二十三話
「まったく、テイルの奴、こんなこズルい手を!」
パノンに向かう馬上で呟くシェリーの声は、地面を勢いよく叩く馬蹄の音に掻き消された。
「でも……結構、たくましくなってたな……」
テイルを抱きかかえた時の事を思い返した……途端。
「うわぁぁぁ! 私ってば、なんて大胆な事を……」
思い返すだけで鼓動が早くなるのを感じ、馬上でのた打ち回った。
そして……。
「また、やっちゃった……」
山のような後悔と共に、その後の行動を思い出す。
「あのまま、抱きつけばよかったのかな?」
そんな事をしたら、緊張のあまり力の加減が分からなくなり、彼の全身の骨がバキバキになっただろう。
「まさか、キスなんて……」
多分その瞬間。
王女、いや、普通の女の子では有り得ないほどの鼻血が出ただろう。
「……結局私って、なにがしたいの? もしかして何もできないダメな娘なの?」
思考の果て、最後は決まって恐ろしいほどの嫌悪感に見舞われる。
「はあぁぁぁぁぁぁぁ。私って、あのころから何にも成長してないのかな?」
確かに体は成長した感はある。
胸や腰のくびれなどは、ほのかに自慢でもある。
だが、この超が手足の指の数ほど付く異常なまでの恥ずかしがり屋体質は、何一つ変わってないと思い知らされた。
この体質で、王女でいることはそれほど難しくない。
が、いざ、好きな人が出来ると、それはとてもとても難儀な体質に思えてくるのだ。
体質を改善しようにも相手は現在敵になり、他の男などには触られたくも無い。
「はうぅぅぅぅぅ」
本日二回目の盛大なため息を吐くと顔を上げ、全身から抜けた力を入れ直す。
「それよりまずは、この国を守らなくちゃ!」
気力を取り戻した青緑の瞳は、どこまでも前を見つめていた。
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