二十話
なんとか二十話まで続きました。
翌朝。
晴れ渡る空。
白い雲。
そして、新しい家族である彼女らを、俺は珍しく笑顔で迎えた。
なんだか初めての家族が出来て少し興奮して眠れなかったが、気分は上々、高らかに声を上げる。
「よし! 仕切り直して、エターナを攻略しようか!」
おまけにベーゼの兵士も一時的にだが加えることができ、兵力は倍増している。
「うふぅん! お姉さんがんばっちゃう! のじゃ!」
意味が分からないが、ヤル気は感じるシオンの棒読み。
「頑張ってね! お兄ちゃん!」
意味不明だが、どこかこそばゆいリュカのテンション。
「え!? わ、私まだ……どんなキャラか決めてないですけど!」
情緒不安定なイリーナの絶叫。
昨日の事があってか、どうやらお互い家族間の位置関係を模索中らしい。
いや、ここはやっぱり長兄である俺から距離を縮めるべきなのだろうか?
ちょっと恥ずかしいが、おいおい考えていこう。
それより今は……。
「テイル様! エターナ軍三千こちらに進行中、その先頭には白銀の戦女神の姿が!」
慌てふためく魔物たちに――でも俺に動揺は無い。
「よし、予定通りだ! 各部隊は指定された持ち場に付け! 安心しろ、こちらには秘策がある! エターナの銀髪姫も無敵じゃない!」
俺の言葉でも動揺を隠せない魔物たち。
そうですよね。
イリーナやシオン、リュカとは少し近付いたが、彼らとの距離はそのままだ。
と思ったその時。
「みなさん大丈夫です! テイルさんの作戦通りにすれば、きっと勝てます!」
「一騎の敵に臆するなど、笑止千万! わっちらは必ず勝利するのじゃ!」
「戦場で頑張っているみなさんに、私が意見するなんておこがましいですが、私もがんばります! だから……だからテイル様の指示に従って下さい!」
イリーナ、シオン、リュカの三人が俺の前に立つと、魔物たちから驚くほど動揺や不安が消え、代わりに歓声が巻き起こる。
なんとなく……いや家族なんだから良いんだけど、でも……っと言う心の葛藤を抑え、
「それじゃ、作戦を説明する!」
いや、本当に気にしてないんだけど……。
「よし! 作戦開始!」
軽く疎外感を受けながらも、俺の号令で指示通りに動き始める魔物たち。
「さあ、俺の野望に……もう一歩だ……」
俺の呟きは、魔物たちの活気に満ちた掛け声に掻き消される。
「みんな! 今日、この日に魔王軍をエターナから追い出すよ!」
「「「うおぉぉぉぉぉぉぉ!」」」
巨大な黒馬に乗る銀髪の少女の号令の元、兵が歓声を上げる。
「全軍前進! 目標、魔王軍の阿呆ども!」
昨夜の内に確認させた魔王軍の位置。
それに第二防衛線から増員させた一〇〇〇の兵士。
計三〇〇〇の兵が彼女の声を、姿を信じて行軍を始めた。
「テイルの……魔王軍なんて殲滅してやる!」
兵士を鼓舞するように、天に突き上げた剣。
そんな決意とは裏腹に、瞳には迷いがあった。
「テイル……昨日、浮気者なんて言って……怒ってるかな?」
シェリーは自分の不安そうな顔を兵たちに見せないよう、進軍の先頭に立つ。
本当は金に糸目を付けずに集めた情報で、彼の今の立場は知っていた。
魔王であり魔都の皇帝に無理やり軍人にさせられたこと、ラダニアを得意の知略で攻略したこと。
それによってベーゼとか言う奴に目を付けられ、投獄されたこと。
だからエターナ攻略の先陣がベーゼと聞いて、そいつを完膚なきまでに叩きのめして、愚弄してやったのに……。
二年ぶりに会ったテイルは、そいつを放せと言った。
もしかして自分の事なんか忘れて、身も心も魔王軍のものになってしまったのかと不安もよぎる。
「……ったく! 人の気も知らないで!」
ポツリと、吐き出すように悪態をつくが胸のモヤモヤは収まらない。
そればかりか悪い方へ悪いほうへと流れる思考が。
止めとばかりにテイルの前に立ちはだかった、二人の美女の顔が浮かび上がる。
「ったく、あいつら……テイルのなんなのよ!」
「ブルルゥゥゥゥ!」
滲み出た殺気に黒馬のプルーが身震いする。
調べた情報から彼女たちはテイルの、ただの監視役兼護衛の副官と、ただの部下。
しかも仲は悪いとの情報だった。
そのはずなのだが、彼女たちがテイルを見る瞳がシェリーを苛立たせた。
「……でもまあ、あいつを捕まえちゃえば、全部解決するよね?」
無理矢理彼女はそう結論つけた。
そうでもしないとまた敵陣に一騎が消した挙句、テイルの策にはまってしまうからだ。
「そう。今度こそ……」
油断するとすぐにすっ飛んでいきそうになる心を押し込め、彼女を乗せた黒馬は静かに歩を進めた。
しばらく投稿しない間にも、ブックマーク増えてました。
やはりうれしいものですね!
これからもがんばります。




