全ての誘惑を切り捨てた。
「そうですか……まあ、あまり無理矢理お引止めするのも失礼でしょうから……」
残念がる町長。
「「「おふろ……」」」
残念がる家族たち。
全ては作戦の為と、それを振りきり俺はにこやかに町長を振り返る。
「それでは我々はこれで!」
「湯あみ……」
ぼそりと呟く彼女らの声にかぶせるように声を出し、再び進軍を開始した。
こうして俺は敵味方、双方から一人の戦死者も出さずにハラル第一防衛線を突破したのだった。




