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94 女騎士ブリュンヒルデの戦い

「ブリュンヒルデ……!?」


 僕は荒い息をつきながら、駆け寄ってきた銀髪の女騎士を見つめた。


「下がってください、殿下! ここは私が食い止めます!」


 ブリュンヒルデが僕を守るようにしてミリムの前に出た。


「邪魔をするな、女!」


 ミリムが槍を振り下ろす。


 ぶおんっ……!


 音を置き去りにするほどの音速の刺突。


 分身攻撃を使わずとも、彼女自身が槍の達人なのだ。


 並の騎士なら視認すらできないであろう、五連突き――。


 ブリュンヒルデは、その五連撃を避けようとも、正面から受け止めようともしなかった。


 槍の穂先に剣の刃を軽く合わせ、その攻撃の力をいなす。


「その動きは――」


 僕は驚いた。


 軽やかで、しなやかで、華麗で。


 まるでリゼッタ先生のような完璧な防御術だ。


「はあっ!」


 カウンターで繰り出された剣が、ミリムの胸元を切り裂いた。


「ちいっ……」


 後退するミリム。


 とはいえ、切り裂いたのは鎧の一部だけ。


 さすがに相手も【七騎槍】だけあって、直前でのけぞって致命傷は避けたらしい。


「――なるほど、凡百の騎士ではなさそうね」

「お前もな。【七騎槍】の称号は伊達ではない、か」


 ブリュンヒルデは剣を構えなおした。


「だが私は負けない――」


 以前に見たときよりも格段に洗練され、隙のない構えだった。


 短期間とはいえ、リゼッタ先生の教えを受け、彼女の実力は確実に向上している――。


「お前たちは私の故郷を焼き、家族を奪った。メルディアの者ども――この私が一人残らず斬って捨てる!」


 裂帛の気合を込めて叫ぶブリュンヒルデ。


「お前がいかに強かろうと斬る! できるだけの苦痛を与えて殺してやる!」


 彼女もまた復讐心を戦う動機としている。


 僕が、メルディアへの復讐心を抱いて戦っているのと同じように。


 ただ、僕の場合は、その後にフラメルへの想いを抱くようになり、そこに変化が生じた。


 もちろん復讐心が消えたわけじゃない。


 僕を貶め、処刑した王や兄弟たち、そして処刑場で僕を罵倒した民衆……彼らへの憎しみは今も燃え盛っている。


 けれど、それ以上に――フラメルと幸せに過ごす未来こそが、今の僕にとって一番大切なんだ。


 僕は、そのために戦っている。


 それに対し、ブリュンヒルデは復讐こそを最も強い動機として戦っているんだろう。


 かつての、僕のように――。


「さっきの攻撃をいなしたくらいで調子に乗らないで」


 ミリムが不快そうに眉を寄せた。


「あなたごときが……舐めないでね」

「お前こそ舐めるな! たとえ誰が相手であろうと、私はメルディアの連中には負けない!」


 ミリムが槍を繰り出し、ブリュンヒルデが剣で迎え撃つ。


「おおおおおおおっ!」


 頭上で槍を風車のように振り回し、叩きつけるミリム。


 ただでさえパワーがあるうえに、遠心力まで上乗せした、まさしく必殺の一撃――。


「くうっ……!」


 それをブリュンヒルデは剣を斜めに立てて、攻撃の威力を殺しながらいなしてみせた。


 ぎぎぎぎぎぎっ……。


 だが、殺しきれなかった威力が、彼女の剣をきしませ、刀身が悲鳴を上げる。


「ちいっ」

「まだまだ……っ!」


 ミリムはなおも攻撃を繰り出し、ブリュンヒルデがそれを防いでいく。


 ぎりぎりの攻防だった。


 ミリムが押し切るか。


 それともブリュンヒルデがしのぎ切るか。


「この命は、クレスト殿下のためにある! 我が主を――誰にも討たせはしない!」


 ブリュンヒルデが悲痛な顔で叫んだ。


「絶対に、あなたを――守ってみせます!」

「ブリュンヒルデ……」


 僕は唇をかみしめて、うめいた。


 力の入らない体が、薄れゆく意識が、恨めしい。


 僕に、もっと力があれば……。


 だけど、その思いとは裏腹に、視界が急激に歪んでいく。


「ぐっ……」


 駄目だ、もう意識が……保てない……。


 僕の意識はゆっくりと暗転していく――。




『さらに【闇】が深まっているようだな』


 前方から声が響いた。


「えっ……?」


 真っ暗だった視界の向こうに何かが見える。


 なんだ、これは……?


 巨大な――信じられないほど巨大な、漆黒の球体。


 その表面のいたるところに黒い鎖が巻きついている。


『我はあまねく【闇】を統べる存在』


 球体から声が聞こえた。


 いや、声というよりは頭の中に直接響く意思――といったほうが適切な表現だろうか。


 それにしても――本当に大きい。


 そいつとの距離も正確にわからないけど、もしかしたら一つの都市くらいの大きさがあるかもしれない。


 仮にそれが建造物だとしたら、あまりにも常識外れの規模だった。


 いや、建造物の類ではなく、生物なのか?


 あるいは――。


「神とか悪魔の類か……?」


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敵国で最強の黒騎士皇子に転生した僕は、美しい姉皇女に溺愛され、五種の魔眼で戦場を無双する。


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