7ー4・和解と決意
「___もう、いい」
フィーアは、ジェシカへと向き合う、
逃げるのは、拒絶するのは、もう止めよう。
堂々巡りになっても事は変わらないままだ。
「私、貴女は風花を不幸にしただけだって思っていました。
極悪非道の、冷酷の人間でしかないと。
だから
そんな貴女の娘という立場を知った時、
心底軽蔑した。そして風花に申し訳なかった」
(そう言われて当然の事をした)
風花の人生を変えてしまったのは、誰でもない自分自身だ。彼女が北條家に毒されれば、毒される程に
あの時、手元で引き取っていれば、という手遅れな思いが
込み上げてきたのは今も変わらない。
「けれど
それは私の思い込みで違っていたみたいです。
結局は表向きの事を決め付けて、受け入れる余裕がなかっただけ。
だから………」
自身の感情ばかり、押し通していた。
風花を傷付け過酷な運命に放り込んだ女なのだと、
見る目が変わっていたが、それは表向きでしかない。
風花の唯一の味方だった事、身を呈して守っていた事。
自身の気持ちを振り返ってみれば、
そもそも親が居るならばと思い、恋しく思った感情は否めない。
もう迷わない。
恩人の少女の言葉を素直に受け入れる。
だって自身には、居るのだから。此処に、母が。
顔向けも、謝罪も、再出発も、出来る。
「___」
「ずっと自身が知りたかった。だから、教えて。
____お母さん」
その微笑みに、ジェシカの目が潤み、涙が溢れる。
そのまま娘へと強く抱きしめた。
腕の中に居るのは、
あの頃よりも随分と成長した娘。
(____帰って来られたんだ。私は)
あの時に感じた疑心。
懐かしいと思うのは、幻じゃなかった。
確かにこの温かさは脳裏に刻まれていて見覚えがある。
………思い違いではない。
ようやく再会出来た。
やっと、会えた。
「___ごめんなさい……。芽衣…」
「……ただいま、お母さん」
(____良かったね)
淡い風、不意に見遣ると虹がかかっていた。
母娘の再会を遠目で、
見詰めていた風花に突然、降ってきた低い声。
己がは発した言葉ではない。
不意に隣を見てから、呆然としてしまう。
黒髪に漆黒の瞳を持った青年。
顔立ちはだいぶ大人になっているだろうか。
彼は何も言わず風花に向けてただ優しく微笑んでいるだけだ。
知らない青年。
けれど。
………知っている、自分はこの青年を。
ゆっくりと微笑んだ。
(___直哉、良かったよ)
幻の錯覚だったのだろうか。
次の瞬間には、もう跡形もなく居なくなっていた。
けれど
その青年が居た一瞬でも、
風花の張り詰めていた心が穏やかに軽くなった事を実感する。
(___有難う)
幻だとしても、彼が姿を見せた一瞬
常々に張り詰めている風花の思考を穏やかにしてくれたのだ。
心の中でそう呟いた。
一瞬の幻でも、あれは直哉だった。
兄の姿と母娘の再会を見詰め、
何処か穏やかになった心を抱きながら風花も決意した。
__自身も変わらないと、いけないのだと。
ちょうど、携帯端末に着信が入った。
画面を見ると、あの青年の名前が浮かんでいる。
少し、躊躇ったが
(“もう迷わないから”)
圭介からの着信を風花は、無視した。




