あたしの次
黄田か。
折井が指名した理由は…なんとなく分かる気がした。大差のついた試合で純粋に心を熱くなったプレイは、黄田のランニングホームランだった。
ーー流星。
そう見える、ある種の美しさがあの走塁にはあったように思う。そしてそんな風に感じたのは俺だけではなかったのだろう。
魅せるプレイ。
野球をこよなく愛する折井にとって…デート一回で済むなら実にお得なものではないかと…いや。
真剣にプレイする黄田にも折井にも失礼な考えだ。シンプルに黄田が魅せてくれたことへの返礼…なのだろう。
だよね?千種。
俺の右腕を抱く少女は涼やかに笑う。
…どうやら正解を引き当てたようだ。
間違えたとしても、おまえなら…訂正してくれるはずだよな?
・・・
「わたしの人生初デートにしれっと現れるなんてさすが空気の読めない男ね」
淡いワンピースの折井若葉はそう声をかけてきた。黄田がびっくりしてんだろ、若葉。
「あら…」
折井まで驚いた顔をする。
「いつ以来?若葉なんて呼んでくれるの」
あ…、いけね。つい昔の癖が出てしまった。
恐る恐る千種を見れば泰然とした顔。もう昔の女だから自分とは違うのだと言わんばかりの…。
千種って他の女性にマウントをとるようなタイプじゃ…いや、タイプだったわ。
「黄田くん?」
珍しく千種が黄田に話しかける。
「お、おう」
なぜかビビったように返事をする黄田。今日初めて喋ったな。
「若葉ちゃんはね、いい女になるわよ」
げっ!めんどくさい予言を言い始めたぞ。
「あたしの次…にだけど」
ぽかんとする折井と黄田。
「行こ、幸平」
そう言ってから俺の腕を引っ張る。強いから痛いっての。
・・・
おまえ確か最近は折井と仲が良かったんじゃ。あんな風に言わなくても。
「将来的にはね…もしかしたら黄田くんはあなたより成功するかも」
また、大胆な予言をするんだな。
「誰が成功なんて決められないよ。そんなことあたしだって分かってる」
そうだけど…。さっきからどうした?
「ほんとあたしは気持ちを伝えるのが下手みたい」
…子供の頃から対等な関係の友達ができなかったものな。仕方ないだろ。せいぜいヒメさんがそれに一番近く…裏切られ、離れて行ったのはほんの数ヶ月前のことだ。
…そうか。頑張って折井に伝えたんだな。
おまえには結菜だって…折井だってもう友達のはずだ。若葉は充分に伝わったはずだ。それくらい優しいやつだ。
「ん」
短く答えた俺の相方は、少しだけ瞳を濡らしていた。どんな種類の気持ちを抱いていたのかを推察するのは野暮ってものだろう。
なんでもデート回数が奇数なのは不吉などと折井が黄田を脅かしたらしい。
とっととあたしをデートに誘えと初デートの日に約束させられた、と後に黄田がボヤいた。あのおっぱいと美貌、そして優しさをもってしても自分のペースを崩さない黄田はもしかしたら大物なのかもしれない。
そして折井の威光は新キャプテン黄田の力となっていく。




