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92 【七騎槍】討伐3

 ――どさり。



 悲鳴すら上げられずに倒れるガルドーバの首なし死体。


 僕はそれを一瞥して、フラメルに歩み寄った。


 彼女はピクリとも動かない。


「くっ……」


 僕は彼女のそばにしゃがみこんだ。


 胸元に手を触れて、心臓の鼓動を確かめる。


 ――どくんっ。


「よかった……!」


 生きてる。


 とはいえ、かなりの重傷なのは見て分かる。


 体のあちこちに、槍による傷らしきものが見える。


 ガルドーバの仕業だろう。

 と、


「クレスト……くん……?」


 フラメルがゆっくりと目を覚ました。


「……! 大丈夫ですか、フラメル!?」


 意識が戻ったことに安堵しながら、僕はたずねた。


「うう……」


 フラメルはすぐに顔をしかめる。


「あた……し……は……だいじょう……ぶ……」


 言いながら、自分で自分に治癒魔法をかけ始めた。


 ヴヴヴ……。


 緑色の輝きが彼女の全身を包み、傷が薄れ、消えていく。


「よかった――」


 僕はようやく一息ついた。


「――クレストくん、もしかして『力』をかなり使ったんじゃない?」


 フラメルがふいに僕を見つめて、ハッとした顔になった。


 ガルドーバやその配下を倒す際、『魔王の力』を引き出し、消耗したのは事実だ。


 でも、それをそのまま伝えたら、きっと彼女は心配するだろう。


 同時に『自分のせいだ』と気に病むかもしれない。


 だから、僕は明るく笑ってみせた。


「まさか。あんな連中を倒すのに本気を出す必要なんてありませんよ」

「……クレストくん」


 フラメルは暗い顔のままだ。

 と、




「ふうん。【黒騎士】と【癒しの聖女】がそろってるのね」




 どこからか声がした。


「えっ……?」


 ざしゅっ!


 次の瞬間、僕は背後から切り付けられ、大きくのけぞる。


「なんだ――?」


 振り返ると、そこには十数人の影が立っていた。


 いずれも同じ顔、同じ姿――銀髪をショートヘアにした可憐な少女だった。


「君は……!」

「【七騎槍】の一人、【魔銀槍(ミスリルランス)】のミリム」


 十数人がいっせいに口を開き、同時に名乗った。


 まるで分身でもしたかのように。


 ――いや。


「なるほど、分身能力か」

「これしかできないんだけどね。私の得意術は【分身】よ」


 ミリムが笑う。


「どれが本物かわからないでしょ? この術には結構自信があるのよ」


 僕は無言で剣を構え直した。


 さっきの攻撃は、全く気配を感じられなかった。


 いくらフラメルに気を取られていたとはいえ、僕に気配を察知させないとは――このミリムという少女はかなりの使い手だ。


 しかも、それが一人ではなく、十数人。


 仮に分身たちがオリジナルと同レベルの戦闘能力を持っていると仮定すると――。


「……厄介だな」


 僕はフラメルをかばうように、前に出た。


「下がっていてください、フラメル」


 と、警告を送る。


「【ミラージュシフト】」


 その瞬間、ミリムが術を発動しながら突っ込んできた。


 十数人の彼女が、さらに数倍に分裂する。


「なっ……!?」


 合計で五十人近くのミリムが四方から一斉に迫ってきた。


 さすがにこの数の【分身】は想定外だ。


「このっ……!」


 ごうっ!


 僕は全身から漆黒のオーラを沸き上がらせた。


 さっきの戦いで目覚めた『さらなる領域』。


 おそらく、この力を使い続ければ――僕は後戻りできない場所まで進んでしまうのだろう。


 おそらく――これは人間と魔王の境界線を踏み越える行為なんだろう。


 僕は、直感的にそう理解していた。


 けれど、迷いはない。

 躊躇もない。


 フラメルを守るためなら、どんな力だって使う。


 僕がどうなろうとも、彼女だけは守ってみせる。


「おおおおおおおおおおおおおっ!」


 僕は地を蹴り、一気に加速した。


「えっ……!?」


 ミリムがあっけにとられたような顔をする。


 音速を超える速度で駆け抜け、雷光のごとき速度で剣を振るう。


 五十人近い彼女のうちの三十人ほどを、僕は一瞬にして斬り伏せていた。

 さらに、


「【ルーンジャミング】!」


 今度はフラメルが魔法を発動する。


 彼女の足元から淡い緑色の光が波紋のように広がっていく。


 ばしゅんっ!


 その光に触れたミリムの分身たちは次々に消滅していった。


「私の術が……効果を消されている……!?」

「魔法を妨害する術式よ。クレスト君がこれだけ数を減らしてくれれば――」


 ばしゅんっ、ばしゅんっ……。


 あっという間にミリムの分身はすべて消えさり、残ったのは本体だけになった。


「くっ……」


 ミリムの顔から笑みが消える。


「今のあたしには……はあ、はあ……こ、これが精一杯……」


 フラメルの息が荒い。


 まだ体が治りきっていないのに、相当無理をしたようだ。


「ありがとうございます、フラメル。でも、それ以上は魔法を使わないで」


 僕は彼女をそっと抱き寄せた。


「後は僕がやります」

「ふうん。愛し合ってるんだ……薄汚い帝国の連中が」


 ミリムの表情が変わる。


「私の恋人を殺した帝国の連中が……自分たちはのうのうと恋を語り、愛を交わす――気に入らないわね!」


 言うなり、ミリムが突進してきた。


 速い!


 決して油断していたわけじゃないけど、反応がわずかに遅れてしまう。


「く……ううっ……」


 それでもなんとかミリムの打ち込みを剣で受け、いなす。


 すぐ背後にはフラメルがいるから、彼女が巻き込まれないように少しずつ位置取りを変えていく。


 が、ミリムはそれを先読みしたように動き、フラメルごと貫くような勢いで槍を繰り出してきた。


「ちいっ……」


 もともと剣と槍の戦いでは、武器のリーチの分、剣のほうが不利だ。


 剣で槍に対抗するには三倍の実力が必要――ともいわれる。


 まして【七騎槍】と称され、超一流の槍の実力を持つミリムの猛攻をしのぐのは、僕にしても容易なことじゃなかった。


「それでも――」


 じわり……。


 さらに僕の体から漆黒のオーラが噴き出る。


「もっと……」


 唇をかみしめて、うめく。


「もっとだ……!」


 僕に、さらなる魔王の力を――。

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