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4ー2・少女の癖



 大人の対応なら、息をする程に1ミリでもその術が分かる。




大人の感情が、態度が

何処で狂い、何で逆撫でされてしまうかを重鎮に置いて

相手はどうしたら機嫌良く、事を荒立てずに平穏でいられるのか。

人と接する時は、そればかり考えてしまう。



 それらは幼少期から北條家の人間によって研ぎ澄まされた感覚。


……………風花は、それらの術を全てを知っていた。




その感情も、

相手の芯を付けば、すぐにどうすればいいのかが分かる。

けれど幼少期から常に人の顔色を伺い、

感情を見てきたせいなのか、人付き合いが苦手になってきた。


それが要因で人と接するのが億劫になり

人との付き合いを避け出したのは13の頃だろう。




 一人が良い。

一人で居れば、誰かの顔色を伺う事も気にする事もない。

相手の期限に怯えて気を遣う事も何処にもない。


 成長するにつれて風花は人の顔色を見る癖が治らなくなった同時に


 孤独を好むようになった。




_____________それは、今も。










 唯一フィーアとジェシカくらいだ。


 顔色伺わずに居られるのは。

けれど気にしていないという何処かで気にしているのかもしれない。








 残業という名目で、

事務所に風花は居座っている事が多い。

理由は月に数回ある、理学療法士等が在宅に訪れ

ジェシカ付き添いの元、フィーアの身体のリハビリや診察があるから。


 自身の弱さを、

誰かに見られてしまう事は、何処か複雑な思いがあるだろう。




 そして風花の性格上

ひとりの時間がないと耐えられないのだ。

だからこそ誰の目にも触れる事もなく一人の空間に佇んでいたい。


 そんな思いから、殻に籠ってしまいたかった。






 誰も居ないと思い込んでいた圭介は

忘れ物を取ると帰宅しようと思ったが、真夜中の物騒さが過ぎって

少女を置いてきぼりに、というのが出来ない事に気付いた。



 それを憂いの眼差しで風花は、圭介を見てから




「……………どうしたの、こんな時間に」

「大学の講義のレポートを此処に忘れて、取りに来たんだけれど

誰も居ないと思い込んでて、思わず驚いたんだ」




 第一、部屋は真っ暗だった。

誰も居ないと思い込んでいて、明かりを付けたのだが

それを除いても、こんな時間に風花が居るのが意外だった。






「電気付けたら良いのに。目を悪くなるよ」

「明かりが煌々と付いているのが苦手なの。

私は代わりに暗い場所が落ち着くから。


それに作業中は、ブルーライトカットの眼鏡をしているから」

「そっか」




 そう言えば風花は時々、眼鏡を掛けている時があったかと思う。

たまに眼鏡をかけたり掛けなかったりと

解らなくなるが、元は裸眼らしい。




「……………」


「………………」






 会話がなくなってしまえば事務所は静寂に包まれて始める。

静寂に包まれていくと彼女の存在感はまるで存在感を消して

透明人間の様に無くなってしまう。



 元から居なかった様な感覚に襲われて思わず、ちらりと少女を見た。




 彼女は確かに居る。

けれど、存在感が感じられなくなると

同時にその距離が遠退いていく感じがするのだ。




(あの日もそうだった)




 最期を決意したあの日。

声をかけられるまで、少女の存在感はなかった。

それは、まるで別世界に住む住人の様に、空気や世界の風景に溶け込んでいる。


…………あの、魂を抜かれた様な横顔が気掛かりだった。




「コーヒー頂いても良いかな?」

「……………どうぞ、ご勝手に」




 沈黙は重い。

耐えられなくなって、声をかけた。








また素っ気なく、熱のない返事。

相変わらずの返事に悟って、コーヒーメーカーにコーヒーを入れる。

徹夜の講義のレポートは完成しそうだ。





 これでもまだ進歩した方だろう。

出会った当初は目すら合わせてくれなかった。

数ヶ月を経て何気のない会話する程になったが、


 彼女の心のガードは相変わらず

固いままで近付こうとすればする程、彼女の存在感は遠くなっていく。






「そう言えば___風花はさ。あの家で育ったんだよね。

凄い屋敷だなって思った。北條家というのは厳しいんだと

改めて思ったよ」






 ピタリと、キーボードを打っていた指先が止まる。


"聞かないで"という心とは裏腹に、風花はそっと顔色を見遣った。

青年は何処か北條家の内情を知りたそうな好奇心が伺えた。



 全く悪い癖だ。

顔色を伺わないと自分の自己主張が出来ないなんて。



唇を噛み締めた後、風花は口を開いた。





 ストック原稿、此処で完結となります。

時間を割いて拝読下さり有難う御座いました。

今後ですが、ストック原稿を数話書き残した上で、

投稿したいと思う所存です。



宜しくお願い致します。

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