小松先生の長いおしゃべり2
思い起こせば去年は建物側駐車場、今年は受付、ならば来年はこの医院の医師になってんじゃないか…と馬鹿なことを考えていていて気が付いた。
ここなんて言うんだ?
…なあ千種。名前教えて。
「幸平と千種」
誰がフォークデュオやねん。
「そこは漫才コンビって突っ込むところじゃないの?」
離婚だ、離婚。
「あなたたち、未婚でしょ」
先生の真っ当なツッコミ。
これでこそ俺たち世代のスターだ。
「どうにも怒れないようなディスリしてない?」
マリーさんと北玲さんだけは俺のアイドル。死んでもそんなことしませんよ。…少し前に死にかけましたけど。
「絶好調ね、あなた」
・・・
結局医師に会う前にここが小松産婦人科だと言うのだと看護師さんに教えてもらった。
千種や玲先生でなく。
小松と名乗った。
まあ、医院名の通りだよね。
「親戚が世話になった。ありがとう」
唐突にその眼鏡をかけたダンディー医師が頭を下げた。しかも90度と言う最敬礼。
どなたさまでしたっけ…。
「大杉元」
ダンディーは親戚の人の名をあげた。
ああ………。
言葉にならない驚きは本当に言葉にならないのな。なんと言うか…虚を突かれた。
元さんがこの町の付属病院に入院する際に、遠縁の親戚が保証人となったと聞いたことがあったけど、それがあなただったんですか…。
「とんでもない、こちらこそいつも元さんにはお世話になっております」
なぜか千種が代表者のようにダンディーに返礼した。
こういう外向きの時の如才なさはどこで身につけたんだろうね、千種。
「さすがは早名家ですね」
ん!?
ここでその名を出すか。
「おや、一瞬で気配が変わったみたいですが…。それにしても君たちが早名のバカップ…、…ベスト夫婦なんだね」
「…そんな…夫婦だなんて…」
照れるな、千種。明らかに今バカップルって言おうとしたよな。
俺たち世間からそんな風に見られてるんだぞ、恥ずかしくないのか?
「今さら?」
とどめ兼介錯の一言は、本日の保護者から放たれた。
「元も世話になってるし、おまけに早名の本流が揃ってるなら会いたくもなるんだよね」
口調まで砕けてきて、なんだか行朝さんみたいだ。
千種と俺ならそんな見方もできるのか…。
「君たちは早名について詳しいのかな?」
偏った詳しさはあるけど、歴史的なこととかは俺にはさっぱり…。千種も似たようなものじゃないかな。唯一、姉なら詳しいかもしれない。
「早名本家はもう半世紀前に途絶えたんだよね」
なにかが始まった。




