ネズミの群れと次の一手・邂逅
※5000字。というかこっちのほうが読む時間的に良さそうですね。
前回は惨敗し、奇跡的に一年後からのスタートとなった。
「では、一旦仲間になってもらった訳ですが、これから仕事内容を説明します。」
「は、はいィ・・・」
相変わらずこの男性Aは震えている。
「あなたはより多くの『てんせいしゃ』を誘い出してください。私を裏切ってもらってもかまいません。」
「・・・ッ!!」
例え裏切っても想定の範囲内という事を分からせる。これで相手が裏切る必要は無くなる。
「私はそれを纏めて狩ります。では、連絡は酒場で。」
あくまでも私と行動はさせない。
「・・・」
すっかり男性Aは震えている。が、私にはそんな事はどうでもよかった。
―な、何なんだこの女は・・・!―
―裏切っても構わない?どこからその余裕が出ているんだ!それに・・・俺を捨て駒にする気か?―
―クソッ、アイツは一体何なんだ。まるで思考が読めない!―
―・・・なら、この『スキル』で・・・いや、最終手段だ。―
「そういえば、資金を少し調達しなければいけませんね」
私はあの人間が見えなくなった所でそう独り言を呟き、丁度良い稼ぎ方を考える事にした。
現在、私の世界の人間、つまり総人口を調べている。かなりこの世界の民は減っており、13000人から9000人程度へと減ってしまっている。私が特別に天国に行かせた人間は私によって死んだためにあそこに居るわけで、別の理由で死んだ人間は私の強化剤とはなり得ない。
そう、私はたった1年でこれ程までに減ってしまった人間達に心を痛めている。死ぬ間際、私が刈り取って有効活用してやりたい。
そこで私は287人だった犠牲者を更に増やし、とあるシステムを作る。
その名も「自動刈り取りシステム」。助かる見込みのない人間を楽に死なせ、自動的に私に還元させるシステムだ。・・・これの実装には520人が必要になる。迷い無く私は発動させ、計807人となった。たった一年でこれだけ減っていくのならば・・・そう軽い気持ちが私の胸を支配していた。それと同時に、早く決着を付けねばという強い決心がそこには有った。
刈り取った人間の転生には何年か掛かるのだが、その転生の条件も外部から来た人間では発動しないようになっている。もう少し難しく言うと、転生されるはずだった魂が消え、そこの肉体に新しく製造された魂が宿るのだ。記憶は無くなるが、根本的な事は無くならない。
「そうそう、資金でした・・・何か物を売れば大丈夫でしょうか」
何か。物。私は何一つ売れるような物は持っていないじゃないか。必要最低限の持ち物だ。
では、外へ出て草でも集めるか。
薬は高く売れる筈だ。
街の範囲から外れ、広い草原へ出る。森の方へは近寄らない。何かの気配があるためである。
「これ、これ、これ」
手作業で引き抜く。単調、しかし動きは効率的に。
私はその『草』を抱えて薬屋を探す。
(ありましたね)
店の中に入ると、反応。もう『目』を使わずとも、近くに来ただけで分かるようになったようだ。
「すみません、これを売りたいのですが」
「な・・・!?これだけの薬草を一体....どこで?」
「近くの草原です。沢山生えていましたよ」
「……希少種まで。買わせてもらいます。」
この人間はにほんじん。スキルで鑑定のようなものが付いている気がする。私を鑑定されたら口をふさぐしかない。
「では、16000オルになります」
この世界はオルによって物の売買をしている。
オルとは言うなればコインであり、100やら10000やらが書かれたコインである。100オルで少し品質の良い保存食が一つ買える程度だ。
「ありがとうございます」
「いえいえ、こちらこそ」
―不思議な客だ。これほどの薬草を手に入れるなんて只者ではない。―
私はすぐに店から出て、売る事で手に入れたまとまった金を仕舞いつつ酒場へ行く。少し薬草取りで時間が掛かった。すでに夕方だ。
酒場に着き、『目』で覗くと、案の定大勢の人間が酒場を乗っ取っていた。
「ありがたい事ですね」
回収していた断剣を取り出し、酒場のドアを豪快に開ける。
トラップはある。しかし発動前に素早く動いて回避する。
8人程の大男が居たが、すべて『にほんじん』だ。速攻で順番に首を斬り落とし、真っ先に誰かが気付いたときにはもう主力達の首は床を汚しながら落ちていた。
「こんなものですかね。」
この後酒場の掃除をし、今後も世話になると言ったところでマスターが青ざめながら喜んでいた。今は複雑な心境なのだろう。普通の酒場から平然と人殺しが行われる酒場へとランクダウンした訳だからかもしれない。
何にしても原因は私にしか無い。
2日程、様々な『ニホンジン』を刈り取った。
しかし、すぐにこの噂は広まる事になる。「転生者殺し」の存在を噂されるのだ。
転生者だけを狙って殺しに来る・・・それと同時に、『内通者』の存在も明らかになり、あの男性Aは帰らぬ人となった。しばらく時が経てば都市伝説程度になるだろうが、そんな時間はない。
21人を倒した事になる。しかし、数としては本当に少ない物だ。
というのも、技術を披露する人間と力を手に入れる人間の割合が7:3なため、「斧などの近接武器を持った人間」は既に時代遅れとなりつつある。となるとあまり外に出てこない技術系の人間が強敵である、となる。
(・・・もう一人一人潰して行きましょうか)
圧倒的な数に圧倒的な広さの街。1年でこれ程までに成長したのかと思うが、それもこれも爆発的に増えた外部の人間によるものである。
制限具を外す。『目』を使い、敵の位置を索敵する。
その時、私は冷酷な暗殺者となった。
足の速さを活かし、見つけると同時に断剣で倒す。
人間とはいえ強化を受けた人間がバッタバッタと倒れていく様はどう考えてもおかしかった。
あの時の・・・この世界の人物にすら負けている。
私はただひたすらに、無感情に、出会い頭に『ニホンジン』を殺めていった。
私は足の動きが鈍った事を感じ取った。
どれぐらいの時間、解放していただろう。足は既にボロボロだった。
断剣は血に濡れ、それを持つ所持者はもう判別が出来ないぐらいに血飛沫で一杯だった。
「これでも足りない・・・」
外は暗く、『狩人』が『獲物』を仕留めるには絶好のチャンスだった。
その時、遥か遠くから『何か』が飛んでくる。それが私の頬を掠めた。
「あの時のッ!!」
一つあれば世界を滅ぼす事すら可能な武器。
もうすでに制限具は解除している。次の狙いが私の頭だと悟った時、すでに私は『奴』の視界から離れている。
攻撃が入った方向へ走る。
狭い路地裏を走り抜け、『目』で情報を得る。
奴はもうそこにはいない。
「手際が良い・・・だがっ」
―まだいる。―
『目』で情報を追いながら走るが、それが偽物の情報だと悟るには少しの時間が掛かった。
相手はこの能力を知っていて、かつ向かう先にトラップを即座に張り巡らせられる人間だ。
「・・・」
私は武器の作成をする。
死者の自動取得で手に入れた人数は36人。
私は羽をイメージして作成する。
両手に白い羽を付け、その羽根の一つ一つが鋭く、自律的に動ける。
断剣に代わる新しい武器だった。
「展開。」
100個以上の鋭い羽根が宙に浮き、四方八方に飛翔する。
断剣を装備。手首に付ける装備のため手は空いている。
(後ろ…)
敵。奴。強敵。その存在が後ろから歩いてくる。・・・まさか
「『目』ッ!!」
振り向き、『目』を使うがやはり、分身。大男の外見をしている。
方法はただ一つ。これを突破する。
展開した鋭い羽根が少しずつ減っている。そんな些細な事に気付ける余裕はなかった・・・。
「・・・貴様は」
あの時の。最初の『ニホンジン』。
しかし、様子がおかしい。
『目』を使ってギリギリまで奴を調べる。
・・・気がついたときには少し遅かった。
奴は爆弾を抱えている。
「くッ!!!」
後方へ避難。大きな爆発と共に破片が飛び散り、私の体を奇跡的な確率で掠めていく。だが、後ろはすでに"いた"。
狭い路地。二方向しか道が無く、横方向は大きい家々が並んでいる。
「"魔弾"ッ!貫け!!」
「」
振り向く・・・
あれは・・・あの時の・・・
パンッ
転移で回避。
「........貴様。.........私を覚えているか」
「ああ、覚えている。お前は『ナナシ』とか言うんだったな?」
「オウ.....狩りの邪魔をするな......ッ!!」
私は一瞬の油断も無く断剣を構えている。あの人間は空中で浮かんだまま降りてこない。
「この街で無駄な事をする必要はない。」
「この世界を維持するには必要な事だッ!!貴様に何が分かる!!」
私が跳び上がる。もう私の体は限界に近い。しかし今ここで奴を逃がせばどうなるか。
「っく・・・"ミラージュ"!"スナイプアシスト"ッ!!」
奴は何かが違う。
奴は霞のように姿を消したかと思えば、沢山の銃弾が私めがけて多方向から発射される。
「転移っ!!」
転移はかなり大きい力を使う。しかしその移動は一時しのぎにしかならなかった。
「掛かった。発動・・・デルタエクスキューション!!」
奴は技を叫んだら叫んだ技が発動するようだ。しかし、今の私には自分より強い存在、つまり脅威に映る。
奴は銃を棄てる。
そしてポケットから長方形の物体を取り出す。奴は指の腹で何かをすると長方形は簡易式の短剣になっていた。
奴はゆっくり歩く。正義のために人を殺すような顔をしながら。
「もう動けないだろう」
私の周りには黄色い三角形が。それが私の動きを全て封じる。
「"覚醒"」
・・・もし、私が奴の能力を使えたらどう思うか?
「..........."覚醒"…ッ!!」
黄色い三角形が破壊される。
「キサマは優先的に殺すべきだ。」
一歩、また一歩と。
「なっ!?化け物か!?」
「キサマは苦しまずにこの世から解放してやろう。」
一歩、また一歩と。
「・・・退避」
「退避!退避!!・・・!?チィッ!!」
奴はその能力が使えなくて驚いている。
「キサマの能力は全て奪った。」
断剣を振り上げる。
「私に傷を負わせた事、あの世で後悔するがいい。」
振ろうとした瞬間、私の横腹が抉れるように衝撃を吸収した。
断剣が手から離れる。私は奥まで吹っ飛び、自力で受け身を取る。
「はぁ。これだから神様は」
聞き覚えのある声だ。
「ガフッ!」
血?・・・私が血を吐く時が来るとは。
「オウもオウだよ。この人は味方だって」
「・・・・・そうだったか」
「ユグ……?」
何だ。
「えーと、ナナシさん。おかえりなさい」
見た目が少し違う。大きい。
「・・・」
「さ、奪った力とか全部返して。」
「・・・」
奪った能力を、返す・・・
私が意識すると、簡単にそのチカラはオウの元へ返って行った。
「この世界を救いたいんでしょ。私についてきて。」
おとなしく付いていく。
「ここが私達の基地だよ」
ただの森の奥に建てられた木の家に見えるが・・・
「ナナシさんみたいに一人一人悪い人達を殺していっても絶対終わらないよ。とにかくリーダーを叩くの。ナナシさんじゃない別の神様を倒すと大丈夫になるみたい」
「・・・どうしてですか?」
いまいち状況が飲み込めない。
「あの動くお城。あそこから分かったの」
少しの疑問をぶつける。
「私が復活するってことも分かっていましたか?」
「うん。あの城には全部のってた。」
「ユグはナナシが殺された後すぐに一人で脱出したらしいが、俺とユグが会ったのはつい最近の偶然だ」
「・・・そうだったんですか。」
少し安心できる場所だ。
一度敵対したとはいえ、私はこの人間だけは許せた。
「ユグ、その神様はどうすれば会えるのですか?」
私の心は少し余裕を抱けていた。体はボロボロだが。
「うっ・・・。」
・・・少し、倒れそうだ。
私はそのまま倒れた。
気がつくと木の雰囲気が漂うベッドに寝かされていた。
「・・・ん・・・?」
「私のせいと毒のせいだよ。あの時、人が爆発することがあったけど、あれは私達の物じゃないの。あの時の城の物なの」
「・・・ああ・・・まさか、アレが沢山居たりはしませんよね。」
「城を壊したとき、かなり逃げちゃった。」
・・・
「つまり、私達を見つけたら爆発する。と言う事ですか?」
「うん・・・」
あんなのが常にどこかを歩き回っていたら野宿すら出来ない。
「すみません、まだダメージが残っているようです。しばらく休みますね。」
「うん、いいよ」
私は、味わった事はない深い眠りに就いた。




