二十五話
今回、ちょっと短めです。
理由はあとがきで!
「……そんな訳で、今日はこの街の人間、生物、生きとし生ける者。全てを灰にします!」
それから五日後の早朝。俺は部隊をぺラムから近いリムオを素通りし、ハラル最北端の町、イケナン近くの森に移動させた。
なぜ近いリムオから攻撃しないか?
理由は簡単、ハラルのほうが弱いから。
兵士の数的にいえばそれほど劣っていないのだが、この国は農民が有事の際に兵になる半農半兵が多く、兵士としての錬度が低い。
それに城塞都市イケナンを抜ければ王都まで防衛線らしい町はなかった。
「ちょ! テイル様! なにがそんな訳なんですか? 我が隊のモットーは『出来るだけ不殺!』ですよ! 思い切り真逆じゃないですか!」
この部隊最後の良心、リュカが慌てた様子で俺の耳元で叫ぶ。
「耳元うるさっ! 分かってるよ! じゃぁ、人間以外なら残しておいていいよ!」
「テ・イ・ル・さ・ま!」
どうやらリュカ様は、かなりご立腹のようだ。
「テイル様は平民出身の魔物の希望の星なんですよ! それを、その日の気分で、民間人大虐殺なんてしないで下さい! エターナの王族ならともかく……」
懇願するような彼女の視線。
俺は人間だと言いたい。
それに、最後に聞こえた呟きは、気のせいだと思いたい。
「でも、なんか、今回は『大虐殺』って気分なんだけど……虐殺……」
確か昔読んだ本にそんなネタがあったような……。
「伝令!」
思いついた作戦を即座に伝令に伝え、四方に走らせる。
「テイル様? いったい何を?」
多少時間はかかるが、明日の昼過ぎには……。
ゴンッ!
指を口元に持って行き考える姿勢の俺に、リュカがいきなり護身用に腰に付けていた剣を、鞘ごと頭にぶつけてきた。
「な! リュカ! てめぇぇぇ! なにしてくれんだよ!」
「だって! テイル様が無視するから!」
「てめぇ! ほんとに……」
吐き出そうとした言葉を急停止。
だって、こいつ……。
「あ! ごめん! トビ、マユ……お姉ちゃん、上官に逆らった罪で、縛られた上に、あんなことや、こんな事……」
遅かった……。
俺はリュカの、いっちゃってる台詞を無視して彼女の肩を揺さぶる。
「正気に戻れリュカ! お前にはまだ、やって欲しいことがあるんだから」
「ふへへ……ほへ!」
なんとか正気に戻った彼女に、いくつか指示を与える。
「そんなのすぐ用意できますが……何に使うのですか?」
「見てれば分かるよ!」
不服そうな彼女を下がらせ、俺は思考を開始する。
その答えは意外なほど早く、待つこと数時間でやって来た。
砂塵を巻き上げながらイケナンを包囲していく集団。
たしか『タカの眼旅団』とか言う、二〇〇人程度の山賊の集団だ。
俺はこいつらにある情報を流した。
この町が戦場になる可能性があるため、篭城のための食料を備蓄している。
その上、正規軍と町の兵士との入れ替えが手違いにより、今日一日だけこの町の兵士は極端に少なく無防備と。
もちろん嘘だ。
リュカの調べによればこの町にはすでに半農半兵を含め、一千の兵が常駐して魔王軍を待ち構えているはずだ。
イケナンの町は魔都との国境に近いこともあり、高い壁に囲まれた城塞都市だ。
まあ、ここに力を入れ過ぎて、ここを越えることができれば無防備な国なのだ。
それでも普通に攻めれば、普通に被害は出る。
ゴロツキの集団の一〇〇や二〇〇じゃ相手にならないだろう。
それでも兵士を含め、町の人々にすれば、山賊の襲来は少なからず恐怖を与える。
町内に紛れ込ませた密偵には、それとなく『タカの眼旅団』の凶暴さ、残虐さを吹聴するように指示してある。
「よし! 全軍出撃!」
俺の合図と共に森から飛び出す魔物の兵士たち。
今回は特別に人間に近い種族の魔物を集めた。
「目標は、『タカの眼旅団』一人残らず捕えろ!」
機動力に特化した騎馬隊が、城壁に取り付こうとしている山賊どもをさらに囲むように展開し、相手がうろたえている隙に軽騎兵、重騎兵の順で包囲網を強固なものにしていく。
もちろん重騎兵オーガも、なるべく背の低い奴を集め、さらに包帯で顔を隠している。
まあ、近くで見るとバレてしまうので、注意が必要だ。
「降参しろ山賊ども! 抵抗しなければ命の保障はしてやる! たぶん」
包囲網が完成したところで、山賊に投降を呼びかける。
「ふざけんな! 俺たちゃ泣く爺もショック死する、『タカの眼旅団』だぞ! 腑抜けた国の腑抜けた兵士なんぞに、誰が降伏するか!」
「しかもたぶんってなんだ!」
親分だろう男が恐ろしくオリジナリティーとは無縁な声を上げ、大振りな斧を両手で振り回す。
ついでに外野も何か言っているが無視だ。
「「じゃんけんポン!」」
それを聞いてる俺の後ろで、緊張感の欠片も無い声。
「ふむ、今回はわっちの番じゃな」
言いながらシオンが山賊に向かう途中、くるりとこちらに体を向け、
「ぬし様見ておるがいい! わっちの勇姿を! そして姉で萌えるがいいのじゃ!」
また訳のわからんことを言い出し走り出すシオン。
……いったい何を燃やせと?
「は! 女一人で何をするってんだい?」
シオンが山賊たちの前に現れた時、彼らは大いに拍子抜けして。
その後、大笑いした。
無知とは恐ろしいものである。
自分が対峙したのがオオカミで、自分たちは仲間内で少しばかり強い、小太りなウサギだと言うことも分からないらしい……。
シオンなら数分でかたがつくだろう。
……あ! もう終わった。
「……弱すぎでありんす」
自慢の大斧の柄を三分割され、喉元に突きつけられたその冷笑に、山賊は力なくその無駄に太い両手を天高く上げた。
今夜中にもう一つ作品を投稿します。
無茶苦茶な姉が出ます。
お暇の方はぜひ見てください。




