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第三百十六章 道との騒動 7.モルヴァニア~国境監視砦~

「……そんな益体(やくたい)も無い与太(よた)(まか)り通っているというのか世間では」

何処(どこ)まで真面目(まじめ)に信じているのかは判りませんが、広く人口(じんこう)膾炙(かいしゃ)しているのは事実のようですね」



 このところ噂の渦中となった観のあるモルヴァニア軍の国境監視砦。そこで(くだん)の「隠し金山」の噂を、カービッド将軍に報告しているのは誰あろう、有能無双を以て鳴る(笑)情報屋のラスコーであった。

 エブロの町へ到着早々、隠し金山の噂を聞き込んだ彼はモルファン情報部に急報を送った後、追加で情報を仕入れた上で、国境監視砦に足を伸ばす事を決断したのである。


 カービッド将軍と直接の面識は無いが、ダルハッドの知り合いだと言えば、下っ端を介して話くらいは聞いてくれるだろう。

 国境監視砦の責任者がこの与太(よた)(ばなし)の事をどう思っているのか、いや(そもそも)この噂を知っているのか。それを確かめるだけでも大いに価値があるし、もし責任者氏がこの噂を知っていなければ、それを教えてやる事は、どちらにとっても不利益にはなるまい。コネは日頃からまめに作っておくものだ。


 そんな思案の(もと)に砦を訪ねたラスコーであったが、案に相違して()ぐに面会が許可されたのには少し驚いた。どうやらダルハッドが自分の事を吹聴してくれていたらしい。情報屋としても商人としても、有り難い事ではある。


 で……そんな状況の中でラスコーが伝えた「隠し金山」の与太(よた)(ばなし)は、砦の責任者二人――カービッド将軍にハビール教授というらしい――の顔を、大いに(しか)めさせる事となった訳だ。



「……このところ、妙なやつらがウロチョロするとの報告は受けていたが……」

「好奇心に駆られてやって来た野次馬でしょうね、恐らくは」

「迷惑な話だ……」



 この砦の任務は国境の、そしてシュレクのダンジョンの監視であるが、少し前からもう一つの、表沙汰にしにくい任務が付け加わった。――シュレクの村との密交易である。ヴォルダバンの行商人を装った工作員(エージェント)にこっそり国境を越えさせて、シュレク近在の村と交易並びに交誼を結んでいるのだ。

 無論大っぴらに出来る事ではないので、人目を避けてこっそりと遣り取りを行なっていたのだが……近頃この辺りを彷徨(うろつ)く者がどうした訳か増えてきて、工作員(エージェント)の活動に支障を(きた)すようになっていた。

 理由が解らず首を(かし)げていたのだが……まさか自分たちの知らないところで、そんな与太(よた)(ばなし)が広まっていたとは……



・・・・・・・・



 ラスコーとの対談を終えた後、カービッド将軍は(おもむろ)にハビール教授に向き直っていた。



「教授、現今の人員で、地質調査を行なう事は可能ですかな?」

()(よう)、大規模な掘削調査などは無論不可能じゃが、簡単な予備調査であれば……できぬ事はありませんな。無論、〝或る程度は〟という但し書きが付くが」

「結構。兵どもに手伝わせますから、明日からでも調査にかかって戴きたい。今は(こう)()より拙速(せっそく)(たっと)ぶ状況と考えます」

「承知しました」


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