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第三百十五章 「クレヴァス」を巡る幾つかの事情 5.モルファン情報部の奔走~クラブとペスコの事情を添えて~(その1)【地図あり】

 ――という具合に、自分たちの息のかかった冒険者をイラストリアへ送り込む手筈を算段していたモルファン上層部の耳に、イラストリアの商人が――恐らくは商売のために――モルファンへ入ったという吉報が飛び込んで来る。モルファンが希求して()まないイラストリア産の商品と、それを運んで来るイラストリアの商人即ちイラストリア入国の手蔓。これらが揃って手に入るというのだ。(もろ)()を挙げて歓迎したい状況である。


 早速にもこの商人に接触を図り、何とかしてこちらの息のかかった冒険者をイラストリアへ――ごく自然に――潜り込ませる策を講じなくてはならない。

 大陸中にその勇名を(とどろ)かせるモルファン情報部は、張り切って行動を開始したのだが……



「未だターゲットとのコンタクトに成功しておらんとはどういう訳だ!?」



 国境を越えツーラからノイワルデを経て、(じき)にカレの宿場にさしかかろうという頃になっても、(くだん)商人(オズワルト)に接触する事ができないでいたのである。


挿絵(By みてみん) 

[イラストリア~モルファン周辺地図]


 辣腕(らつわん)なる事自他共に認める筈のモルファン情報部が、なぜコンタクトに失敗し続けているのかというと、その理由は呆れるほどに単純であった。



「……申し訳ありません。何しろあの商人の奴め、途中々々の町では宿泊と最低限の補給を済ませるだけで……取引のトの字も持ち出そうとしませんもので……こちらとしても付け入る隙が無く……」

「何と……」



 ――そう。オズワルトが脇目も振らず一目散にフェントホーフェンを目指(めざ)しているため、不自然でない形で接触を図ろうとした工作員たちも、取り付く島を見出せなかったという訳なのであった。


 では、オズワルトはなぜそこまで急いでフェントホーフェンを目指しているのか。



・・・・・・・・



「旦那、後学のためにお聴きしてぇんですがね、(はな)も引っかけずに途中の町々を通り過ぎたなぁどういう(りょう)(けん)なんで?」



 単に利益を得るだけなら、何しろ引く手数多(あまた)のノンヒューム製品であるから、どこで売ってもそれなりの値にはなる筈だ。城塞都市のツーラはともかく、ノイワルデやカレといった町を袖にしてまで、態々(わざわざ)フェントホーフェンへ向かう理由が何処(どこ)にある?

 (もっと)()(ごく)な(ように見える)クラブの疑問に、オズワルトは寸刻考えていたが、マナステラの冒険者ならノンヒューム製品の、それもモルファン国内における流通状況など知らないのが当然と思い直したらしく、事情について説明してくれた。

 (いわ)く――モルファン国内に持ち込まれたノンヒューム製品のほぼ全てが、先程クラブが挙げたような理由から、王都へ届く手前で買い尽くされてしまうのだと。



「王都モルトランにも評判だけは届いているようだけど、肝心の現物は丸っきり……という状況らしくてね」

「なぁる……要は王都に近付くほど、値打ちが上がるって事ですかぃ」

「そういう事さ」



 王都モルトランにまで運べば、それこそ天井知らずの値が付く可能性もあるが、時間と旅費を考慮するとそこまでする旨味が少ないそうで、今回は控えめにフェントホーフェンを目指す事にしたらしい。



「で――下手に途中の町で(なが)(ちり)を決め込んでると、何かの弾みで積荷の事が漏れかねない。そうすると商談攻勢が面倒な事になりそうだったからね」

「それで道を急いでる――と。俺らに口止めしたのもそれでですかぃ」

「そういう事」

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