小松先生の長いおしゃべり3
「時間はあるかい?」
人生80年ならあと65年です。
「そちらの綺麗な方は?」
玲先生は視線を千種に移したあと、ああ自分のことかと
「依田玲ならお昼まででしょうか」
ダンディーはふいと息を吐く。
「早名の二人と六条の息子の配偶者」
プロ野球選手依田日向さんは六条家から養子として依田家に出された。美也子は日向さんの実妹。そして北玲さんは依田さんと結婚、美也子とは義理の姉妹に…なるのか?
「六条家は事実上後継がいないことになってる」
日向さんと美也子の母は早名華さん。一度六条家に嫁ぎ、離婚している。現在は和田姓だ。
ちなみに華さんの姉が俺の母、清。つまり日向さんと俺はいとこであり、それは美也子も。
千種は(本人が言い張る限り)俺の嫁なので、ん…そうかいとこの嫁繋がりなのか。玲先生と千種。通りで新妻の絆とか言うわけだ。
人間模様が複雑で混乱しそうだ。
ダンディーの言葉が続く。
「早名の直系が途絶えて半世紀。たぶん早名の血が一番濃いのは君だね」
と俺を見る。
もうそんな時代じゃ…。
「そうなんだろうね。ただ…」
とダンディーは今度は千種を見る。
「君の家族でおじいさん、おばあさんは?」
そういや行朝さんのご両親の話は聞いたことがないな。姉(葉)も口にしたことはなかったと思う。
「私が生まれたときにはもう二人とも亡くなったいたと聞いています」
千種が答える。
「そうだね。早名喜美子さんが巫女として早名一族の代表のように扱われていた。そして一家族だけでは不安だからと、土地を分けて早名の一族代表候補として奉られたのが…。行朝一家なんだ」
聞いていたかとダンディーから千種への問い。
知りませんでした、と千種。
土地を分けたんなら、そりゃ千種邸との距離が近かったわけだ。
「早名とか六条とか古めかしいことにこだわるのは、そこに利益を見出す者くらいだろうね」
ほんと俺が今年になってひどい目に遭ったのはそのやつらのせいだと薄々思ってるんだけどな。さすがに迂闊には言えないけど。
苦々しい顔を俺はしたらしく、ダンディーはうっすらと笑う表情を浮かべた。
「その新しい早名の娘が才媛だと昔から評判だった」
すっ…と千種は俺の右腕をとる。
「あまり感情がないとか、人間味がないとかそういうマイナスもあったがね。交流があるのは…ほんの一握りの同級生だけ、と」
…世間はほんとめんどくさいもんだな。
「そんな娘が夢中になるほどの男が現れたと聞いてどんな人物か興味を持つのはおかしいかな?」
…どうなんでしょうね。
「行朝から聞いたよ。娘にはもったいないほどの」
行朝と呼び捨て?
「傑物、だと」
誰のこと?




