第三百十六章 道との騒動 5.モルヴァニア~国民たちの声~(その3)
「緑道の場所に何があるのか……」
「いや待て。あそこに何かが埋まってたってんなら、そこで道路の整備なんかやるか?」
「道路の整備に託けて掘り出したのかもしれんぞ?」
「人目も憚らずに大っぴらに――か?」
さすがにそれは無理筋だろう……と、なりかけたのだが、
「いや……工事は中断されてるだろう? 砦のところで」
……などと言い出す輩がいたために、話はおかしな方向へ転がり出して行く。
「……不自然と言えば不自然だよな。あそこで工事を止めるってのも」
「中断の理由を訊いても、煮え切らない答えしか返って来ないそうだぞ」
実際にはマーカスとの国境にまで伸ばすつもりでいたのだが、そのマーカスとの折衝が遅れているため、已む無く中断の憂き目に遭っているのだが……そういった事情は――隠されてはいないものの――大っぴらにはされていなかった。そのため、こういった誤解を招いた訳だ。〝由らしむべし、知らしむべからず〟という方針が裏目に出た形と言えよう。
その結果……
「つまり……未着工の場所に何かがあるんだな?」
……という結論が導き出される。
そうなると次なる問題は、そこにあるのは何なのか――という事になる。流れるような予定調和である。
そして……
「あの場所ってぇと……」
「マーカスとの国境際になるな」
「マーカスか……」
「マーカスで近頃話題になってるってぇと……」
「『誘いの湖』での『怪獣大決戦』か?」
「まさかあそこに『湖』ができる……ってんじゃねぇだろうな?」
「おぃおぃ、あの騒ぎがモルヴァニアでも……ってなぁ、願い下げにしてほしいぜ」
「いや、さすがにそれは無いだろう。あの湖は、マーカスにとってもテオドラムにとっても、寝耳に水の騒ぎだった筈だ」
「〝湖〟だけに」
「混ぜっ返すな……要はそんな隠密案件を、ウチの国だけが事前に察知……ってなぁ、幾ら何でも出来過ぎだろう」
「それに、そんな厄ネタを掴んでいながら、ノンビリと緑道整備ってのも腑に落ちねぇしな」
「『怪獣大決戦』は無しだとして……他に何があったけか?」
余計な事に気付く者というのは何処にでもいるもので、この時も余計な事を言い出した者がいた。
「ここ暫くのマーカスでの騒ぎというと……砂金か?」
「あ……」
「そう言やぁあったな、そんなネタ」
「けどよ、ありゃテオドラムから流れて来たって噂じゃなかった……あ……」
「テオドラムか……」
テオドラムはマーカスの隣国であるが、同時にモルヴァニアとも国境を……いや、国土を接している。
テオドラムとマーカスにあるのなら、モルヴァニアにだってあるかもしれないではないか……金鉱。
「モルヴァニアの上層部はそれに気付いたのか……」
「俺たちしがねぇ平民にゃ内緒の『隠し金山』って訳だ」
「待てよ。そうすると、あの緑道の整備も……」
「あぁ、国民に対する目眩ましだった可能性はあるな」




