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第三百十二章 特命調査員ラスコー、マーカスへ  13.モルファン情報部(その2)

「……『湖』の件に関しては、マーカスとテオドラムの間で何らかの結託が存在している可能性がある――か」

「別ルートでも同じような観測が上がってきている。一考の価値はあるだろう」



 アムルファン商業ギルドが至ったのと同じ疑いを抱く者が他にもいたようで、そういった見方のある事も、ラスコーは(しっか)り探り出していたのである。

 のみならず、



「で……レムダック家の〝導師〟が逐電した後を追うかのように、国境山地のモルヴァニア側に立ち入った者がいる――と」

「要調査の案件か?」

「さて……まだ今の段階では、頭の片隅に留めておくくらいでいいだろう」

「……だな。他にも面倒な案件が目白押しな訳だし」



 一同再び溜息を()くと、残った〝面倒な案件〟に意識を向ける。まずは……



「ヤルタ教は何を考えている?」



 ……ラスコーの頭を散々に悩ませた、ヤルタ教の動きである。


 ヤルタ教の手先と(おぼ)しき者が、最初に骨董店に現れたところを見ると、貴族への()土産(みやげ)調達が狙いのようにも思えるが……その後の動きが理解できない。古代マーカス帝国どころかそれ以前、昔も昔の先史文明に当たりを付けたようなのだ。

 古代帝国成立前……と言うか、一国が大帝国に発展するに至った過程という事なら、それは取りも直さず〝古代マーカス帝国の繁栄の秘密〟という事になる。



「いや確かに、あの欲深なヤルタ教が喜びそうなネタではあるが……」

「幾ら何でも()(えん)に過ぎはせんか?」

「うむ。悠久の歴史のなかでは小さな一齣(ひとこま)に過ぎんかもしれんが、それでも百年千年という時間がかかっている筈だ。それを地で繰り返すなど……」

「いや。ヤルタ教は古代の魔法陣だか呪文だかにも〝触手を伸ばして〟いると聞く。千年栄華の呪法か何かの叡智を掴んだのかもしれんぞ?」

「う~む……」

「普段なら笑殺して捨てるところだが……ノンヒュームのあの(・・)躍進を目にした後ではなぁ……」



 ご丁寧にもラスコーが、自分が陥った堂々巡りの思考過程まで吐露(とろ)してくれていたせいで、モルファン情報部も覚えずその方向に()()られる事となっていた。なので猶更(なおさら)ヤルタ教の狙いが解らない。



「……取り敢えずはヤルタ教の動きを見張るしかあるまい」

「だが……そっち方面の()(づる)は無きに等しいぞ?」

ヤルタ教(あいつら)、我が国にはほぼ足を踏み入れなかったからなぁ……こっちも無視を決め込んでいたんだが……」

「今となっては裏目に出たな」

「いや、イスラファンにそれらしき者が現れたとか言ってなかったか?」

「あ、そう言えば……」

「……あったな、そんな報告が」



 イスラファンで勃発した「百鬼夜行」騒ぎ。

 あの引き金になったのが、ヤルタ教の伝道士だとかいう話がなかったか?



「イスラファンならこちらの伝手(つて)が無い訳でもない。取っ掛かりとするには悪くないだろう」



 ――と、取り敢えずイスラファンでの調査に力を入れるという暫定方針が固まった。イスラファンとマーカスでは、テオドラムを挟んで反対側になるが、それでも取っ掛かりくらいにはなってくれるだろう。

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