5ー1・隠した本心
ゆっくりとですが、
第5章のストック投稿が、作り上げてきたため
出来れば本日付けで投稿したいと、思います。
「一般葬がご希望ですか。
式場は屋敷で執り行うので会館はいらないのですね、
通屋と告別式を一日ずつ、となると……」
か弱い少女達と対面しているのは、
角刈りにサングラス、無精髭といかにも強面風の男組である。
北條家から委託された葬儀だが、今回は反社会派勢力の組長の葬儀である。
北條家が見て見ぬふりしたい事は、
クライシスホームの仕事として回ってくる。
いつもは対応し話すのは、フィーアの担当だ。
しかし今回、彼女は下を向いたまま顔を合わせようしないのは、
過去の要因があるからだろう、と圭介は鑑みる。
風花が話し手に、
フィーアは大学ノートにメモを取っている。
静かな白い応接間にて、
圭介は監視役として、用心棒として立ち塞がっていた。
淡々と業務をこなしている風花とフィーアがいた。
あの一件____フィーアが華鈴に脅しにも似た
反撃をしてから、借りてきた猫の様に華鈴は大人しくなった。
今のところ北條家から何らかの伝達もない。
華鈴にとってか弱くて大人しいと思い込んでいた彼女の人物像のイメージは180度、変わったらしい。
フィーアの豹変は圭介さえも驚いた。
普段穏和な微笑を浮かべる温厚な塊のフィーアがあれだけ怒りを見せたのだから。
(____人って、見かけに寄らない。分からないよな)
対して風花はと言うと、
ようやく普段通りの振る舞いを見せる様になった。
まるであの事が綺麗に何も無かった様に。
けれども。
全てを知った上で見る彼女は何だか無理している様に見えた。
北條家に定められた呪縛を必死で答えてようとする姿は、
儚くも健気で、裏を返せば残酷だ。
普段、苦労も愚痴も吐かない上で掴めない人物故に、
それが故に、無意識に心配となってしまう。
ジェシカがあの過剰とも呼べる程の心配さは
風花が北條家に何かされていないか、という確認もあるのだろう。
「フィーア、もういいよ」
「………?」
風花の凛然とした言葉に、フィーアは我に返り
イヤホンマイクを外す。終わったの?と聞いてるそうだ。
「よし、お疲れ様。賄い出来たから、ご飯にしましょう。
本日は和食定食よ」
「はい」
休憩も含めた昼食である。
風花はまだ未成年なのでクライシスホームの管理者は
ジェシカになっており、彼女が衣食住や経理の管理、そして
賄いを作っている。
最初は自前のお弁当を持参していたのたが、
賄い付きだと風花が言い忘れていた事、女所帯だったので
公私でも自然とジェシカが世話を焼くようになってしまったらしい。
圭介は背伸びし一息入れ、フィーアも凝った首を回している。
特に彼女は緊張感に包まれていただろう。
しかし、あのイヤホンマイクは何を意味するのか。
圭介が不思議そうな眼差しに気付いたのか、ジェシカがこそこそと呟く。
「あれね。ワイヤレスイヤホンマイクなの。
風花が発案したんだけど、話し合う時の会話は聞こえない
変わりにフィーアには風花の声しか聞こえないのよ。
風花は雑談抜きの必要事項しか言わないから……ね。
フィーアの事を思って、相手に合わせてる。
髪で隠れてるけどワイヤレス式マイクをイヤホンとして風花も片耳に、そして聞こえる構造になる………かな」
「そういう仕組みなんですね。有難う御座います」
圭介は、自身の役職を果たそうと
最近は手帳に隠れてメモを取るようにしている。
ジェシカの説明を聞きながら、メモを事細かに取っていた。
「風花は、言わないと食べない。
フィーアは遠慮がちだから、貴女達、早めの夜ご飯、大盛りね」
基本的に風花は促さないと食べない。
フィーアは奥床しい遠慮がちな性格故になかなか、主張しない。
2人ともルームシェアをしていて、
彼女達の食事については、ジェシカが作り置きのおかずを冷蔵庫の保存食にしているという。
「でも、出来立てを食べて欲しいから
作り置きのおかずを持っていくついでに、結局、上がり込んじゃうの」
大盛りの白米に、牛タン多めにお味噌の定食。
ちなみにフィーアはお味噌が好きらしく、おかわりしていた。
「すみません………なんだか当たり前に頂いてしまって」
「遠慮要らないの。それに私は慣れてるから、何人前のものを作ろうが皆、一緒よ」
(賄いっていうけど、慈悲だろう。
そもそも興味もなかったら手も出さないだろうし、無関心な筈だ)
愛情の裏返しは、無関心。
それは圭介が幼少期から今まで一番、身に沁みて知っている事だ。
「ジェシカ、休憩って何分間?」
「あと委託案件が二件程だから、もう休業よ。
風花、何処に行くの?」
「なら行けそうだわ。ちょっと出かけてくる。
すぐに戻るから…」
「そう。気をつけるのよ」
そう言うと、とことこと彼女は事務所を出ていく。
「風花、何処に行くんですかね?」
「私も知らないわ。あの子はインドアだから仮眠室で寝てると思ったんだけど。
最近は休憩時間には
何処かに鳥の様に行って帰ってくるわね……」
「…………」
そんな会話を聞いていたフィーアは、
やがて頬杖を着いて穏和に微笑むと話している二人に悪戯っぽく言った。
「あら。そんなに気になるのでしたら
じゃあ、風花に尾行したら良いのに」
圭介は鳩が豆鉄砲を食った様な顔をして固まり
揃って途端に開いた口が塞がらなくなり、フィーアの元に視線を向けた。
本人は悪戯が混じりながら
当然の事を言ったように真剣な様だ。
フィーアは更に微笑を深めて
「圭介さんは兎も角、ジェシカさんならご存じではないですか?
風花は鈍感で自分自身の事にしか興味がない人間だって。
それに圭介さん、気になるなら尾行すれば良いんです。
貴女の仕事は『監視人』です。
気になったら風花を見張って下さい。
距離を置いて着いて見れば
風花は気付かないですよ。きっと」
『風花お嬢様、何かありましたらお伝え下さいね。
何か力になりますからね』
『遠慮なんてしないで。貴女は北條家の娘様なのですから』
(上辺の言葉なんて、やめて)
小さい頃から、北條家の使用人そう言われてうんざりしてきた。
本当は"他人の子供は歓迎してなかった癖に"。
上辺でそう言っていても
最も血縁関係を重んじる、
北條家にとって、自分は大事な華鈴の影武者。
華鈴が家業を継げないから自身がその運命を背負う事になったに過ぎない。
そう言われる度に、人が信じられなくなっていく。
(本当は、孤児だって哀れんでいる癖に)
風花はとっくの果てに悟っていた。
使用人らは本当は少女を哀れみの目で見る。孤児の子供だと。
微笑みとその言葉の裏にある奥底。憐れみと軽蔑の色が混ざっているのだと。
華鈴の代わりに跡継ぎとなること、その代役として以外に
この北條家の策略はないのだから。
何故かって?
北條家は華鈴の代わりに跡継ぎとなること、
その代役として以外に彼女に存在価値を与えない冷酷非道なもの。
この北條家の策略はないのだからそれしか求めて居ないのだから。
自身の素直な個々の心情等、北條家は求めてなんかいない。
過程を大事にしたくとも、それはなかなか出来ない現実は
誰も結果しか見ないように出来上がってしまった。
跡継ぎとして、次期当主として優秀な結果を残せばいい。
それに厳造の弱みを握っては、静かに憎しみを燻ぶらせる。
兄がいなくなった遺児として、
彼は風花の意向を背ける事は出来ないだろう。
そうすれば穏便に、日常は過ぎていくのだから。




