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4―12・慕い想うが故に

【警告】


物語の構成上、

一部、刃物描写有。


ご注意下さいませ。




 華鈴自体、直哉の存在は知っていた。

風花の双子の兄。けれどもある日、庭にある大岩に頭をぶつけて

彼は帰らぬ人となった。


 不慮の事故を、

風花を貶める為に事実を改竄したのだ。






 あの温厚な微笑みと穏和な雰囲気の少女はもう此処にはいない。


 眼の前にいるのは

狂気に満ちた、危険を感じる事しか出来ない人物。

怯む華鈴にフィーアは穏和な微笑みを崩さない。


「そんなに私が怖い? 何時も通りよ。

けれど風花が味わった絶望も精神的ショックも

こんなものじゃないわ。


ねえ。今後こんな事したら私が黙っていない」


 微かにジェシカが開けた一ミリの障子の襖の隙間から

ジェシカと圭介が絶句している。穏和な微笑みの少女が

えげつなさのある表情を浮かべているのは滅多に見た事がないのだから。


(怒らせたら、一番怖い人だ)



 「………」




何処かで腑に落ちたものの、

圭介は驚きを隠せない。あの手紙を送り付けたのは華鈴。

何も知らない箱入り娘、と思いがちだが言葉だけではなく、

行動でも貶める事に衝撃だった。


(いや、

だからこそ、浅はかに行動して、こんな風に暴かれるのかも)





「それを暴きに此処に来たの?」

「……そうね。それが本題だけれど。



 基本的に

こんな大事じゃなければ私は、素通りするわ。

だって相手にする程の人物ではないもの」



「あの子って、あんなに毒を吐くのね………」


 関心した様にジェシカがぽつり、と呟く。

確かに今の彼女は、普段の彼女と似ても似つかない。

例えるならば、もうひとつの人格を持つ二重人格者を連想させる、変貌ぶりだ。




「私は貴女に興味はないから。


 でもね。

それではどうやら私の腹の虫が治らないの」



 さらっと笑顔で、フィーアは毒を吐く。

その微笑が怖いと華鈴は震えた。まるで別の感情を秘めて

単純的な華鈴は、別人に見えて今までの、威勢は無くした。


 やがて華鈴は後退り始めたが、

彼女の行動の範囲は制限されていると解る。



 

「それでどうしようって言うのよ?

貴女は…____何も出来ないじゃない!!」


 華鈴の虚勢にフィーアは、俯き加減で目を逸らす。



「……そう思う? まあ、表向きそうは見えるわね」



其処で、華鈴は眼を見開く。

さっきまで車椅子に座っていた少女がゆっくりと腕を使い、

立ち上がると、ゆっくりと此方に来る。


 その覚束(おぼつか)ない歩幅はゆっくりとだが、

不気味な微笑を見せながら確実に自身へと近付いてきた。



「脚を鉄の棒で叩かれ続けて、

私の脚は動かなくなったと思ってたけれど………。


 違ったみたい。

臆病な私がまだその恐怖から立ち直れないだけみたいなの。


あ…………これは余計な話だったわね」



 そうだ。

フィーアは、少しだけゆっくりとなら歩ける。

あの日、脚は動かなくなったと思い込み自覚し

もう歩けないと覚悟を決めていたが、

けれど。それをも覆したのは風花だった。



『脊髄は損傷していません。

ただ長年の監禁の影響で、体力と脚力が落ち、衰弱しています。


後は精神的なショックからの影響が大きいでしょう』


『リハビリをすれば、歩ける様になるかと』



 医者からそう聞いた。

現にフィーアにレントゲンや、数値の結果等も見せたのは風花である。



「貴女は失っていない。また歩けるそうよ。

強制はしない。貴女に意志があるならば、

また一歩踏み出してみない?


そして

貴女を痛め付けた奴らに、驚かせてやりましょう?」




 煽る様な言い方は、徴発か。

まだ少女を信じ切れなかったフィーアは後ろ向きだったが

けれどこの頃、まだ脳裏に浮かんだのは壮絶な生活と寝食を共にした仲間。


「気が変わったら」


 元は自身を陥れた人物に腹が立ったのが原動力だ。

それに彼女の危うさを知った後に、もしリハビリを始めたら

恩人同然の風花のサポート出来る範囲も広がるかも知れない。


 風花を驚かせたい。

だからこそ、ジェシカに懇願すると、彼女は背中を押してくれたのだ。

今もリハビリをフィーアは努力を、密かに続けていた。



「固定観念だけで生きていたら、痛い目を遇う時もあるらしい」


 そう言いながら近付き、など

ポケットから、忍ばせておいた小型ナイフをフィーアは出した。


 その豹変した物言いとナイフの姿に

華鈴は震え出して後退りし続けるがその瞬間。

体ごと強くアルビノの少女に押し倒されて、その重みが乗りかかる。



 知らなかった。初めて見た。少女の本当の顔を。

は可憐に整った顔立ちをした風花に着いて行く穏和な姿しか記憶にないのに、


 今、眼の前に居るのは、

虚空の瞳で不気味な微笑を浮かべる少女。

先程の淡く優しい表情を浮かべていたのに、今はピエロの様に不気味だ。





 そして、その右手にはナイフが握られている。


 華鈴は凍りついた。




「ねえ貴女は知らないでしょう?

風花はね、私をどん底から助けてくれた人なの。


 だからこそ、私も妹同然に可愛がってきた。

だからね。私の大事な人にこんな事させるなんて許せない、許せないのよ…………」


「………っ」



 無表情で淡々と狂気を告げるフィーア。

華鈴は身じろきしようともがき、悲鳴を出そうとするが恐怖のあまりに声が出ない。


自身の身はどうなるのだろうかと

恐怖に怯えながらも、目の前の少女からは逃れられないままだ。



 ナイフの刃先を見て恐怖に震える。

あの温厚な顔立ちと雰囲気の少女はもう此処にはいない。

狂気に満ちた、危険を感じる事しか出来ない。



「怖いのね? けれどこんなの軽度よ。

風花が味わった絶望も精神的ショックはこんなものじゃない。

今後、同じ事を繰り返そうものなら、私が黙っていない」



 



「____そのお祖父様とやら方と、

この家の親戚の方々に私とのこの会話を告げ口したとしたら

命はないと思って頂戴……ね?」



 虚空の瞳で小首を傾けて、時期に口角がじわりじわりと上がる。



「分かったわ。分かった………から、

風花にはもう二度としないわ。だから離れて!!」

「そう。なら良かった。でも見逃しはしないわ。

風花に傷付けるなら、容赦しない。


あと、これは此処だけの秘密よ?」




フィーアはナイフを置くと

虚無感に満ちた表情から、優しい表情で微笑。

狂気を秘めた少女は、腹の虫が治ったのかジェシカを呼んだ。




「ジェシカさん、

申し訳ないのですが、少し宜しいでしょうか」

「はいはい。ちょっと待ってね____」



 ジェシカは部屋に背を向けて、手で口許を抑えている。

あの子も成長したのね、と微笑ましく呟いている。




「さて、では。さようなら」

「……っ」


「今の、作り物の再現度は精密で驚いてしまいました。

これも玩具ですよ」



愛らしいで繊細な美貌。

その浮かんだ淡い穏和な微笑。


 その狂気を逸した可憐な少女が、美しいとすら思う。

この人物は危ないと華鈴が心の其処から理解した反面、

何も無かった事に安堵する。


 もし誰かに話し風花に何かしたら、今度は本当に平穏では居られない。



「あら、フィーア………地べたに座って………」

「歩き疲れてしまったので。車椅子まで運んでくれませんか?」


「じゃあ圭介君。頼めるかしら?

私は車椅子を運ぶわね」

「分かりました___」




 すぐ側にジェシカと、青年がいた事に驚く。

此方にきた青年と一瞬目が合ったが直ぐに逸らされてしまう。



嗚呼、皆知ってたのだ。

そして青年も知られて、自分のした醜態も言動も聞かれていた。

不利になる事ばかりでこれではまた、遠退いてしまう。



(全部、仕組まれていたの?)


 華鈴は泣きたくなる。

何故、風花の周りには味方が集まるのだろう。



 圭介は、フィーアを抱き抱え車椅子に座らせる。



(もっと、警戒して風花を監視しないと。

フィーアさんをみたいに………)






 ご気分を害された人、申し訳御座いません。

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