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名無し神  作者: スズメのこころ
第一回 転生者に出会えば剣を取れ
4/5

籠城の人

前回はどうでもいい能力持った人間5人を一人一人倒していった。

1/19:わかりづらかったので場面の切り替え描写を追加。

「まじか・・・逃がしたって?」

「逃がしたんじゃない。あの変な女に叩きのめされたんだ。」

「はぁ・・・そっか。じゃあお前は有罪。今から私の戦略の糧となれ。」

「は・・・!?」


戦略の糧。それが意味することはこのマッドサイエンティストの奴の『頭脳』となれと言っている。正確には脳だけを謎の液体に浮かべられてしまう。


「いやいやいや、そんなにアレが大事だったんですか。やめてくださいよ...」

「失敗作とはいえボクの大事な娘だ。それを逃がした責任、取ってもらう・・・おやぁ?」

「ま、まだ何か」

「君ィ、なんで虐待なんかしてるんだァァイ?」

この瞬間、男の運命は決した。




「人がいませんね・・・家は綺麗なのですが。」

事前に調べた通り人間が居ない。今ここで実際の村を見たが住んでいた形跡はあるのだ。

「いないねー」

今私達は買ってきた保存食を少し食べている。今日の食べ物が獲れなかった時にとても重宝した。この干し肉は腹はあまり膨れないが味はしっかりしていたためユグはしゃぶっていた。


「・・・地下に反応あり。」

なるほど、『目』を使って初めて分かる・・・地下だ。

この形跡、おそらく5カ月ほど前の物である。


「地下に、2、3人程でしょうか・・・ここからではよくわかりませんね。」


それだけ人間が深い場所に居る。それが意味する事はこの世界の物ではない技術があるということ。

私はどこかに入口があるだろうと思い、『目』で地道に入口を探した。

今更だが、この『目』にはサーチ能力の他にも自由視点移動・能力の解読が出来る。解読の機能は最初の頃には無く、いつの間にか付いていた機能だが大して問題ないだろう。この世界の人間を犠牲にする上で何か私の知らない事が有ったのだろう。



視界にノイズが入り目から痛みが出始めた頃に、通路を見つける。辿って行けば、箱のような物体。その箱の真上は空洞があり、この地上につながっているようだった。


「・・・ここです」

巧妙に草などに隠されたフタを見つける。そのフタを取れば深そうな穴が梯子を通じて降りられるようになっている。

「罠ならばすぐに退避します。付いてきて下さい。」

「・・・」


無言で付いていくユグ。

私は無言で降りて行った。


やがてスイッチのように記号入っているボタンを見つけ、他にボタンらしき物はなかった為それを押す。

警戒は常にしていた。

「チーン」という音と共に目の前の謎のドアが、横へ開く。


「入りましょう。」

「・・・」

こんなことを言う間にも警戒を一瞬でも解いた事は無かった。


箱の中へ入ったら次は2つの数字らしきものが書かれたボタン、そして謎の記号が二つ取り付けられていた。

ドアの上の方には数字らしきものが光っており、私には何も分からなかった。

私はとりあえず「B1」と書かれたボタンを押し、よくわからないが謎の記号の一つを押す。

作動したようだ。

私はそのまま深くまで進んでいくのを確認している。いや、『目』を使い常にトラップの有無を確かめていた。

「チーン」という音と共に目の前のドアが横へ開く。目の前にはこの世界の住人が2人。『目』によるサーチではこの奥にいるようだが・・・一体何がどうなっているのか。


「おい、お前も俺達と同じ人間か?」

聞きなれない言語を使う罪のない人間。


「・・・? この言語はどうした?」

「とうの昔に捨てた・・・と言ってもお前にはわからんだろうがな!ハハハ」


意味は分かるため会話を続ける。


「その言語を教えた人間は何かあなたたちに不利益な事をしましたか?」

「何一つねえ!ここは楽園だ!」

「おい、まて。こいつ俺達の言葉が分かるみたいだ。」

「え?でも彼女は・・・」

「もしかしたら・・・」

「・・・・・・・・」


逃げた。少し後を追ってみよう。


「すみませんオウ様!」

「敵と気付かず侵入を許してしまいました!」


敵と言われているか。

「いえ、私はあなたたちに質問しただけです。」

「私はある目的で世界を旅する旅人です。そこの人は何をしたのですか。」


「何を言っているか分かる人間はいないか。」

ああ、成程。この人間はこの訳の分からない言語しか知らないわけか。

「彼女はリーダーを出せ、殺してやると言っています。」


私はそれを聞いた途端足で地面が割れる勢いで踏んでいた。急な音に皆はこちらを向く。

そうか、私が喋れない事をいいことに私を放り出そうと言うのだな?


「にんげん、わたしはなにもしません。あの人のいっていることはまったくのうそです。」

「そんなにわたしをころしたいのですか。わたしはこのにんげんのはなしをききたいだけです。」

通じたか?

「おい、違うじゃないか。」

その人が言葉を発した途端嘘解釈をした人間はひどく怯えた。これからされる事が目に見えてでもいるのだろうか。


「真実を話せ。そんな事も守れないようではこの巣に、いやこの大地を踏む資格など無いッ!!」

「ヒィッ!!」

オウ、と言っていたような人間が手にした物は硬さで評判の鉱石で作ったと思われる、変な形の物だった。

その穴を人に向けてどうするのかと思った次の瞬間、「パンッ」と大きな破裂音が響き、その人間は頭から血を噴いて倒れていた。

『目』で構造を確認。何だ。ただの文明の利器か。・・・私の世界はこれ一つで崩壊するのではないか?


「罪は死をもって償え。」

「それで、旅人。喋れるのなら喋ってくれよ。」

「わかりました。」

「あなたはとてもつよいようですが、いったいこの『す(巣)』とやらはどんなものなんですか?」

喋りは疲れる。


「ふむ。ここが気になって来ただけのようだな。スキルで見た限り奴等でもない。」

スキル・・・これが奴等の能力の総称か。

「やつらとは?」

「俺と同じ人間だ。神に呼ばれてやって来たが俺はこの村を潰すのが可哀想でな。」

「今もこうして匿っている。だが、さっきの様に俺の決めた条件を守らなければ即殺す世界だがな。」

「しっかりせいかつはできていますか?」

「食糧には困らないし水にも困らない。何も困らないからこそ逃げ出す人は居ない。」

「奴等に見つからなければずっと安心できる世界だよ。ここは」


「ふむ。あなたはべつせかいのニンゲンとかかわりをたってきたようす。それでおんびんにくらしているのならばわたしもすぐにでていくべきでしょう。さいやくをよびこまないために。」

「初対面だというのに。良く出来た人間だ。」

「では。」


さっさと箱に乗って出た。完全に村から出るまで警戒は怠らなかった。

しかし何も。何もトラップは無かった。

あの人間は静かに暮らしているだろう。あの人間達は殺すべきではない。

実際調べた所によると本当に食糧など生活に必要な物は足りており、住民が楽に生活していた。

オウという人物自ら作り提供するのではなく、住民達に効率的な作業を教えてその住民達だけで暮らしていけるような作り方をしていた。

一歩間違えば奴を殺していただろう。


―『鑑定』で見たが何も異常はないようだな。この世界の人間のようだ。―

―しかし、なぜ俺はこの人間が奴等の手下だと思わなかった、考えなかった!?―

―チッ。急いで出るぞ!―



村を出た所でユグがぽつりと喋った。

「ころさなくてよかったの?」

「あの人間達は外に出る事は無いでしょう。謎の言語は少々気がかりですが、この世界に悪影響はないはずです。」


彼は英雄などではない。


村をすぐ出て歩いていると巨大な動く城があった。

まだこちらを見つけてはいない。私はすぐに近くの草むらにユグと伏せ、『目』によって調べた。


所々青く塗られた城の内部には多数の奴等が潜んでいた。その数測定不能。

まだ私を見つけていないから攻撃はしていないが、さっきの村で見たような穴が多数空いており、その奥には『弾』と呼ばれる物が大切に保管されていた。

・・・なぜ動いているのか。ここから『目』で見える限り調べたがその動力は分からなかった。


良くない想像をする。

この城が私達の相手ならば、付近の街でハグレを倒す作業は一体何なのか。


今の内にこの場所から撤退する。

「ついてきなさい。」

匍匐ほふく前進で極力草むらから草むらへ、見つからないようにさっさと危険範囲内から逃げる。


あれが、敵。

いつか戦う事になる強大な存在に私は震えていた。

私が100回戦っても100回勝つ事はないだろう。


私が逃げる間も城は前へと向かって進んでいたが、見つかった気配はない。

危険範囲外へ出ても5分程度隠密移動を続けていた。


「あれはいつか戦う事になりますね・・・」

「ふたりならたおせるんじゃないの?」

「今までは私達より1人多いか1人少ないかで戦っているため力の差はあまり出ません。ですが・・・あの人間達があの城の中に1000人いるとします。その内の半数で私達を足止めして、その半数で弓などで狙っているとしたら。」

「ねらわれるまえにたおせばいいだけ?」

「それが出来れば私はすぐ実行に移しています・・・。」


・・・はっとする。


「まさか、あの城の方角は私達が来た所。真っ直ぐ行った先には先程の廃村・・・」

同士討ちか?まさか・・・

「私の民だけでも守らなくては・・・」


制限具を外す。この体はまだ使える。

城に向かって走る。ユグを連れていくか迷ったが、ユグは背中に乗せ、大きく跳んだ。

転移範囲内。私はなぜか神の力をこの世界に干渉させやすくなっており、最初の頃よりもより多量の神の力(信仰心)を使う事ができた。

すかさず私は転移し城へ乗り込む。


「あぁ、緊急事態だってよ。」

「めんどくせぇ」


まだ気がついて居ないのか。私は断剣ノートで二つの首を落とし先に進む。

私が入り込んだ事はすぐに人間どもに知れ渡った。


「居たぞ!こっちだ!」

「仲間を呼ぶな。下種め。」


能力などを使わせる暇をも与えん。ユグには取り残しをきっちり片付けるよう命令している。


「チッ…おとなしく下がれ。」

音声は機械から発せられているようだ。

「下がれと言われて下がるわけがないだろう!」

「そうか。抵抗するか・・・容赦はしないぞ。」

「望むところです!」


下級兵は出会って1秒で首を落とす。

続けて中級兵と上級兵が駆けつけて来る。私はあまり乱用は出来ないが転移を使って騙し討ちで優先的に片付ける。


「人が束になっても勝てないか。一般兵士は退避。」

「繰り返す。一般兵士は退避。安全圏の外へ出ろ。奴の狙いは恐らくこの城のコアだ。」


「・・・覚えてろッ!!」

「そんな捨て台詞を吐くから死ぬのですよ。」

ユグに最大出力の火球を浴びせられ首から上が消えた。


「怪しい。道が限定されていますね。」

『目』を使い適当に他のルートを調べる。特に関係のない部屋につながっている様だが。


「ここ。」

閉じられたシャッターを切り刻み、強引に通路を作る。


「・・・・・ユグ。この子達を解放しますか。」

ユグに似た子供が大きなガラス張りの円筒の中に薄緑の液体と共に入っている。


「・・・かぞくならたすけないとね。」


すぐに子供達を救出し、脱出経路を伝える。

「この子供達とは後で合流する。」

「わかった。まずはこのおしろをとめなくちゃ」


他の部屋に用はなく、限定された通路を走る。


「時間稼ぎのつもりですか!」

途中違う部屋に誘導されたり永遠に目的地まで着かない様に正解の道にシャッターが閉じられたが『目』で知っている私には関係のない事だ。


「しゃがんで。」

ユグの指示で私は言われた通りにしゃがむ。

直後矢が頭上を掠めた。


「こんな物。」

普通の弓では出せないスピードで飛んでくる矢は私にとってただの棒きれにしか見えなかった。

断剣ノートは神の力で作った武器。その武器が例え鋭い威力を持った矢に命中したとしても壊れるのは矢の方だ。


断剣の平べったい所を盾にして進む。

ボロボロと当たって砕けた矢が落ちていく。


「走ります。」


私は走った。この長い通路、この足止めではゆっくり進めば何かが手遅れになる可能性がある。


村と城の距離はすぐそこまで来ていた。




最後のドアを切り刻む。

「貴様が首謀者か。」

「いや?神様はここには居ない。」

白衣、緑色の髪、赤いネクタイ。男性だった。


「貴様は『にほんじん』とやらではないようだな?」

「貴方の目にはすべて筒抜けでしたか。」


その男性は簡単に両手を挙げる。

「降参など無駄。」

何か隠していると悟った私は奴の所へ向かった。しかし、それは大きな誤算だった。


ガラガラ....切り刻んだドアの残骸が少し崩れた。

はっとして後ろを向く。そこにはナイフを首に当て人質に取られたユグが。


「・・・判断を誤りましたか。」


「私はこの子達に悪いようにする気は欠片も有りません。」

「しかしあなたは別。カカカ。」


目の前の男と後ろの男、どちらが偽物か。『目』で確認するとどちらも"本物"であった。

「・・・・」


私は新たに人間を天国送りにしようとした。対象は目の前でわらう人間。この人間はこの世界の者・・・


出来ないっ!?


「貴様。この世の理を変えてまで」

「あなたは本物の神ですか。いやぁ、この世界は実に興味深かった。その件ではあなたに感謝しますよ。」


「くっ・・・」

断剣を構える。この時点で99%の負けが確定している。

転移はどちらか一方しか帰す力が残っていない。これに賭けるしか。


てん」「キャンセル!」

簡単に私の力を掻き消した。

まだ希望があるとすれば、使われる予定だった神の力が取り消しで戻って来た事ぐらいだろうか・・・

「ギャハハハ・・・私が隙なんていつ見せましたか?」

「・・・いいでしょう。私の負けです。」

「はぁ。負けという事は、もう打つ手が無くて目の前で殺される準備が出来たという事ですか?」

「ユグ。目を瞑りなさい。私が死ぬ瞬間など見たくは無いでしょう。この人間も貴重な人間を壊すようなマネはしない。」


「ッグ!!」

両手足を魔法のような力で拘束される。


「よく分かってますねぇ。ギャハハッハハッギャハ、ギャハ、ギャハハハハハハ!!!」

「そうです。殺すのはリーダーのあなただけ。この『ユグ』とあなたがいう子には何もしないでおきます。」

「いやっ・・・まだいたい・・・」

「目を瞑りなさいッ!!」


私が言うとすぐに目を瞑った。


「・・・さて、感動の処刑シーンです。」

緑髪の男は私の落とした断剣を取り、頭から背中を通って足に渡る大きな一太刀を私に浴びせた。

「これだけは、回収...しま....す。」

断剣、杖二本を回収。何も残さない。



―・・・奴をつけたが城を離れたと思ったら急に城に向かって跳んだ?―

―直後、彼女の姿が消える。消えてから城の動きは止まって俺達にいくらかの逃げる時間をもらった。―

「おい、さっさと逃げるぞ!」

「まさか、この生活を捨てるつもりじゃないよな!?」

「安定した生活より大切な物なんて決まってるだろうが!」

―こうすることで何とか逃げ切れた。奴は俺達を助けるための時間稼ぎをしていたとは・・・―

―旅人にも、優しい人間はいる物だな。―


―俺は最下層にあらかじめ設計しておいた脱出経路を進み、俺の巣の住民が全員逃げ切れた事を確認したら俺はすぐにその洞窟を塞いだ。―

―俺の地下生活はまだ始まったばかりだ。―



こうして私の体が死に、世界から追い出された。

私は神。しかしこの壊れてしまった体を再度作る間に世界は破壊し尽される。


・・・ひとつ、天界のような場所に戻って来て気がついた事があった。


世界に送れる神の力の量が増えている。

どうやら、天国送りにした人数に比例して増えて行っているようだ。


まだ私には生き残るチャンスがもらえたようだ。

「・・・ニンゲン、二号。」

多少粗いが10秒でニンゲンの原型が完成した。今ある信仰心は殆ど天国送りにした人間から貰っている。自分は偶然の巡り合いでここに立てている・・・


「・・・足の能力重視。」

もう腕力は必要ない。謎の強化によって今の断剣は力の要らない切断武器だ。

だが、あの人間に対抗するにはそこはかとない無限の力が必要だった。


暫くは一人で強さを取り戻すしかないだろう。

様々な準備を終えた後、この世界では1年が経とうとしていた。


「私は。必ず・・・お前らを滅ぼす。」


天国に居る人間よ。その信仰心によって私を救い出した事、感謝しているぞ。

―――――――――――――


ふわりと浮いた。

その後すぐに地面に足が着く。


「・・・モンスターが居ないか?」

どうやらモンスターというモンスターは狩りつくされて絶滅しているようだ。

「とりあえず街の様子を・・・」

『目』を使ったが範囲が狭く、ほぼ使えない。辛うじて分かった事はこの付近の街自体は前よりもとても豊かである。3つとも見て3つとも同じ結論に至ったのだ。

まさか、たった一年でモンスターを絶滅させた?なんの為に。


とりあえず今の私には力も何も無い。断剣ノートがあるが今そんなものを出してもなんの役にも立たない。


作った肉体をこの世界に下した場所は最初の時と変わっていない。目の前まっすぐには森があり、右手側には道路と、街。左手側にも道路と街。


後ろには奥が見えない草原があり、私の今立っている場所が森と草原、また街と街の境目なのだと確認した。

「おおーい、邪魔だ、どいてくれぇー」

邪魔だと言われたが、そちらの方を振り向くと、見た事もない機械に乗っていた。

その足に使われる回転する板のような物。・・・あれはあの時見た、動く城の足の構造か?

まさか、この一年で、この世界はかなりの変化があったようだ。


「はい。どきます。」

驚きは隠し、人間に道を譲る。


はぁ・・・これは、もうどうしようもなくなっているのかもしれない。

元の姿に戻す事は不可能だろう。


「前より大分華やかになっていますね。」

そんな独り言を呟き、適当な酒場へと行く。現状を知る人から話を聞きたい所だ。


「よう嬢ちゃん、ちと話に付き合ってくれねえか?」


運良く、あちらから声を掛けてきた。そういえば、言葉が『ニホンジン』が教えていたと思われる言語なのだが。そのおじさんはなぜか顔に生気がない。よく見ると服がボロボロで片腕が露出しているが、黒い毛でびっしりだった。


「はい、いいですよ。その言語はどこで?」

この世界で標準的に使われていたはずの言葉で質問する。

「どうにも政府の連中がこれを喋らねえと満足できねえようでさあ。前の言葉なんか捨てろ!ってんで使いたくても使わせてもらえねーんだ。あんた見慣れねえ顔だが田舎者か?ならそれ控えたほうがいいぜ」

「わかりました。」

「おお、やればできるじゃねーか。...でよぉ」


適当な場所へ座るように促される。

「おぅマスター塩ジュース!お代はいい。俺の話を聞いてくれりゃそれでいいんだぁ。」


酒場の店主が見慣れない白っぽい飲み物を出す。

「こりゃ『塩』ジュースっつってな、うめぇんだ」

「まあいい、聞いてくれ。」

「俺はどこにでもいるような人間でさあ。ハンターをやってたんだよ。だがそんなもんも同業者が増えてすぐに潰れちまった。こんなのでも仕事になった時代が懐かしいよ、神様が俺に唯一恵んでくれた力だけがぁ、頼りだったんだ。でも、一種類、一種類と消えて行って素材を売って稼ぐ事さえも厳しくなったぁ・・・。モンスターに一度も会わない日、俺は泣いたよ。『俺はどうやって生きていけばいいんだ』って。でも悲しんだのは俺だけじゃあなかった。みんな初めて見る顔だったが泣いていたよ。『モンスターはどこ?』と泣き始める子供まで居た。不思議なもんだよ。どっから来たかわからんガキばっかで、モンスターが1年もせずに絶滅ってよお!?気が付きゃこんな有様さ。必死に小銭集めて酒飲んでしみったれた雰囲気だ。なあ、お前はどう思う!?皆に故郷を聞いても皆同じ故郷『日本』とかどこ探しても無い場所言って、それで新人の癖にベテランの俺らを簡単に抜かすんだぜ?俺なんか全員に踏み台にされて今じゃ職無しだ。あいつらはこの世界の厳しさなんざ知らないんだ。もう何度も覆す事のできない力を見せつけられた。そう、何度もだ!!そんな俺の苦しさも知らず、次々俺達のギルドは新人で埋め尽くされたさ。そして全員BからSの上級認定だ!俺の苦労も知らないでよお!あんな何もルールを分かっちゃいない奴等に好き勝手されるのか、なぜ上の連中はこんな環境破壊を雇ったのか、わけが分からねえ!すべて俺達を潰すためだ。返せ!俺の住処を!」


周りの客にはクスクス笑われている。『目』で確認したところ全員『にほんじん』とやらだった。

「じゃあ、今のこの街の人口はどれぐらいですか?」

「労働力が足り過ぎたお蔭で街は発展したさ。ざっと9000人だ。こんな場所元々300か500の穏やかな場所だったのにこいつら次々とあの手この手で金を搾り取ってきやがる!故郷を『日本』と言う奴等に貧乏人は居なかったさ。」


「何馬鹿にしてんだ!」

「そーだそーだ!」

この人間の話をすっかり聞いていた『ニホンジン』は故郷を馬鹿にされたようで怒り狂って野次を飛ばしている。


「少し黙りなさい。これは私のこの人の会話です。」


私は少し「にほんご」という言語を覚えた。ニホンジンのコトバでにほんご、だ。名称が合っているかは分からない。


それを聞いたリーダーっぽい人物が

「偉そうな口聞いてんじゃねーぞ!!どこのお嬢様だ!金ねえくせによお!」

と更に取り巻きに同調を求める。黒く肌が日焼けしている大男だ。


「そーだ!金ねえくせに偉そうな口聞くんじゃねえ!」


「最後の警告です。黙りなさい。」

もう慣れたように発声しながらノートを取り出す準備をする。するとさっきのおじさんは私の手を掴んだ。


「奴等とやり合って勝てると思うのか。誰もが凶悪な隠し玉を持ってるんだ。」

「先住民の迷惑も考えず威張り散らす人間ですよ?それに、私はこういうのは許せません。例えこの身が朽ち果てても構いません。」


「てめえ。さっきのおっさんの言葉聞かなかったのか?俺達がお・と・な・し・く、何もしないで上げようと思ってやってんだぞ。この街を支えてるのは誰だ!」

「俺らだ!」

「最後の警告を忘れたようでは、警告の意味がありませんね。」


スパッ。即座に一年前回収した断剣を取りリーダーらしき男の首を斬る。

これでも足は手間をかけて強化したんだ。足の素早い動きによる衝撃にも耐えられるようにした。


ゴトン、ゴトン、ゴトン。

酒場なのでなるべく暴れないように暴れそうな奴から仕留めていく。

目の前で繰り広げられる殺戮に唯一気がつく事が遅れたにほんじんA、君は幸運だ。


「さて。騒がないように外へ出ましょうか。すみません、後で片付けは手伝います。」


もごもごと口を押さえられて暴れる人間から手を放し、喋らせる。

「こ、これからどうするつもりなんですか!」

「そうですね・・・あなたにこの世界の事を聞きましょうか。」

「ま、まさか転生者か?・・・いやいや、じゃあなんで同じ人間を殺すんだよ。サイコパスか?」

「本音は隠した方がいいですよ。」


言われてからすぐに口を押さえる男性A。

「そ、それで、何をお望みなんですか?もちろん殺さずに置いてくれますよね?」

「死ぬか死なないかはあなた次第です。では、まずは・・・そうですね、この街以外にもこういった事が起こっているのですか?」


男は少し困惑した。が、すぐに口を開く。

「誠に申し上げにくいのですが、こう言った事って?」

「人口爆発。」

「ああ、各地の都市という都市は人が流れ込み過ぎて住む所が少ないと聞きました。」

「では、あの設備はその『てんせいしゃ』が作ったとかですか?」

「技術系のスキルを持った転生者はこういうものを作って儲けているらしいです。」


少し恐怖をしゃべる事で和らげていた男性Aがついに我慢の限界に達した。

「も、もういいですよね!じ、自分怖くて・・・」

「ああ、次私と会った時には顔も見ずにすぐに殺しているかもしれませんね。どうですか、一緒に来ませんか?」


これは提案ではない、脅迫だ。そう男性Aの目には映っただろう。


「い、行きます!助かるなら何でもします!」

「随分と生きたいようですね?」

「誰だって痛いのは嫌に決まってますよ・・・!」

「なら、ここで痛くしないように殺してあげましょうか?」

「本当にやめてください...!お願いします.......!!」


この男性には最大限の動作なのだろう。地面に膝をつき、手と頭を地面に擦り付けるように座っている。

「気持ちはよく分かりました。(私もまだ甘いですね・・・)」

「よ、よし!手伝います!」

「何を手伝うかは、分かっていますか?」

「えっ・・・」

「ニホンジンを殺す仕事です。手始めに同族の死体を掃除しますよ。」


―自分は、とんでもない人間に生かされている・・・―

―あの素早さに一撃必殺の強さ?中には最高級の鉄壁スキルの持ち主も居たんだぞ?とにかく自分だけ生かされた・・・―

―自分は死ぬよりも辛い地獄『同族殺し』を想像していた。―


酒場に戻ってくると怒りのような感情を振りまきながら、せわしく私に話しかけて来た。

「ま、まさか、お前も・・・俺から仕事を奪おうってんじゃないよな!?」

「安心してください。私はあの人達の様にモンスターを狩る気はありませんし、更に元の世界の住人に危害を加える事は許しません。私が強いのはあなたたちを守るためなのです・・・だから落ち着いて。」


「お、落ち着いてられるか!」「ならこの剣は使いません。」


慌てず武器を『回収』する。回収された武器は一時的にだがこの世界ではない別の場所に保管される。


「ほ、本当に敵意はないんだな?」

「はぁ。本当にありませんよ。まずはこの死体を片付けます。」


私は適当に死体を埋めて酒場を出た。

出た直後、酒場のマスターからは怒鳴られるかと思っていたのだが、なぜか丁寧にお礼と謝罪をされた。


ユグの居場所はまだ分かっていない・・・

見て下さってありがとうございました。

一章=序盤 二章=中盤 三章=終盤

こういう風に分けたいと思うので、とりあえず今は序盤という事で。

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