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4ー7・少女の過去

元は風花視点で書いていたものです。




 あの日の事は鮮明に覚えている。


 



 孤児院に誰かが訪れた。

その人は闇夜に引きずり込む悪魔だった。



 苦い香り。

その香りに誰もが混乱する中、

兄に手を引かれて、蒸せ闇夜に誘う香りから逃げ、隙間を縫うように建物を逃げ出した。


香りとひび割れたコンクリートの雨粒が振る建物にただ怯え

孤児院の庭で、寄り添いながら隠れて、二人過ごした。




 後ろから助けてという声が錯乱する。


そっと振り向いた時、誰かがを求め

探し回っていた人が建物に飛び込んだ後に悲鳴が聞こえた。

ほろほろと崩れ形を無くしていく建物、慣れない香り。

面影が無くなっていくすべて。




 どうしよう。もうお家が、思い出の場所が消えていく。




 風花が怯えているのに対し、

直哉はただ大丈夫と妹と励まし続けるものの、

恐る恐る建物に近付いてから双子は脱落して悲しみに暮れ始めた。




 どうしようか。

そう思った時、幽霊の様に徘徊している女性を見つけた。


 知っている。この孤児院に居た人だ。

彼女は怪我をしていた。破けた布から見えた傷口は

思わず目を背けたくなる。




 不意に彼女と目が合った時、

彼女は目を見開きして此方に駆け寄ってくる。




「あなた達、大丈夫?」


「………………………」




 こくりと頷く。

すると彼女は双子の身なりに怪我がないか確認してから





『お姉さんと一緒に行きましょう』





 そう告げて、手を差し伸べて、手を繋いだ。

しばらくは考え込んでいたけれど

何かを思い付いた様に孤児院から歩き出した。


 彼女に手を引かれながらも最期、

形の留めていない孤児院の姿を見て去っていく。



 喉が渇く。

ある程度の道のりを歩いて連れて来られたのは、大きな日本屋敷だった。

彼女は何かを知った素振りを見せているけれど、

屋敷の人は大変、驚いている。


それはそうだ。

知らない子供が二人連れて来られたら誰でも不思議に思ってしまう。

遠くのお部屋に連れて行かれ、其処にはおじいさんがいた。




 気難しそうな、不機嫌な顔ををした老人。

少し怖かった記憶がある。




 おじいさんは驚いていて、彼女は何かを話し始めた。




『養子縁組』

『奇跡とも呼べる孤児院の生き残り』




そうか。みんなもういない。生き残ったのは自分達だけ。




彼女は土下座をしていた。__何故?





 自分達を置いてくれる様に頼み込んでいる。

その姿が印象的で少し申し訳なかったと覚えていた。






 結局、引き取られる事になった。

けれどこの家にはとても難しい仕来たりがあるらしい。

後々から知ったのは、の代々続く葬儀屋の家だという事。


 その跡継ぎに自分達を選んで決めるという事だった。






 けれど。その座に選ばれるのはひとりだけ。

選ばれたひとりだけが、跡継ぎになる。


 そういう決まりだった。



 どちらが相応しいか。

私達はその"品選び"に付き合わせられること。


……………まるで椅子取りゲームだ。




 兄と競う事もなかったから、

兄と競う事も、本当は兄を蹴落としてまで、選ばれる事も嫌だった。

だから少女は思った。この椅子取りゲームから、下りてしまおうと。





 仏壇の前で拝まれるお経。

泣きながら亡くなった誰かを見送る人達の姿。

葬儀屋の現場に立ち合わされ、その現状を見ていく日々が続く。




 直哉は優しいので貰い泣きしたりしたが、

風花は微動何一つ動かなかった。




 意味は分からない。

ただ風花の心は何事にも動き出さない。

ただ、何も反応なくしていれば負けられる思った。




『葬儀屋の人間たるもの、静かであれ』という当主の念。



 少女は、幼さ故にそれを理解出来ていなかった。

厳造から見て風花は肝の座っている人物であるとされたのだろう。


やがて_____________。






『風花、北條の後継者はお前だ。

お前が葬儀者としてこの家を家を継ぐのだ』






 風花が選ばれた。

しかし彼女は驚いていた最初から、

この椅子取りゲームから下りよう、負けようと思っていたからだ。

だからこそ意外過ぎて、兄に顔向け出来なかった。



 ここ数日の祖父という人となりを見て

兄への態度が変わってしまったどうなるのだろう。

前みたいに仲良く出来ないのか。



 それでもこ次期当主と名が付いただけで

育っていくのだと承知した上で兄とは一緒に暮らせると

これから北條家の人間になるだけ、この平穏は変わらないと思っていた。


思っていたその考えが

間違いであった事を知ったのは、最期のあの日____。


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