十七話
メインヒロインが大活躍!
「ベーゼ将軍! 第二防衛ライン突破されました!」
「第三、第四ラインも突破され、残すはカロス少将の最終防衛線と、この本隊を残すのみです!」
次々来る不愉快な報告。
司令部の仮設テントの中で、ベーゼは苛立ちを隠さなかった。
数時間前まで、覆しようのないほど優勢だったはず。
そしてそのまま占領した土地の特産品を持って凱旋し、フランソワと楽しいひと時を思い描いていた。
だが現在の状況は、敗戦色にどっぷり染まりつつあった。
「たかが、女騎士一人になにを手間取っておる! そんなもん、囲ってしまえば良いではないか!」
「ですが、敵騎馬の速度が尋常では無く、突破された陣の魔物ではまったく追いつけない状態です」
都合の悪い事を言う伝令は、全て死刑にしてやろうかと思う。
それほどまでに悪い報告ばかり来ていた。
「大丈夫だ! カロスは家柄も良く、頭の切れる……」
「カロス少将の部隊、突破されました!」
「……あの、役立たず! こうなれば槍のベーゼと呼ばれたわしが、その騎士の首取ってくれるわ!」
そんな噂すら聞いた事の無い側近が呆然としている間に、ベーゼが槍を持ってテントから出てっ行ってしまった。
「どこだ! どこにいる! エターナの騎士め!」
身の丈の倍はある長槍に思いっきり振り回され、喚き散らすベーゼ。
「ここだ、魔王軍の豚!」
半狂乱のベーゼの背後に、現れる人馬。
それはまさに、絵画のような完成度を持つ景色だった。
周りを魔物に囲まれているにも関わらず、静かに剣を構えたたずむ少女。
「お、おおお! これは……私が求めていた理想の少女!」
正気に戻ったのか、それとも違う次元でおかしくなったのか?
槍を動かす手を止め、すでに肩で息をするベーゼが食い入るようにその姿を凝視する。
黒馬に乗り、長い銀髪を黒く大きなリボンで束ねる少女は、その青緑の瞳でベーゼを異物として見下す。
「はあ。はあ。そのワシを見下すような瞳……お前、ワシと愛人契約しないか?」
突然の提案に彼女は意表を突かれ戸惑うが、すぐにその視線を冷徹なものに戻した。
「お前が、ここの大将か?」
「いくらなら契約する? わしは帝国大将だから、いくらでも金を出せるぞ!」
まったく噛合わない会話に、短く嘆息する少女。
「……こんな国にあいつはいるの?」
呆れを通り越し、怒りすら感じている彼女の態度に気付かず、なおも言い寄るベーゼ。
「ああ! 鬱陶しい!」
彼女の我慢の限界が超え、剣を振り上げるが、
「…………なんだか、剣が穢れるような気がする」
直観的に何かを感じ、敵から奪った剣に持ち替えそれを振るう。
「うほぉぉぉぉ!」
服を切り刻まれるたびに、奇声を上げるベーゼ。
「キモ!」
その奇声に嫌悪感を露わにするが、早く戦闘を終わらせるためだと腕の鳥肌を気合で押さえ、ベーゼが持っていた長槍を愛馬に咥えさせ器用に受け取る。
「ひやぁぁぁぁぁ!」
その槍でベーゼの残りわずかの下着をひっかけ、空高く持ち上げた。
「エターナの王女シェリーが、魔王軍大将を討ち取ったぞ! 戦は終わりだ! 魔王軍の者どもは即刻国に帰れ!」
四千の敵に突っ込んだよりも、敵大将と対峙した時に大きい疲労感に襲われたが、シェリーは両軍が最小限の被害で済むよう、敵の士気を削ぐためベーゼを高らかと掲げた。




